医学界新聞

第4回日本看護診断学会が開催される


関東以北で初の開催

 第4回日本看護診断学会が,さる5月30-31日の両日,菊地登喜子会長(東北公済病院)のもと,仙台市の仙台サンプラザホールで開催された。なお,今回は前身である日本看護診断研究会の設立(1991年)以来,初めて関東以北の地での開催,「看護診断の発展をめざして」をテーマに約2000名が一堂に会し,「実用に供する看護診断の検討」(菊地会長)を行なった。
 今学会では,一般演題11題の発表をはじめ,会長講演「臨床力を高める看護診断」や川村佐和子氏(東京都立保健科学大)による特別講演「実践・教育・研究における看護診断の意義」,教育講演(1)「基礎看護教育と臨床の連携」(三育学院短大 鈴木恵子氏),(2)「看護診断・看護介入・成果」(聖路加看護大 岩井郁子氏)の他,シンポジウム(1)看護診断導入と記録の変化―看護の質は向上したか,(2)継続看護と看護診断―ケアの継続に役立てるためには,およびパネルディスカッション「事例展開―異なるアセスメント枠組みを用いて」(司会=東医歯大 数間恵子氏,東北公済病院 千葉はるみ氏)が企画された。なお同学会の開催に際し,学会理事長である松木光子氏(福井医大)が,本年4月にアメリカ・セントルイスで開かれた第13回NANDA総会において,看護診断の国際普及に貢献したとして表彰されたことが紹介された(“看護版特別編集”として同NANDA総会の記事を掲載)。

看護診断はキャリアの積み重ねに有用

 菊地氏は会長講演で,「東北公済病院では1991年から看護診断の導入を開始し,現在はPOSと看護診断とセルフケア不足理論を用いている」と紹介。「適切な文献活用,実践感覚の重視,カテゴリーの意味の理解などから,看護診断の導入は,安易な経験だけで解決しようとする習慣を変えた」と述べ,採用の経緯や看護の質の向上に寄与した実践例などを報告した。
 また,「看護診断の構成要素は,アセスメント能力の改善,情報吟味など飛躍的な展開につながり,主要な部分の相互の関連としても筋道や表現内容を一段と確かなものとした」として,「看護実践の延長線上の研究的アプローチ法が示唆されたことは大きな収穫であった」とも述べた。
 さらに,卒後1年目および3年目研修を比較し,「研修による訓練は思考過程を緻密に踏むことへの成果につながり,研修者からは“キャリアとしての積み重ねに有用”との反応があった」と報告。「看護チーム内の意識の変化も起こり,4年目の看護職は臨床指導者として十分に後輩の指導ができる能力が身についている」と評価した。
 一方パネルディスカッションでは,「幼少より病弱であり,離婚暦のある60歳代の女性。以前より生活保護を受け,現在身体障害者1級を認定,CAPD導入をしている身長151cm,39kgの糖尿病患者」を共通事例として,松田美紀子氏(慶大病院)が「ゴードンの健康パターン」を,佐賀亮子氏(筑波記念病院)が「ロイ適応看護モデル」を,渡邊和子氏(東北公済病院)が「オレムのセルフケア不足理論」の枠組みを使い事例展開。患者の状態を共通の用語で表現できるか,また看護診断名を共通言語化できるかを検討するユニークな試みとなった。3者それぞれが日頃から臨床の現場で実践している代表的なアセスメント枠組みながら,導き出された「診断名」には違いがみられた。しかしながら,その結論までに至るプロセスは,今後の看護診断を考えていく上での大きな指標となった。今後も同様の企画が催されることも期待したいが,できうるならば少人数グループで,参加者が忌憚のない意見が述べられる場となることが望まれる。