医学界新聞

〔ミニ・インタビュー〕 外国人医療の新しい展開

オリンピック村総合診療所における外国人診療支援ソフト『Dr.マルチ』


 第18回冬季オリンピック長野大会が,さる2月7-22日の16日間にわたって開催されたが,大会の期間中に各国の選手が滞在するオリンピック村の総合診療所(所長=信州大教授 清澤研道氏)では,多言語音声診療ソフト『Dr.マルチ』(医学書院)が診察時に利用,貢献しているとのことだった。
 そこで本紙は,清澤氏の厚意のもと,オリンピック村総合診療所を取材し,多忙なところを副所長の田中榮司氏(信州大)からお話をうかがった。


――まず最初に,オリンピック村総合診療所は,主にどのような人が,どのような疾患で利用されるのかお聞かせください。 田中 主な利用者は選手と役員です。あと選手村で働くボランティアの方も時々こられます。総合診療所には内科,整形外科・理学療法,外科,眼科,歯科がありますが,受診者数が最も多かったのは内科で,そのほとんどが風邪の症状で来院されていますね。次いで多かったのが整形外科・理学療法です。 ――実際に外国人の患者さんと接してみて感じたことをお聞かせください。
田中 国際大会などで世界中を飛び回っている選手は,かなりの人が英語を話せるという印象を受けました。また英語に関しては通訳のボランティアの方に来ていただいて対応しました。
 対応しにくかったのはメジャーですけれど意外と馴染みの薄いロシア語ですね。こちらは電話で通訳の方に対応してもらいましたが,ロシア語については苦慮する場面が多々ありました。 ――実際に使用してみて『Dr.マルチ』の操作性はいかがですか。 田中 操作性は悪くないですね。キーボードを使って打ち込むのではなく,マウスを使って画面上で選択していくだけで操作できるのは大変便利です。 ――2002年に開催されるサッカーのワールドカップをはじめ,今後さまざまな国際規模のイベントが日本国内で開かれますが,そのような場での『Dr.マルチ』の活躍の可能性はあるでしょうか。 田中 実際,オリンピックのような大きな国際大会では,どの国のチームも専属のチームドクターを連れてきています。また,受け入れる側もそれなりに準備を整えていますからね。  しかし,医療従事者の立場から言うと,このソフトはむしろそういった特殊な状況よりも,一般病院の日常診療の場で外国人の患者さんに接する機会において力を発揮するのではないでしょうか。

参考資料:オリンピック村総合診療所の診療科別にみた受診者数
診療科受診者数(名)
内科
整形外科・理学療法
歯科
外科
眼科
574
468
255
58
29
 (合計)1384