医学界新聞

実力は自分で培う時代に

第3回日本看護サミットかながわ'98開催


 第3回日本看護サミットかながわ'98が,さる6月9-10日の両日,小林こと実行委員長(神奈川県看護協会長)のもと,横浜市の神奈川県民ホールで開催された。
 日本看護サミットは,厚生省ならびに日本看護協会の後援を得て,「少子・高齢社会を迎え,看護の機能と役割を公に宣言するとともに,看護職の社会的評価を高めること」を目的として,第1回が岐阜県岐阜市で,第2回は昨年石川県金沢市で開催されている。今サミットは「看護の未来をデザインする-豊かな心と希望を21世紀に」をメインテーマに掲げ,鼎談「これからの(21世紀に向けた)看護のあり方(清水嘉与子参議院議員,見藤隆子日本看護協会長,南裕子日本看護系大学協会長)などのプログラムが企画された。
 また,開会式で主催者側としてあいさつに立った岡崎洋神奈川県知事は,「神奈川県に21世紀を展望し,地域の保健・医療・福祉サービスを担う,質の高い人材養成をすべく県立の保健・医療・福祉系大学および卒後教育機関を2008年までに設置する」と表明した。

行政,団体,教育の3巨頭が看護を語る

 開会式後に行なわれた鼎談は,南氏の司会のもと「健康問題に看護はどう考えるのかなど,互いに注文をつけあいましょう」との主旨ではじめられた。
 政治家の立場から清水氏は准看護婦制度に触れ,「戦後のマンパワー不足からできあがった制度が今なお続いている」ことを憂慮,さらに「看護教育は大病院指向であり,看護職の教育にもかかわらず医師に頼った教育であった。今後は看護職が臨床現場とともに,他職種とどうチームを組むのかを考えながら主体的にかかわること」と新たな看護教育への姿勢を促した。
 一方団体の立場から見藤氏は,看護婦,准看護婦,補助看護婦の「看護の3層構造」を批判。実質としての業務は「看護職,補助者」の2層のままであると指摘し,協会として准看護婦養成停止に向け積極的に取り組む姿勢を強調した。また,「政治には学問や理屈では動かない部分がある。これからの看護職には政策,行政に明るくなることが望まれる」と発言した。
 南氏は,自身の看護職としてのスタートが開催地となった横浜市だったことを披露し,教育の立場から発言。本年63校に増えた看護大学の機能について,(1)看護職養成の基礎教育と大学院教育への人材育成,(2)研究機関,(3)対社会的なサービス機関があると指摘し,「地域の人たちと一緒にパワーある学問を育てることが重要だが,これまでは研究機関の重みが小さすぎたのではないか。今は大学としてサービス機関の意味を問い直し,考える時期である」と提言した。また,「1人よがりの研究ではなく,看護界を動かすような厚生科学研究などが必要。現場との質の格差を考え,学問とデータをどう結びつけ政治に反映させるかなどを考える必要がある」とも述べた。
 また,看護の将来像についての話題で見藤氏は,「現在の看護協会の組織率は50%程度だが,全パワーが集結すればすごい力となる。政策集団としての看護協会にならなければいけない。そのために基礎教育の中で,学生に職能による団体としての義務を伝えてほしい」と述べ,「これからの看護に国際指向は必然。英語力を身につけ,ラダー(階層)のある職種を楽しむ時代だが,実力は自分自身で培うこと」と述べた。