医学界新聞

専門的な知識を持ったリサーチナースの必要性を強調

「第10回日本臨床腫瘍研究会」での看護職からの発言


 さる2月6-7日,第10回日本臨床腫瘍研究会が,大橋靖雄会長(東大教授)のもと,東京・本郷の東京大学安田講堂にて開催された(本紙2279号に概要既報)。本号では,質の高い臨床研究を支えるリサーチナース(RN)やクリニカルコーディネーターの必要性が認識され,その育成が望まれているとして企画されたシンポジウム「臨床試験の基盤整備-今何ができるか,何をなすべきか」(司会=国立がんセンター東病院 吉田茂昭氏,国立がんセンター中央病院 渡辺亨氏)から,看護の立場から登壇した松浦千恵子(癌研附属病院)と新見三由紀氏(国立がんセンター研)の意見を中心に報告する。

臨床試験のパートナーとして

 松浦氏は,「昨年4月の新GCPの改定により,ようやく治験(臨床試験)協力者としての看護婦の役割が明確に位置づけられたが,従来の治験は看護婦とは無関係に実施されてきた」とその背景を説いた。
 すなわち,臨床試験は医師の研究であり医師個人のもの,企業は金の出所であり,実験は倫理に欠けたものとして看護婦は認識していた。また,安全性,公平性,倫理性が守られていたかも疑問視されていた。一方で看護職自身も,「臨床試験」が基礎看護教育に盛り込まれていないがゆえに,看護婦の勉強不足が無関心につながっていたことを指摘。さらに,患者の「医師から勧められたら断れない」という感情と,お任せ主義が,自身の不利益を被っていたとし,心身の苦痛に対する精神的なサポートも不十分であった実態をあげた。
 松浦氏はRNに関して,「新GCP下では,安全性,倫理性,科学性の保持が問われる。臨床試験がスムーズに行なわれるため,また患者の権利と安全を守るために看護婦がパートナーとして望まれたと考えたい」と述べ,看護婦がいかに臨床試験にかかわるかについて,癌研附属病院の取り組みを例にあげて解説した。
 また「医師は物理的手助けを看護婦に求めるかもしれないが,患者の安全を守り,充実したケアを提供できる専門的知識を持った看護婦として,またデータ収集,コメディカル間の情報伝達等,臨床試験に専門的にかかわることを認識してほしい」と訴えた。
 さらに,スペシャリストとして看護部付にするなどの位置づけのほか,より専門的知識を有するRNが必要と,CNSとしての院内外での研修,教育とともに,自己研鑽の必要性を強調した。

専門教育のできる研修養成機関を

 一方,日本で唯一アメリカ等でRNの教育を受けてきた新見氏は,臨床の看護婦からRNとなったこれまでの自身の経歴を披露。その中で,臨床試験研究とは何か,またRNの必要性を大学,大学院で学んだことを述べるとともに,専門看護婦としてのRNの教育の必要性を指摘した。
 新見氏は,CRC(クリニカルリサーチコーディネーター),CRA(クリニカルリサーチアソシエイト),DM(データマネジャー)等の言葉の概念を整理した後,これらの職種に必要な基礎教育要素として,臨床試験の方法論・法令,臨床医学,臨床試験に関する倫理,コミュニケーション技術,情報処理などをあげた。またこれらの教育をどこで行なうかについて,大学,病院等施設,研修養成機関におけるメリット等も表示し解説。「これからは,専門教育のできる研修養成機関が必要」とその早期の設置が重要と述べた。
 最後に新見氏は,「RNには臨床経験に加えた専門性が重要。これからは必要論から方法論を論じ合うことをしていきたい。医師からはパートナーとなるべく看護婦に,温かな目でのラブコールを」と訴えた。