医学界新聞

第12回日本助産学会開催

「助産婦の自律へのチャレンジ」をテーマに


 第12回日本助産学会が,平澤美恵子会長(日赤看護大教授)のもと,さる3月20-21日の両日,東京のシェーンバッハサボーにおいて「助産婦の自律へのチャレンジ―教育・実践・研究を通して」をメインテーマに開催された。
 今回は,会長講演「助産婦に期待される専門能力と教育のあり方」,猪口邦子氏(上智大)による特別講演「実践の中で変革を起こすには」をはじめ,シンポジウム,5つのテーマに基づいたワークショップ,一般演題の発表が行なわれた。

助産婦の専門能力と教育

 会長講演において,平澤氏は助産婦の業務の範囲,ならびに専門職としての義務と責任を提示した上で,これからの助産婦に必要とされる能力について考察を行なった。
 その中で平澤氏は,「これからの助産婦は,遺伝相談,異常出産・未熟児を出産した妊婦やその家族のケア,若年妊娠の支援,性感染症についての教育,不妊症・家族計画の相談など,いわゆるリプロダクティブ・ヘルス全般に関わっていく必要がある」と語り,助産婦のこれから進むべき方向を示唆した。
 また,助産婦教育のあり方についても言及。卒後教育に偏重している現行のシステムの問題点を指摘し,基礎教育,継続教育,卒後教育を連動させ,一貫性を持たせた新しいシステムの検討,構築の必要性を主張した。

助産婦の自律

 シンポジウム「助産業務の自律をめざして」(座長=川崎市立看護短大 青木康子氏,東医歯大 松岡恵氏)では,助産婦のケア水準向上のために重要な「自律」をテーマに,4人のシンポジストがそれぞれの立場から発表を行なった。
 最初に登壇した岡本喜代子氏(日本助産婦会)は,助産業務の実践者の立場から日本の助産婦活動の現状について報告。出産に対するニードについて分析した上で助産業務の自律への取り組みについて語った。
 続いて堀内成子氏(聖路加看護大学)が研究者の視点から発言。「形に表しにくい助産業務の独自性を示し,その自律性を維持するためには,専門職としての知識体系の確立が不可欠である」とし,そのための手段としての研究の重要性を強調した。
 行政の立場からは,小田清一氏(厚生省母子保健課)が発言。「これからの助産婦は,助産だけではなく,妊娠・出産・育児の一連管理や,妊婦や不妊治療に通う方の心のケアにも関わってほしい」と述べ,助産婦に対する期待を表した。最後に登壇した梶田叡一氏(京大)は,教育者の立場から自己評価活動の意義について語り,シンポジウムを締めくくった。