医学界新聞

第1回医療機能評価フォーラム開催

「病院機能評価の方法と課題」をテーマに


 (財)日本医療機能評価機構(以下,評価機構)の主催による第1回医療機能評価フォーラムが,さる1月31日,日本医師会館にて開催された。
 医療機関の第3者評価を行ない,医療機関が質の高い医療サービスを提供していくための支援を目的に設立された同機構は,1995年に設立され,1997年4月より病院機能評価事業を開始し,1998年2月13日までに49病院に対して認定証を交付している。しかし,病院機能を評価する方法については多くの課題が存在しており,医療現場において実効性が高く,患者にとって有益な評価法の確立へ向けて試行錯誤が行なわれているのが現状である。一方,近年,医療保険制度改革の一環として定額払い方式の検討も始められており,提供される医療の質の担保という視点からも,医療の質の評価はますますその重要性を増していくと考えられる。
 そのような状況を踏まえ,本フォーラムは医療評価の方法論と課題についてさまざまな視点から情報交換を行なうことを目的とした試みとして本年より開始された。


 評価機構評価委員長の大道久氏(日大教授),及び同研修委員長の岩崎榮氏(日本医大教授)による基調講演「病院機能評価事業の現状と展望」では,大道氏が評価事業の現状を概説。最大の課題は「いかに病院に受審していただくかということ」と述べ,JCAHO(保険医療機関認可合同委員会)の認定を受けることが,公的保険・民間保険の支払い条件にあげられる米国などに比べ,認定書を受けるメリットが不透明といわれている日本の病院側の動向に関心を示し,病院の改善支援の観点から病院側のニーズに応え,「人の派遣も含めて検討していきたい」と今後の方向性を示唆した。
 一方,岩崎氏は評価調査者(サーベイヤー)の「数と質」を確保することの重要性を指摘し,当面500名程度の評価調査者を確保したいとの意向を示した。
 つづけて,委託研究事業報告では「ISO9000sと病院評価」(東大 福田敬氏),「クリニカル・インディケーターの探索研究」(茨城県立医療大教授 佐々木順子氏),「クリニカル・パスの原理と現状」(東大教授郡司篤晃氏)の3題が報告された。
 福田氏は,産業界では多くの企業が取得している「ISO9000s」について,「製品の品質ではなく,品質システムを評価する」ものであり,「どのような状態でつくられているのか評価する」ものであると解説。医療におけるその展望を示した。

クリニカル・インディケーターとクリニカル・パス

 佐々木順子氏は,国際的に注目を集めているクリニカル・インディケーター(臨床評価指標,以下CI)について,日本医学会に所属する臨床系学会へその可能性を調査した結果を発表。
 氏は,「評価機構による評価事業は医療の質を医療施設の組織としての機能として総体的に評価するものであり,医療の『構造』と『過程』の測定と評価が中心になっているが,診療機能そのものの質をいかに問うかについての解答を十分に提示することは,現在のところ可能とはいえない」と指摘し,諸外国における,患者に提供された医療の質を直接に計ろうとするCIを用いた質の改善の試みに注目。日本におけるCIの開発意義と調査研究の成果を示した。
 続いて,郡司氏はクリニカル・パス(クリティカル・パスとも呼ばれる,以下CP)について概説。「CPの初期の概念は,DRG(疾患別定額払い方式)が決めている入院期間内で標準的な結果を得るために,患者に対して最も関わる医師および看護婦が行なうべき手順と時間のリストであった。しかし,その後,その目的は医療の質と生産性の向上の手法としての認識に変化していった」と指摘。
 「CPとは,臨床過程とそこで行なわれる臨床活動について,医師看護婦を中心に関係者間で合意を形成し,チャート化し,実行評価するシステムである」とまとめた。
 フォーラムのプログラム後半には,パネル・ディスカッション「評価の方法論を考える」(座長=国際医療福祉大教授 橋本廸生氏)が企画され,「患者満足度調査」(九大助教授 今中雄一氏),「クリニカル・パス/インディケーター」(評価機構研究主幹 中野夕香里氏),「病院と医師の関係」(評価機構理事 伊賀六一氏)の各テーマについて討論が行なわれた。その中で中野氏は「CPは病院ごとの特異性に左右されるため,病院間評価には適さず,むしろ病院内改善支援ツールとして期待できる。一方,CIは病院ごとの特異性を排除したものであり,病院間の比較など評価ツールとして検討していく必要がある」と指摘した。
 パネルではフロアも交えて活発な議論が交わされ,第1回目の本会は盛況のうちに幕を閉じた。評価機構は今後も同フォーラムを年1回程度の割合で開催していく予定である。