高齢者終末期医療への視点
老人の専門医療を考える会シンポジウムより
さる6月6日,東京の銀座ガスホールにおいて,老人の専門医療を考える会(会長=青梅慶友病院長 大塚宣夫氏)主催によるシンポジウム「高齢者の終末期医療-尊厳死を考える」が開催され,高齢者医療に取り組む第一線の演者らが話題を提供した。
死は医療のものか
「これからのターミナルケアに求められる視点」を口演した広井良典氏(千葉大助教授)は,「超高齢時代においては後期高齢者の死亡が急増し,長期の介護の延長線上にあるようなターミナルケアが増加すると見込まれる。より,ソーシャルサービスや『生活モデル』的視点の重要性が高まる」との見解を示した。その上で,戦後日本においては「疾病構造の変化,医療技術の高度化,病院化の進展の中で,急速な死の医療化(medicalization)が起こり,病院での死が急増した(日本人の病院での死亡率は,1965年には死亡者全体の29%だったが1995年には74%に拡大)」と指摘。「日本における死に場所としての病院への集中と,ターミナルへの今日の人々の意識は,高度経済成長期を中心とするこの30年の時代環境と,制度・政策のあり方によって大きく規定されたものである」との考えを示した。
さらに広井氏は,「死は医療のものか」と問い,「死は医療サービスにより一義的に決められるものではない。個人の判断による死のあり方の『選択』の幅を拡大すること。それを可能とするような政策的支援が重要である」と強調した。
具体的には,在宅・福祉施設でのターミナルケア,施設や居宅に孤立しないような通所型サービスへの支援などをあげるとともに,「死生観そのものを含めて,ターミナルケアというものを,より広い視点から捉え直す作業がいま何より求められているのではないか」と問題を提起をした。