医学界新聞

【座談会】

消化器画像診療の新たな展開
新雑誌『消化器画像』創刊によせて

二村雄次氏
名古屋大学教授
第1外科
有山 襄氏
順天堂大学教授
内科
望月福治氏
JR仙台病院
〈司会〉
板井悠二氏
筑波大学教授
放射線医学
竹原靖明氏
東京紙商健保・
健康管理センター所長
新横浜病院横浜
総合健診センター所長


消化器画像診療の現状

機器の進歩による画像所見と病理の詳細な対比

望月<司会> 医学書院ではこれまで『胃と腸』という歴史のある雑誌を発行してきましたが,今回その姉妹版として,肝・胆・膵を中心とした新雑誌『消化器画像』が創刊される運びになりました。そこで本日は,消化器画像診療の総合的なレビューを試みるとともに,それぞれご専門の立場からこの新雑誌に対する期待などをお話しいただければと思います。
 最初に消化器画像診療の現状について,有山先生,口火を切って下さい。
有山 消化器画像におけるここ数年の進歩は大変すばらしいものがあります。機器の進歩が1つと,画像所見と病理の対比が詳しく行なわれるようになったことです。その要因として考えられるのは,内科側が早期診断に努め,切除可能なものを見つける頻度が高くなったことで,早期に外科的処置ができ,画像と組織の対比が可能になったことがあると思います。
 われわれは超音波を使って肝・胆・膵のスクリーニングを年間1万例ほど行なっていますが,疾患の発見頻度はここ数年あまり変わっていません。特に癌に関しては,それほど症例が増えたという感じは持っていません。また,現在は検診制度が定着したこともあるのでしょうが,以前のような進行癌は少なくなったという印象です。
 もう1つのトピックスは,MRCP(MR膵胆管造影法)を始めましたらERCP(内視鏡的逆行性胆道膵管造影法)の件数が減り,以前は年間500-600例あったものが現在は150例ほどになりました。
望月 有山先生の施設はERCPの検査件数が多いことで有名ですが,そうなるとその手技が衰えてくるのではないかという危惧もありますが,その点はいかがですか。
有山 診断面でのERCPはもういらないと思いますが,治療面では必要ですから,その手技を修得しておく必要性はあると思います。修得という面では問題になります。
望月 癌の話が出ましたが,有山先生がアメリカの学会で小膵癌を講演された時,あまりに小さいので会場が静かになってしまいました。先生は日米の画像診断の現状についてどのような印象をお持ちですか。
有山 医療制度が異なりますから,日本では超音波やCT,さらにはERCPなどもできますが,アメリカではコストの面で難しいと思います。例えば膵癌ですと,アメリカではCTだけで進展度診断して,切除の可否を決めます。

超音波の現状

望月 超音波については,竹原先生,いかがですか。
竹原 ご承知のように,臨床に役立つ超音波診断装置が実用化されて間もなく30年になります。年々分解能や画質,それに操作性などが進歩して,臨床各分野での利用範囲も急速に拡大されてきました。この原因を探ってみますと,(1)探触子(プローブ)の改良,特に細径化,(2)画像のデジタル化,(3)ドプラ,とりわけレーダーに使われておりますMTI(Moving Target Indication)の技術の導入によるカラードプラの開発,の3点があげられると思います。
 第1点のプローブの細径化はEUS(Endoscopic Ultrasound),IDUS(Intraductal Ultrasound)などの管腔内超音波診断を確立しました。
 第2点の画像のデジタル化は部分的には古くからありますが,フルデジタル化は最近実用化され,これによって分解能や画質の向上に深い関係のあるビームの走査や集束が確実に制御できるようになり,精度が安定してきました。
 また第3点のドプラのカラー化は,血流を視覚化することによりルーチン検査のレベルに押し上げてきました。ご承知のように,カラードプラには速度表示(CDV)とパワー表示(CDE)があります。CDVは血流の平均流速値をカラー表示したもので,血流の方向がわかる利点があります。一方CDEは血流(血球)の運動エネルギーを表示したもので,血流の方向は表示しませんが,感度が数倍よくなり,遅い血流や細い血管が鮮明にカラー表示できます。また,速度表示の欠点であります「折り返し現象」や角度依存性がほとんどないため,臓器や組織内の血流が容易に観察できるようになりました。
 これに加えて,各種造影剤や3次元表示などが登場してきて,種々の組合せで超音波が使われるようになりました。まさに,百花繚乱です。しかし臨床面,特に胆・膵の領域の診断における評価となりますとEUS,IDUSの他はまだ定まっていないのが現状ではないでしょうか。

放射線科医の立場から

板井 放射線科医の見地から申しますと,CTが1972年に登場して4半世紀が経過しましたが,この間の進歩はヘリカルCTに代表されるように,時間的に速く,かつ3次元的に捉えることができるようになってきたことがあります。また肝・胆・膵の領域ですと,CTは血流を見るために造影剤を用いますが,これが能率的に使えるようになったことも大きな進歩です。
 超音波とCTとを比べた場合,前者はかなり細かい部分まで見えます。CTが樹を見ているとすると,超音波は下手をすると枝葉しか見ない画像診断法になる恐れがありますが,十分に技術を習得した人がやれば枝葉まで見られる診断法になります。
 MRは最も進歩の激しい領域で,先ほど有山先生からMRCPが臨床面で有用というお話がありましたが,これはT2強調を非常に強くした画像で静止した水を出すもので,かなり役立つだろうと思います。
 一方,MRの欠点として時間が要かるということがありましたが,現在の最高機種はCTを凌いでいます。例えば,肝臓全体を2秒間に1回繰り返し撮るダイナミックスタディができる時代になっています。
 主に肝臓の領域に限られますが,臓器特異性の造影剤も,よい空間分解能の画像に用いられる時代になってきています。しかし,どうしても高価という面もありますので,この領域の進歩は経済繁栄に左右されると思います。

外科医の立場から

望月 二村先生,外科医の立場から消化器画像診療の現状についてお話し下さい。
二村 私たちが手術を考える時に,胆・膵は特にステージが大切なのでEUSを大変頼りにしています。EUSの情報が他の検査でどれほど代用できるのか,例えばEUSで出せる胆嚢の深達度などが,他の非侵襲的な画像でどのくらい可能なのかはわかりません。
 それから,胆・膵系ですと,肝十二指腸間膜周辺の進展度もEUSでいい情報を結構いただけるので,今後どの程度解決できるかと期待しているところです。
 肝臓の場合,外科治療にはUSも大変有用です。例えば肝転移の場合,小さいもので多発の場合には治療法がかなり変わりますから,転移巣の大きさやその場所を術前に診断できることはありがたいことです。それから,肝細胞癌も内科的にもよい治療法が出てきていますので,患者さんにとって負担の少ない方法で,治療成績が向上する方向に進んでいけばよいと思います。
 それに,先ほどご指摘のあったカラードプラなどの技術を駆使して,さまざまな病変を描出できるようになりました。
 外科医の立場から言いますと,病巣はそれでいいのですが,周辺,特に肝内ですと門脈および肝静脈とどのように関わっているかという情報が,手術を考える時に重要ですね。特に肝静脈の根部辺りの手術になると難しくなりますので,病変の外側を診断していただけると助かります。

ハーモニックイメージング

竹原 とてもEUSの分解能にはかなわないと思いますが,今ハーモニックイメージングという方式が注目されています。これは超音波が生体内を伝播する際に起こる非線形効果を利用したもので,これによって発生する高調波成分(ハーモニック成分)を用いて映像化したものです。
 例えば,3MHzの超音波を生体内に送信しますと,その伝播過程で2倍の高調波すなわち6MHzの高調波が発生し,これで映像化するため,多重反射やサイドローブなどのアーチファクトが少なく,分解能の高い画像が得られます。したがって胆嚢の内腔,特に粘膜面などが鮮明に描出されるようになりました。また,この高調波成分は造影剤(微小気泡)を使いますと,その表面で起こる散乱波や超音波の振動で気泡が共鳴し崩壊すると,主に発生するRF波の中に多く含まれており,実質の染影や組織内血流の映像に優れていると言われています。この非線形効果の多寡は気泡の性状や送信超音波の条件によって左右されるため,適切な造影剤の開発とともに,この映像に適応する超音波装置の実用化が急がれています。これが実用化されますと,EUSとは異なった情報が提供されるものと期待しています。
 また先ほどお話ししましたカラードプラはこれらの造影剤との併用により,さらに遅い血流や細い血管を捉えられるようになります。これに,今話題になっている3次元表示を加えますとリアルタイムで血管の周囲を立体的に描出できるのではないかと思います。しかしまだ現在の超音波の3次元表示は粗雑で,とても細かいものには使えないと思います。

機器の進歩と切除率

望月 超音波内視鏡が発達してきて,切除が可能か不可能か,つまり切除の適応,あるいは切除率に変化はありましたか。
二村 手術適応は,胆・膵については上がってきていると思いますが,これはEUSが出てきたからではなく,手術が比較的どこでも安全にできるようになってきたためだと思います。
 例えば膵癌の手術ですと,以前はセンター的な施設や大学病院を中心として行なわれていましたが,今はどこでもできるような時代になってきましたので,切除率が上がってきている可能性があります。また胆道系では,術前ステージングの診断能がかなり上がりましたので,細かい手術ができるようになってきました。それから膵ですと,境界病変や良性病変が増えましたね。最近はEUSでいろいろ診断していただけるようになって,反対に良性に近い病変がわかるようになって,手術しないでフォローアップする症例が増えてきました。やはり,EUSに負うところが大きいのではないかと思います。

消化器画像診療の問題点

術前の進展度診断について

望月 消化器画像診療の現状についてひと通りお話しいただきましたが,それでは次にその問題点に関してお話し願います。
有山 病理組織所見と対比すると,まだ画像診断の空間分解能が顕微鏡ほどはよくないので,微小浸潤や浸潤性発育を示す腫瘍の先端の診断や,脈管侵襲について規約のvp・pv1~2の診断が難しいです。
 しかし,術前の進展度診断という話が出ましたが,われわれが切れると判断したもので切れなかったというのは非常に少ないですね。非切除であった理由は,肝表面の細かい転移が診断できないことと腹水がない腹膜播種です。
 これらの問題に対してヨーロッパでは,術前に膵・胆道癌には必ず腹腔鏡を行なっています。ここまでやる必要があるのかどうかも問題点ですね。
望月 板井先生はいかがですか。
板井 やはり画像は空間・コントラスト分解に依存しますので,自ずから限界があります。特にX線を使う領域ですと,その量を増やさない限り,または造影剤を多く使わない限り,分解能を上げられません。

超音波の長所と短所

望月 超音波の問題点について,竹原先生,いかがでしょうか。
竹原 ご承知のように超音波には宿命的な欠点があります。1つは骨や腸管ガスによって超音波の伝播が妨げられること,他の1つは体外式では超音波の減衰が大きく,高い周波数が使えないため,空間分解能に限界があることです。
 しかし一方では,超音波には他の画像にない長所として非侵襲性とリアルタイム表示があり,また最近の技術の著しい進歩によって先ほど述べたようにBモードの画質や分解能が向上した他,ドプラのカラー化やプローブの細径化が行なわれ,利用範囲が著しく拡大されてきました。
 さらに最近では,各種の造影剤が開発され,臨床の場に登場しつつあります。この造影剤の利用は,超音波の感度や分解能を補う意味では止むを得ない点がありますが,生体内に異物を注入するわけですから,十分検討して後顧に憂いを残すことのないようにしなければならないと思います。
 このように細径化されたプローブによる体腔内走査とドプラ,ハーモニックイメージング,さらに造影剤の利用が加わって,その活用範囲は多岐におよんでいます。そのうち,高い臨床評価が得られるのではないでしょうか。

外科医から見た問題点

二村 外科医からみますと,日本と外国とでは大変違うことが問題点ですね。日本では術前の画像診断をきちんとやっていただいて大変ありがたいのですが,良性疾患で特に胆石の治療で腹腔鏡を使うようになってまったく変わってしまいました。術前に3DCTをやって,胆管と胆嚢の立体画像を作る必要はないと思うのですが。
板井 あれはシスティックダクトが見たいのではないのですか。
有山 それはMRCPで代用できます。
二村 ところが,腹腔鏡下手術が出る以前は,胆嚢結石の術前診断は体外USだけです。体外USで胆嚢管をきちんと出していただければ患者さんも楽だと思いますし,腹腔鏡下の胆嚢摘出術における合併症も大きな問題になっています。
望月 二村先生の腹腔鏡下の胆嚢摘出術における合併症のお話ですが,それは施設によっても異なると思います。術前の画像診断のほうに問題があるのでしょうか。
二村 やはり手術をする人,術者の考え方によるのでしょう。その他,肝門部胆管癌では外科に来る前にいろいろ治療されている症例があって,まったく手術適応に関する検討がされてない患者さんがいます。
 これは,メタリックステントができてから,内科や放射線科で施行されている患者さんが増えているのではないかと感じています。
望月 それは問題ですね。
二村 メタリックステントで治療されている患者さんをよく見かけますが,多くは外科で切除できるような症例です。インターベンショナルな技術が向上してきて,それを使いたいがために適応判断がなおざりにされているのが問題点だと思います。

境界領域の病変に対して

二村 もう1つ外科での変化は,境界領域の病変に対して膵の区域切除と言いますか,部分切除の手術術式が最近開発されてきました。境界病変で切除したほうがよいのですが,今までの膵癌に対する拡大手術のような手術はしなくてもよいと考えて,肝臓で発達してきた縮小手術の概念が膵臓にも入ってきました。
望月 いま境界領域とされている疾患ではどんなものがありますか。
二村 やはり粘液産生膵腫瘍ですね。胆嚢の診断能が上がる可能性はどうですか。アデノーマと癌というのは?
有山 アデノーマは診断できますが,アデノーマの中に癌があるかどうかの診断は難しいですね。病理学的にも,癌は先端だけにあって茎を伝わってきませんし,形態的に同じで難しい。
 それから,二村先生が言われた縮小手術ですが,膵管内乳頭腫瘍いわゆる粘液産生膵癌は鈎状突起にあることが多いです。IDUSと膵管鏡をして,あとMRCPをしますと,これが鈎状突起だけに存在して腫瘍性病変か過形成かが大体わかります。腫瘍性病変ですと,鈎状突起だけ切除する手術を外科でやってもらいますが,大変予後がいいですね。栄養状態は術前とほとんど変わらないです。
二村 胆嚢はSSへ浸潤すると一気に悪くなりますから,そのへんの診断がもう少し進歩するといいと思います。
有山 SSの診断は難しいですね。EUSをしても微小浸潤の診断は困難で,スキラスな癌で線維化が強いものは,深達度を深く読む可能性があるんです。胆嚢癌は開腹手術をお願いしています。腺腫内癌は腹腔鏡下手術でもいいかなと思います。
望月 境界領域の話が出ましたが,胆石合併の胆嚢癌はどうですか
二村 あれは難しくてどうにもならないです。それも進行癌が多く,胆石合併で手術後に発見されたというのは問題ですね。
 もう1つ,先ほど話に出ました腹腔鏡下胆嚢摘出術で新しい病気が出てきました。今先生がおっしゃった胆石合併胆嚢癌の術前診断が難しくて,胆石だと思って摘出したら進行癌で,そのうえ腹腔鏡下胆嚢摘出で開けた腹壁の穴にインプランテーションが起きるという新しい病気が増えてきました。非常にミゼラブルです。胆嚢炎を合併してない胆石ですと,胆石の他にポリポイドリージョンが見つかる経験がありますが,胆嚢炎を合併している時に,画像で診断できるようになるといいと思います。
有山 二村先生が言われたように,急性胆嚢炎に合併した胆嚢癌が当科では10%ほどありますが,術前診断は困難です。進行癌だと術中にわかりますが,切除標本で初めてわかったということが多いですね。
二村 術後に発見された胆嚢癌を再手術するかどうかはいまだに解決できていない問題です。

消化器画像診療の将来の展望

外科医としての将来の展望

望月 それでは,消化器画像診療の将来の展望についてお話し願えますか。
二村 将来の展望という話では,肝臓の領域では,流入・流出の脈管系と腫瘍との立体関係を1例ずつコンピュータの立体画像で出してもらえると,どの手術法が最適かをパソコン上で術前に絵を描いて検討できるのではないかと思います。
有山 将来の話と言いますと,SF映画によく出てくるようにCTみたいに1回スキャンすると,組織レベルまで全部わかってカラーの立体画像が出てくる。そういうものができたら最高ですよね。
二村 外科の領域ではハーモニックスカルぺルというのができました。大変凝固能がよいのは,振動が違うからですね。これで血管も3mmの動脈まで縛らなくても切れるようになりました。腹腔鏡下で胆摘をする時に,クリップをかけなくても胆嚢動脈はハーモニックスカルペルで切れます。

超音波による診断と治療の将来

竹原 超音波の将来の展望ということになりますと,診断領域では先ほどの各種造影剤の開発,ハーモニックイメージングとプローブの改良があります。現在使用されています体外式の電子スキャンのプローブは角型の振動子ですから方位分解能を規制する要素が2つあります。長軸方向(ビームが走査する方向)と短軸方向(厚みの方向)です。
 前者は多段フォーカスなどで長い範囲にわたって細いビームを得ておりますが,後者は音響レンズによるワンポイントフォーカスです。したがって,ビーム全体のバランスが悪く,方位分解能の向上の1つの障害になっています。この短軸方向の分解能を上げるため,こちらも多素子化し,多段フォーカスにすることが1―2のメーカーで試みられています。これを2次元アレイ,あるいは2次元スキャンと言っています。
 治療面でもかなり色々なことが試みられています。ご承知のように超音波には機械的(振動)作用,化学的作用それに熱作用の3つの性質があります。機械的作用を利用したものでは,集束超音波による結石破砕と腫瘍の細胞膜の透化性を高めて抗腫瘍剤の取り込みを促進させる試みが行なわれています。化学的作用の応用ではキャビテーションの持つ強力なエネルギーを利用するもので,集束した超音波を用いて薬物の作用を局所的にコントロールし,副作用の低減を促進したり,また薬物効果を高めて微量な薬剤投与を可能にします。第3の熱作用では,超音波エネルギーを熱に変換するもので,代表的なものでは癌治療に用いられるハイパーサーミアがあります。
 治療に用いられる超音波は,体内深部への深達性がよいことと集束による局所制御性が高いことがマイクロ波やレーザーにはない特徴とされており,これから大きく伸びる分野だと思います。

放射線科医から見た将来の展望

板井 CTに関して言えば,X線というのは実は“波”であって,これまでは波の性質を利用されていなかったのですが,現在その研究が行なわれています。従来の方法に比べて1000倍の感度があります。MRのほうは,まだ技術的にいろいろな可能性を残しています。一方,われわれが予測できないようなものが進んでいますので,今後のことはわかりません。今まで使っていないようなキャリアを使った画像診断が実現すると思います。
 この新雑誌の目的の1つである「画像と病理との精細なレベルでの対比」は大変重要だと思いますが,もう一方で,病理ではわからない疾患を,生きている人間を使って診断できるようにすることも追求していかなければいけないと思います。例えば血流の問題で言いますと,いくら病理に丁寧に切っていただいても,血流がどっちにどう流れていたかということまではわからないわけです。その情報が臨床に非常に役に立つこともあり得るので,そういう方向も同時に追求する必要があると思います。

新雑誌への期待,新雑誌からの期待

症例を検討する勉強会を

望月 今まで非常にクオリティーの高い専門的なお話をうかがってきましたが,おそらく出版されると,この新雑誌はそういう専門家にも関心を持っていただけることがわかっていただけると思います。
 しかしその一方では,これから肝・胆・膵の勉強をしたい,また,研究を進めようという若いドクターに向けて,どういうものを企画されているかをお話し願いたいと思います。例えば,愛読者の会のようなものを開いて,肝・胆・膵の症例をちょうど「早期胃癌研究会」のように討論していただき,診断のほうに反映していきたいという夢があります。
有山 望月先生がおっしゃったように,年に何回か集まって症例提示をし,病理と照らし合わせて勉強する会はぜひ必要だと思いますね。

特集企画,学会・海外文献紹介も

有山 それから,この雑誌では初心者の方がちょっとわかりにくいような事柄を取り上げて,超音波は竹原先生,MRは板井先生,技術面では二村先生の企画でわかりやすく解説する連載を予定しています。
 また,専門的な高度な内容で,画像診療がいまどこまで進んでいるかという特集も企画しています。
板井 画像はきれいで,細部まで描出されていることが望ましいのですが,どこを所見としてとっているのか,違うところを読者が見ておられたらこれは困ります。適切な矢印なり,必要な場合にはシェーマで確実に示してほしいと思います。また,日本には高いレベルの研究会がたくさんあるので,紹介していきたいし,学会の印象記などを通して,消化器画像により一層興味を持っていただけたら嬉しいですね。
 海外文献も幅広く紹介しますので,忙しい先生方にはきっと役に立つと思います。
竹原 超音波では,体外式のUSの臨床評価は大体定まっておりますので,教育のための講座として連載しますが,まず初心者向けを始め,途中から中級者以上を対象にしたものを加えて,2本立てにしたいと思います。また特集として,新しいものをどんどん入れていくということも必要ですが,やはり総合画像の立場からですから,ある疾患に対して画像をどう使っていくかという特集を,皆さんと一緒に組んでいくようにしたらと考えています。

外科と内科のコントラバーシー

二村 『消化器画像』と言うタイトルですから,読者の対象として外科の先生を大いに意識していきたいですね。編集する上で外科的治療に関する内容を盛り込むことも大事なことだと思います。進展度診断もそうですが,診断していただいても,手術適応の術前診断が受け手の外科医や施設によってかなり異なります。編集面でもそれらを反映できる企画を立てたいと思います。
有山 おっしゃるように手術適応については外科の先生や施設によって違いますね。結局,予後との対比が必要になってくるわけで,進行癌を切除しても非切除と同じ予後だと問題ですね。
二村 それから,内科が治療するか外科が治療をするかも施設によって違うところもありますし,臓器特異性ということと,手術が難しいということがありますかね。
竹原 しかし,将来は統一されていくべきものなのでしょう。
望月 そういう格差をなくしていくこともこの雑誌の目的の1つになりますね。
板井 外科と内科のコントラバーシー,例えば膵癌はたしかに拡大切除で取れるけれども,一方では予後など少しはよくなっても,患者さんを苦しめるだけではないかという問題があります。技術だけの問題だけではないと思います。
有山 特集の企画については,それを専門にやっていらっしゃる編集協力委員の先生にお願いして,具体的に企画していただくことが一番よいと思います。
望月 この雑誌は専門的に深く掘り下げていくとともに,大変幅広い読者層を対象として,「こんな雑誌が欲しかった」と言われるような内容で,しかも少しでも消化器画像の診療,進歩に貢献できる雑誌をめざしていきたいと思います。先生方にはお忙しいところ,大変ご負担になると思いますけれども,今後ともよろしく編集をしていただければありがたいと思います。本日は長時間,忌憚のないご意見をいただきましてありがとうございました。

(おわり)

 本稿は弊社から明年刊行される『消化器画像』の創刊を記念して開催された座談会を医学界新聞編集室で再構成したものです。なお,座談会の全文は『消化器画像』の「創刊号」に掲載されます。