医学界新聞

合格者に聞く医師国家試験対策


ポリクリと過去問を中心に

小坂 晃一(東海大卒)

 国家試験を終え,これから研修医として働くことに期待と不安を持っている今日この頃です。みなさんは大学生活をエンジョイしていますか。今回の試験は試験前も試験後も何かと噂の多いものでした。というのも去年から国家試験の合格基準がクリアではなくなったため,どのような点に注意して国試の勉強を進めたらいいのかわかりづらかったためです。
 これから国試の勉強を始めようとしている人も,すでに始めていて余裕のある人も,なるべくいい加減な噂に惑わされることなく,しっかりと勉強を進めていってもらいたいものです。
 当たり前だと思うかもしれませんが,国試で基本的かつ重要なポイントは「ポリクリ」と「過去問」です。以下このことに関して私のしてきたことを順に書きます。

病院実習(ポリクリ)

 私の大学では6年の時に選択科目として自分に興味のある科を自由に選べます。私はマイナーと病院外での実習をとることに決め,そこで多くのすてきな先生方と会うことができました。このポリクリは7月末まで続きましたが,実習をした病院で多くのプライマリな症例を体験でき,その時先生方に教えてもらったことは,その後の受験勉強に非常に役立ちました。
 みなさんご存知のように,最近の国試はプライマリケアを重視する傾向があります。実習中になるべく多くのケースを見るように心がけ,先生方が行なう検査や手技を見て,常になぜそれらが必要なのかを頭の中で考えることが大切です。その時疑問に思ったことは先生に聞くか,時間がないようなら雑誌やテキストを読んで理解するように心がけ,基本的なことは『イヤーノート』(メディックメディア)を引きながら覚えるようにできれば完璧です。
 このようにして得られた知識はその後もずっと強い印象を与えてくれ,同じようなケースを取り上げた問題に出会った時,思わずニンマリすることでしょう(決して人に見られないように)。私はポリクリのおかげで,その後特に実地問題に関しては抵抗なく勉強することができたと思います。

過去問

 やはり受験に関して一番基本的なことは過去問を多く解くことです。私は夏休み(7-8月)の間に『クエスチョンバンク』(メデックメディア社)の実地問題を片っ端から解きました。その後は一般問題も解き始めましたが,卒業試験が近くなったため中断してしまいました。卒試後,国家試験まで4か月ほど時間があったため,自宅の近くにあるトレーニングジムで週4回ほど汗をかきながら,たまに学校へ行き友人と国試のことや就職のことを話しつつ,気分転換を図りました。
 年明けからは,内科や外科の問題を中心に勉強を進め,『クエスチョンバンク保健医療論・公衆衛生学』(メディックメディア)を1週間ほどで一通り解き,時間があるときにマイナー対策として『100問のススメ』(医学教育出版社)を各科2日ずつくらいで解きました。マイナーに関していえば,最近は基本的な重要疾患しか出題されないので,過去に出された難しい専門的な問題は解けなくても構わないと思います。全体的な流れをこの本で確認すればいいと思います。
 2月には小児科や産婦人科の問題を解き,3月には禁忌肢や必修問題対策をしました。この時期になると多くの人が必修問題に神経を尖らせていましたが,予備校等からさまざまな問題集が出回っており,手に入れたものを片っ端から目を通すことにしました。模擬試験については,テコム模試はテコム模試の第4回,5回と,メックの第2回の合計3回を受験しました。どの試験も本番を予想しており,本番で緊張しないためのよい訓練となりました。

今年の問題に関して

 今年の国試は例年より1週間遅れ,時間的に少し余裕がありました。問題に関しては,どの問題も各科代表的な疾患が多く出題され,選択肢も適当であったと思います。画像もその疾患に特徴的なものを採用しており,素直に考えれば自然に正答できるようになっていました。そのためか,平均点も高かったようで,実際に合格率も去年より上がりました。
 合否のポイントはやはり禁忌肢や必修問題に集中したと思います。いずれも多くの問題を解き,本番では「素直に解く」ことを心がければよいと思います。
 試験後には合格基準に関して多くの噂が出ましたが,全体で6割以上(少し上がったかも),D問題は8割以上,禁忌肢は多くを間違えないことでよかったのではないでしょうか。この点に関しては,これからも今年の受験生から情報が流れてくると思います。

最後に

 皆さんご存知の通り,国家試験は昨年から必修問題,禁忌問題,複数選択肢問題などが登場したことで,その合格の基準を知ることが難しくなりました。したがって合格するまでは多くの受験生が不安な日々を送っていたようで,私もその中の1人でした。厚生省が合格基準を発表しないので,これから受験をする人たちの中でも,その点を気にしている方がいると思いますが,基本的には自分が卒業して医師として必要な知識を整理する期間であると思い,勉強をしていけば必ずよい結果が出ると思います。自分を信じて最後まで諦めずに努力してください。「来年絶対に合格してみせる」という気合が一番大切です。そうすれば道は自ずと開くはずです。また1年間という期間は長いようであっという間に過ぎてしまいます。学生時代にしかできないことを存分に楽しんでください。


弱点を埋める・マイナスを減らす

鈴木 琢(東邦大卒)

 まず最初に,これを読みすべてを真似ることはありません。さまざまな体験談から自分に合うところを拾って計画を立てるとよいと思います(しかし先輩の武勇伝は信じないほうが……)。それでは,1年間の勉強の概略を呈示します。

1年間のスケジュール

4月-8月
●内科/外科/小児科の一般&臨床問題を『クエスチョンバンク』で解く。分野別(消化管→・・)で一般→臨床の順にやり,終了後,産婦人科(一般・臨床問題)をやる(1回目はじっくりと,弱点ノートの製作を開始する)
●91回国試や模試をやり,国試の基礎力や自分の弱点をチェックする
●8月後半から卒業科目試験の準備を開始
9月-12月上旬
●卒業試験に専念(特にマイナーは集中して)し,余裕があれば国試の過去問をやる
12月中旬-1月中旬 『クエスチョンバンク保健医療論・公衆衛生学』を解き(3日で),以後少しずつ解いて,何度も統計関係を中心にチェックする
●1月下旬に国試型式の卒業試験があるので,その対策(過去問や91回国試)も行なう
1月下旬-3月中旬
●過去5年間の国試過去問(全科)を解く
●マイナー(80回以降の過去問&Kokutaiの特集や模試等をやる)はこの時期からラストスパートする
●前日まで模試は繰り返し復習し,念のために国試型式の卒業試験も復習した(何問か類似問題が実際に出題されて驚いた)
●国試1週間前に91回国試を必ずやる
●必修・禁忌肢対策はとにかく問題数をこなす(『Dr.M』にすべて書き込む)

直前

予想:今年は当たり年だったようですが,来年も同様とは限りません。当たりはずれより,最後の総復習としてやるのが理想的です。(今年は,約20-25点分が該当)
講習会:必ずしも受ける必要はなく,国試対策委員を通じてテキストのコピーが回ってきます。もし受けるとすれば必修・禁忌肢対策かマイナー対策の講座が妥当でしょう。
DEF予想:実際には受けず,受講者や直前のFAXを試験直前に見せてもらい,少しだけ出ました。しかし個人的には1日目の間違えた問題の復習をし,実際には2日目に類似問題が出て効果的でした。
心理面より:直前になると焦って自分のペースを乱すことがありますが,自分の場合,あまり焦りはありませんでした。これは自分の弱点を大体過去問や模試等で把握できたことによる自信ではないかと思います。

最後に

 1年を通じて実行したのは,弱点を埋めることと,やさしい問題(模試で正解率60%以上の問題)を間違えないことでした。以上を継続して行なえば,合格に自ずと近くなると思います(つまり「+」を増やすのではなく,「-」を減らすこと)。そして,間違えた項目を書き留める「弱点ノート」(ルーズリーフで)の作成をお勧めします(なるべく項目別,メジャー系)。おそらく『イヤーノート』等に蛍光ペンで線を引く人が多いと思いますが,結局その場限りで記憶に残らないので非効率的だと思います(『クエスチョンバンク・臨床問題』にあったミニマムエッセンスを参考にしました。図や表もうまく利用する)。
 勉強会については賛否両論ありますが,臨床問題やお互いに質問する時には有効でしょう。人数は2-5人(リーダーを必ず1人)が適当でしょう。
 読者全員が来年の春にはぜひ合格されることを願いつつ体験談を終えたいと思います。

使えそうな参考書

 クエスチョンバンクシリーズ,イヤーノート,Dr.M, INFORMA(メディックメディア社),チャート産婦人科&マイナー系,パターンで考える国試学〈絶版〉,ポリクリハンドブック(医学評論社),Kokutai,パワーアップ産婦人科,病態生理できった内科,100%小児科(医学教育出版),心電図のABC(日本医師会編)