医学界新聞

日本におけるストロークケアユニットの可能性を論議

「日本脳卒中学会」パネルディスカッションより


 さる6月25-26日の両日,札幌市で開かれた第23回日本脳卒中学会(会長=札幌医大教授 端和夫氏)のパネルディスカッション「Stroke Care Unitの効果とあり方」(座長=秋田脳研 上村和夫氏,埼玉医大総合医療センター 浅野孝雄氏)では,江口恒良氏(亀田総合病院),成富博章氏(国立循環器病センター),中山博文氏(国立大阪病院),鈴木明文氏(秋田脳研),Peter Mark氏(ベルリン大)の5氏に加え,特別発言としてWolf-Dieter Heiss氏(独・Max-Planck-Institute for Neurological Reserch)が登壇。自施設におけるストロークケアユニット(SCU)のあり方(規模などの紹介と運営状況)とメリット,SCUにおける診断と治療,SCUの意義についての現時点での自己評価,直面している問題などを内容とする報告が行なわれた。また,外国におけるSCUの実状等も紹介されるとともに,将来の可能性・展望についても議論された。

日本における先進例

 江口氏は,6床(医師6名,看護職18名)の専用ユニットで脳卒中患者の治療にあたっていることを報告。夜中でも画像診断を行なっていること,同ユニットが一般病棟と同フロアにあり,一般病棟のチームとともに共同使用することに意義があると述べた。また,同ユニットで使用しているスパイラルサージカルベッド(360度回転式ベッド)を紹介。ユニットの成果として,在室日数の短縮,治療効果があがったことのメリットを報告するとともに,後方ベッド・病院の増加を強く望んだ。
 成富氏は,医師30名,看護職22名体制によるSCUの活動を紹介。24時間血管撮影が可能であり,超急性期血栓溶解療法,低体温療法を実践していることなどを報告し,メリットに「24時間対応,軽症から超重症までの早期対応,看護職の専門化」を,デメリットとして「高額医療になること」をあげ,低体温療法の適応年齢と発症からの時間や,江口氏同様に後方ベッド・病院の不足が課題であるとした。
 鈴木氏は,秋田脳研が昨(1997)年9月に脳卒中診療部を開設したことを報告。死亡率の低下から,「患者のQOLをいかに保ちながら退院させるかが課題になっている」と述べた。また,組織改変に伴いリハ機能が施設内になくなり,リハ充当者は転院となることも報告。さらに,神経内科・外科がプロジェクトチームを組んで問題解決にあたっていること,症例記録を統一記入方式に改めたこと,退院時のADLレベルがあがったこと,関連各科との意志統一が図れるようになり,特に看護チームとの連携がスムーズになったことをあげる一方で,機能回復をめざすための専任リハスタッフがいないこと,高額医療であることをデメリットとした。

諸外国に学ぶこれからの展望

 中山氏は,デンマーク(コペンハーゲン)でのストロークユニットでの実習体験から,国内での課題を提言。デンマークにおけるStroke Unit Study Teamの実状を紹介し,そのメリットに生命予後の改善,早期の機能回復,入院日数の短縮などをあげた。また,日本での病院・地域・保険診療上の視点からの設置の問題点を指摘する一方,SCU設立への可能性を示唆した。
 なお,ドイツからの演者2人は,発症後3時間以内での血栓溶解剤(t-PA)の有効性,糖尿病と血栓溶解療法との関連などを,実体験から報告した。
 総合ディスカッションの場では,「脳神経外科と神経内科が,別部門として双方が治療にあたっているが,同施設の中で合同で対処していく必要がある」「看護職,PT,OTなどによる専門チームの育成が重要」「一般病棟の中に,SCUと同様の機能を果たしている病棟があるのではないか」などが議論されるとともに,「超急性期の脳卒中だけに対処するのではなく,常設のSCUを考える必要がある」「コスト的にも各病院内にSCUを作ることは難しくはないのではないか」など,活発な意見交換がフロアを含めて行なわれた。