医学界新聞

第35回看護リフレッシャーコース開催

「ヘルスケアの革新」をテーマに


 さる6月19-20日,日本私立看護大学協会主催による第35回看護リフレッシャーコース(当番校=聖路加看護大)が,聖路加看護大学アリスセントジョンメモリアルホールにおいて,「ヘルスケアの革新」をテーマに行なわれた。

健康は商品,医療はサービス

 まずはじめに,日野原重明氏(聖路加学園理事長)は,「ヘルスケアの革新-健康は商品の時代」をテーマに据えた基調講演の中で,21世紀のヘルスケアシステムを考察し,「医療はサービス」と定義。健康を「商品」とし,患者はその消費者(consumer)としてとらえ,「いかに医療が品のよいサービスを提供できるかが医療の変革につながる」と述べ,このコースの核となる考え方を示した。
 午後にはフォーラム「ヘルスケアの変革」が,消費者(患者),医師,看護婦の立場からそれぞれ演者を迎え,羽山由美子氏(聖路加看護大)を司会に行なわれた。
 医療の「消費者」である患者の立場から辻本好子氏(ささえあい医療人権センターCOML代表)が,1回平均40分間という,COMLの活動の中心である患者からの電話相談を受ける中でのさまざまな事例をあげ,「患者は看護婦が何を自分にしてくれるのかわからない」とし,氏は看護婦には医師と患者の架け橋というよりも,患者が自分が受けたい医療を決定する際の支援者になってほしいと訴えた。
 続いて医師の立場から井上肇氏(聖路加国際病院)は,ヘルスケアとは何かを考える上で,医療財政,制度,教育システムなど種々の側面から出る問題点をキーワードをあげて解説。さらに総論として,これからの医療改革には,(1)医療の原点への回帰,(2)人間としての総合力(リベラルアーツ)の教育,(3)患者の自助努力を進める,(4)医療コストの改革などが必要と述べた。
 看護婦の立場からは井部俊子氏(聖路加看護病院)が登壇し,看護をサービスマネージメントの概念を適応して考えることの有効性を解説。サービスを提供する側と顧客(患者)とが出会うその瞬間が最も重要とする「真実の瞬間」(ヤン・カールソン)を,また顧客とサービス提供者間で起こる「ミクロの循環(相互に高揚した感情を持って互いに関わり合うこと)」などのサービスに関する種々のキーワードを紹介し,「これらを良質なものにする組織の姿勢がこれからの看護や病院に問われるだろう」と結んだ。

看護教育と実践の場での変革

 2日目は,「看護の変革は今,教育と実践」(座長=聖路加看護大 堀内成子氏)と題したシンポジウムが開かれた。前半は教育における変革を,後半は看護実践における新しい試みを5人の演者が口演した。
 まずはじめに菱沼典子氏(聖路加看護大)が,1995年より導入された聖路加看護大学の改定カリキュラムを紹介。続いて森明子氏(聖路加看護大)は,3年前から同大学で「家族発達看護論」など一部の授業に導入されたPBL(problem-based learning)について,具体的な授業の進め方に沿って概説。「学生の自発的な問題解決能力を向上させ,臨床能力を高めるに有効な手段である」と結論づけた。
 一方,看護の実践については,まず最初に片山純子氏(聖路加国際病院)が,高血圧の専門外来「高血圧クリニック」設立の経緯と活動内容を報告。これは同病院の循環器専門医の依頼により8年前に開設され,コントロール良好の高血圧患者を対象に週3回,医師の診療行為と同様の内容で行なわれるもので,待ち時間短縮など患者の満足度の向上や,身体的・精神的な管理など看護が外来を実施するメリットを明らかにし,外来専門看護の有効性を示した。
 次に,がん専門看護師である中村めぐみ氏(聖路加国際病院)は,今年から開設された緩和ケア病棟の設立過程と,そこでのがん専門看護師として特性を活かした看護のあり方を紹介。氏は病院で「緩和ケア検討会」を主催し,リエゾンナースと協働しての患者サポートや疼痛ケアプランなどの作成に加えて,教育と臨床実践との融合をめざした院内スタッフ教育や大学やセミナーでの講義,研修生の受け入れなど多岐にわたる活動を報告した。