医学界新聞

1998年第92回  国試合格体験記


これで8割はとれる

阿部里見(旭川医大卒)

 私が医師国家試験の勉強を始めたのは,臨床研修の始まる前の5年の冬休みです。私は,『アプローチ』シリーズ(医学評論社)と『イヤーノート』(MEDIC MEDIA),『国試マニュアル100%』シリーズ(医学教育出版社,特に小児科・皮膚科・整形外科),そして『標準』シリーズ(医学書院)を使いました。これから私の国試攻略法をお話しします。
 まず1つ目のポイントは,産婦人科と小児科はできるだけ早く始めよ,ということです。特に産婦人科は,国試で比較的大きなウエイトを占めています。後回しにすると卒試も近づき,後悔した人を何人も知っています。これらに関しては,本当に早い者勝ちです。
 次に内科・外科に関してですが,私はとりあえず6年の8月中に,1回終わらせるよう目標を立てました。そして,5年冬休み・春休み・6年の夏休みを利用して,科目別に内科と外科を一緒にやりました。もう少し具体的にお話ししましょう。

各科目別のポイント

 まず,皆さんの苦手な心電図です。そこで,私は『心電図のABC』(協和企画通信)で基本を押さえ,『イヤーノート』を見ながら臨床問題を解いていく方法をとりました。あとは,臨床研修中に先生に鍛えてもらえばOKです。循環器は,病態のイメージが頭に浮かべられるとよいと思います。それには五幸恵の『病態整理できった』シリーズ(医学教育出版社)がお勧めです。
 消化器は,聞き慣れた疾患が多く,手を抜きがちですが,結構細かい所まで問われているのですよ。一般問題で出てきた疾患はまめに『イヤーノート』でチェックしましょう。そして,1つでも多くの画像を見ましょう。私は『アプローチ』の臨床問題を使いましたが,この他にかなりの効果があったのは『KOKUTAI』(『医師国試対策』,医学教育出版社)の画像特集です。これで見る目がつきました。
 神経疾患は,まず運動と知覚の神経の走行を覚えることです。そして,それが障害されたときの症状で覚えるポイントは,中枢での障害か,末梢の障害かがわかるようになることです。これでも『イヤーノート』のまとめは読みやすかったです。

必修問題・禁忌肢対策

 そして私たちの最大の敵である,必修問題・禁忌肢対策についてです。薬に関する禁忌肢に対応するには,大変でも薬の作用を覚えましょう。特に循環器系の薬は,作用を覚えることによって間違えることはありません。問題集としては,学年全員が1回以上解いていた,『KOKUTAI』の必修対策特集をお勧めします。加えて,私は2月から『Dr.M』(MEDIC MEDIA)も使いました。実際,この中からまったく同じ問題が出たわけではありませんが,選択肢を選べるだけの知識がついて,おかげで正答率は98%でした。
 最後にマイナー科目ですが,私の臨床研修はマイナー科目から始まりました。そこで,マイナー科目は,『アプローチ』と『国試マニュアル100%』を中心に,その科の臨床研修を回っている間に一通り終わらせるよう心がけました。並行して,臨床問題の勉強会を行ないました。
 最終的に,メジャー教科はほぼ3回,マイナー教科は2回繰り返しやりました。直前になって力を発揮したのは,語呂合わせと『クエスチョンバンク』(QB)シリーズ(MEDIC MEDIA)です。QBは解説に『イヤーノート』の大切なところがそのまま載っているので『イヤーノート』を開く手間がかかりません。1月になってQBに変えた人も多くいます。私も一般問題の3回目はQBでやりました。
 以上,少しでも皆さんの参考になればよいですが……。もしも,行き詰まったり,聞きたいことなどありましたら,下記にご連絡いただければ結構です。また,整形外科に興味のある方は,夏休みに広い北海道で研修をしてみてはいかがですか。ご相談に応じます。
・阿部里見
〒079-8510 北海道旭川市西神楽4線5号3-11 旭川医科大学整形外科教室


Minimum Studyで合格した1例

真田高起(旭川医大卒)

ゴールデンウィーク後からのスタート

 私が国試の準備を始めたのは6年生のゴールデンウィーク後でした。合格してしまった以上この時期が遅かったのか早かったのかはわかりませんが,正直もっと早くすればよかったと思います。
 内科,外科の臨床問題は『パワーアップ』(医学教育出版社)を使用して,一般問題は『クエスチョンバンク』を利用しました。これを夏休み中になんとか一通り目を通す勢いでやり終えて,夏休みが明けてからは産婦人科,小児科に取り組みました。
 参考書は内科,外科に関しては『イヤーノート』,産婦人科,小児科では『標準産婦人科』,『標準小児科』(医学書院)を参照して知識を少しずつ増やしました。夏休みは旅行にも行きましたし,病院実習もしました。遊ぶ時間は比較的多かったです。部活の大会にも出ました。

夏休みの後は

 夏休みが終わってから11月中頃までに産婦人科,小児科を一通り目を通して卒試に突入です。卒試中はマイナーとともに卒試を終えました。卒試は12月末に終わったので,年末年始で公衆衛生をきりあげ,とりあえず一通りは終了です。
 毎日勉強すると息ぬきが必要になります。僕の場合は土地がらもありスキーをしたりしていました。そうして,1月に内科の2回目に移行します。2回目の一般問題は『クエスチョンバンク』は使わず『国試データマニュアル』(MEDIC MEDIA)を利用しました。1問1答のほうが確実に知識になると思ったからです。決してひまがあったわけではありませんでしたが,スキーの大会にも出場していたことを想い出します。
 外科に関しては力を入れてやりませんでした。産婦人科,小児科の2回目に移りましたが,特に『KOKUTAI』の産婦人科,小児科の特集は参考になりました。おかげで少ない時間でも効果的な国試対策ができたと思います。
 勉強はあまりしたくなかったので,模試も3回しか受けませんでした。一応合格圏内だったので,時間の余裕はなかったのですが,心の余裕を持って2月はオリンピックを見ながら勉強してました。(多英ちゃんおめでとう!)
 マイナーは『KOKUTAI』のみでなんとかなりました。必修問題も少しやったところで本番を向かえました。
 なんとかこれでも合格することができました。今思うと『KOKUTAI』は大変役に立ったと思います。国試直前の頃に『KOKUTAI』をやってよかったと思います。
 現在は旭川医科大学の整形外科で先生方と楽しく,充実した日々をおくっているところです。とても雰囲気のいくいろいろな方面の能力を持った先生方が集まっている医局です。国試の勉強をはじめたばかりのみなさんも,メリハリのある勉強で頑張ってください。


丸暗記で終わらせないこと

屋代英樹(慶大卒)

 私の大学では医師国家試験の勉強は比較的遅く始めるのが恒例らしく,私の場合も正味半年ぐらいしか勉強しませんでしたが,どうにかこうにか国家試験に合格できました。本来,少ない勉強時間で試験に合格するのは邪道ともいえることかもしれませんが,勉強する時間は無限にあるわけでもなく,「(国家試験まで)あと1年も残ってない」と不安になっている人にも多少は参考になるかもしれないので,この1年あまりを振り返ってみたいと思います。

臨床実習で学ぶ

 まず他の大学ではどうかは知りませんが,私の学校では臨床実習が非常に遅く,5年の9月から,6年の12月まで行なわれます。その結果,純粋に国家試験の勉強だけをしている時間はどうしても短くなりました。そのうえ卒業試験がないので,全科的に振り返るための時間が特に用意されてはいませんでした。そのため,早い時期には過去問を解くことはまったくしませんでした。
 臨床実習の間にしたことは,実習で回っている科の重要な疾患については,できるだけ特徴の丸暗記ではなく病態を理解することに努めました。どうせここで暗記してもすぐに忘れてしまうだろうと考えると,ただ暗記することより,後で暗記するときに暗記しやすくなるような知識を身につけようと思いました。そのせいか,臨床実習の間は「こんなことも知らないの?」と言われることが多く,恥ずかしい思いもしました。
 ただ,その結果,あまり国家試験にとらわれずいろいろ興味を持って勉強できたので,医学面の雑学的なことから医療の問題点など,なかなか教科書では読まないようなことを勉強できて,それはそれでよかったと思います。

過去問を解く

 12月頃からはさすがに慌てなければだめだなと思い,過去問を見だしました。ところがどうしても知識の羅列に思えて勉強しにくかったので,もう1度『チャート』シリーズ(医学評論社)などの簡単な本で全体の流れをつかみました。その後,内科から過去問を勉強し始めました。
 その後,産婦人科,小児科,外科,マイナー,公衆衛生と進めるうちに時間は2月の終わりとなっていました。結局,最後の模試までに全範囲が終わっていないというかなり恥ずかしい状態になってしまいました。模試の結果も散々なものでしたが,本番では1割以上アップするという先輩からの言葉を信じてがんばりました。この時期には1日200頁ぐらいはこなしていたので,すべては頭には入りませんでした。ただ,覚えきれないことは後回しと思い,チェックをつけて,ひたすら先へ先へと進みました。
 その後,3月に入ってから,覚えきれなかったところを見直すという地道な作業に入りました。そして,どうにか無事に国家試験を終えることができました。

最後に

 総合的に見て,私のした勉強はあまり一般的な方法ではないと思います。ただ,臨床実習を大事にして臨床の場で勉強していたら,結果的にはかなり短時間で国家試験の勉強はできるようになるのは事実だと思います。
 人に聞けば,勉強会だとか,早め早めに勉強するとか,とかく色々なことが言われている国家試験の勉強法ですが,自分にあった勉強法をするのが一番だと思います。