医学界新聞

ジェリィ・ロガマン氏が講演

臨床に直結する嚥下障害の実践セミナー開催


 さる5月16-17日の両日,東京の科学技術館サイエンスホールにて,「臨床に直結する嚥下障害の実践セミナー」(主催:日本言語療法士協会)が開催された。
 本セミナーは米国よりジェリィ・ロガマン氏(写真)を講師に迎え,全国からST(Speech Therapist),医師,看護婦,PT,OT,栄養士ら嚥下障害の治療・ケアに携わる多くの職種の参加のもとに行なわれた。なお,コーディネーターは倉内紀子氏(国立身体障害者リハ学院),熊倉勇美氏(川崎医療福祉大)の両氏。
 ロガマン氏は,イリノイ州エバンストン市のノースウェスタン大学のコミュニケーション科学・障害学部教授およびシカゴ市にあるノースウェスタン大学医学部の耳鼻咽喉科・顎顔面外科・神経科の教授であり,NIH(米国立衛生研究所)の資金を受け,正常嚥下の生理学と嚥下障害に関して20年間にわたる研究を続けている。数多くの論文,著書により世界的に知られているが,本セミナーではその研究の蓄積を背景に,(1)嚥下障害の主なサイン・徴候と考えられる生理学的原因,(2)嚥下障害診断の基盤となる正常嚥下の生理,(3)ビデオX線造影検査(新バリウム嚥下検査)の施行と結果,(4)嚥下障害の治療,(5)診断別治療プランについて詳細な講義を行なった。
 ロガマン氏は,「嚥下障害のサインや徴候(咳,誤嚥,湿性嗄声,口腔内や咽頭壁上の残滓,等多様)を正すために治療・訓練を行なうのではなく,嚥下障害の生理の異常を改善するために治療・訓練を行なわなければならない」と指摘。嚥下障害診断の基盤となる正常嚥下の生理を解説すると同時に,嚥下障害のさまざまなサインや徴候から考えられる生理学的原因を示した。

ビデオX線造影検査

 また,検査については「嚥下の生理・解剖を理解し,治療・訓練の戦略を立てるために有効であり,かつ,患者への侵襲を最低限に抑える検査を選ばなくてはならない」と述べ,患者への危険が少なくかつ咽頭の動きを見る唯一の方法である「ビデオX線造影検査(新バリウム嚥下検査;VF)」を推奨した。ロガマン氏はその手順,結果の解釈から診断別の治療プランまでを解説し,「VFを行なわずに嚥下障害の治療をすべきではない」との見解を示した。