医学界新聞

21世紀の老人ケアをみつめて

第6回全国老人ケア研究会が開かれる


 2000年からの公的介護保険の実施に向け,その対策としてホームヘルパーの養成や訪問看護ステーションなどの整備,さらに介護保険制度の要介護認定をめぐっては介護支援専門員(ケアマネジャー)の養成が急がれ,9月には実務研修受講資格試験も行なわれようとしている。
 そのような中,「看護と介護の協調と自立」をめざし,「老人ケアの質の向上に貢献する」ことを目的に発足した全国老人ケア研究会(会長=都老人研 鎌田ケイ子氏)は設立5周年を迎え,さる7月11日に同研究会の第6回研究集会が,東京・千代田区の九段会館で開催された。
 本研究集会には約850名が参加。5周年記念として,ジョン・N・モリス氏(アメリカ・ヘブリューリハビリテーションセンター)による特別講演「21世紀の老人ケア-RAI開発の背景とその意義」が行なわれた他,会長講演「ケアマネジャーに期待されること」やシンポジウム「ケアプランの実践―介護保険に向けた取り組み」(司会=東海大教授 井上千津子氏,鎌田氏),さらに4題の研究発表が行なわれた。

日本におけるRAIの有用性を解説

 MDS(Minimum Data Set)やRAPs(Resident Assessment Protocols),さらにはRAI(Resident Assessment Instrument MDSとRAPsを併せたもの)を開発,検証する研究チームの主任研究員を務めるモリス氏による特別講演では,池上直己氏(慶大教授)が通訳を担当。モリス氏は,「アルツハイマー病で亡くなった母親への施設(ナーシングホーム)の対応の悪さが開発のきっかけ」と語り,RAIは,「各個人の機能レベル,その残存能力および問題点,ニーズ,嗜好について,包括的な状態像が把握できるような基本的項目を含むアセスメントツール」として,一般の看護婦やソーシャルワーカーが利用できるものとして評価され,RAIのアセスメントシステムは,全米のナーシングホームに義務づけられていることを述べた。
 また,「RAIは多様な文化言語,医療システムに対応できることが検証された。在宅ケアにおいては,現在のバージョンを簡便化したスクリーニング尺度として,日本やイタリア,ドイツなどで利用することが検討されている」ことを明らかにするとともに,「適切な資源とRAIのアセスメント方法と問題点を把握するシステムを用いることによって,高齢者の予後と将来を変えることに貢献できる」とまとめた。
 一方,鎌田会長はRAIを使う側となるケアマネジャーの条件に,「介護保険制度や高齢者の諸サービスについての正しい理解とニーズに即したケアプランが立てられること」を強調。期待される新しい役割と新たな能力について,「利用者の代理人であり,サービス開始にあたってのケアチームのまとめ役である」と指摘した。
 また,シンポジウム「ケアプランの実践」では,高齢者におけるケアプランの作成にあたっては共通言語が必要との観点から,MDSなどを用いたケアプランの具体的な策定経過が4者から述べられた。