新GCPの今後の問題点を検証する
「新GCP普及定着総合研究班の検討結果から」より
6つの作業班と総括班による検討

同研究班は,(1)治験のIC(インフォームド・コンセント)のあり方,(2)IRB(治験審査委員会)の機能充実,(3)治験の管理と事務機能の充実,(4)治験支援スタッフの養成策,(5)モニタリング・監査検討,(6)被験者のメリット・市民への啓発活動,の6 作業班とそれを統括する班から構成され,昨年10月に中間のまとめを発表し,本年3月に最終報告書を公表する予定である。
中野氏は,多岐にわたる同研究班の検討結果の中から,特に(1)治験を実施する各チームプレーヤーの責務の明確化とチームワーク(チーム医療)の重要性,(2)治験支援スタッフ養成の必要性,(3)治験システムの改革の必要性,の3点を指摘した。
プレーヤーの責務の明確化とチーム医療の重要性
新GCPには治験に関与するチームプレーヤー(特に,治験依頼者,治験実施医療機関の長と治験責任医師ら)の責務が記載され,治験を実施する治験責任医師のみならず,治験分担医師,治験協力者の役割も明確になった。中野氏は,「新GCPの文面には表れてこないが,各チームプレーヤーの間のチームワークが成否を握る決定的な要素となる。つまり,各チームプレーヤーに自らの責務を十分に果たすだけの責任感と実力が求められるとともに,チームプレーができなければならない」と強調した。治験支援スタッフ養成の重要性
次に中野氏は,「治験を実施する治験責任医師と治験分担医師の診療上の多忙さを考慮すると,新GCPに基づいた治験を適正に実施するためには,彼らを支援する治験協力者の役割が重要になる」と指摘し,治験支援スタッフとしてのCRC(Clinical Research Coordinator)を早急に養成する必要することがあることを強調。「そのためには看護婦,薬剤師,検査技師などが中心になって特別なカリキュラムに基づいた教育が必要となる」として,(1)治験の倫理性・科学性,(2)治験に関する法令,(3)臨床薬理学,(4)治験の実際などをその骨子にあげた。ちなみに,前述した「治験を円滑に推進するための検討会」では,その下にワーキンググループ(下表参照)を設け,先行事業として試行的に養成研修の体制整備を検討し,本格的な養成体制の確立に資することとしている。具体的な検討内容としては,治験支援スタッフモデル研修カリキュラムの作成とともに,モデル研修を円滑に実施するための諸問題を検討することとし,講義2週間,実地研修6週間の計8週間の研修期間が検討されている。治験システムの改革の必要性
次いで中野氏が指摘するのは,治験システムの改革,つまり治験管理室,IRB事務局,治験相談窓口などを含めた治験支援体制の確立の必要性である。さらに,治験には治験依頼者と治験実地医療機関サイドの努力に加えて,被験者となる患者・一般市民の協力が不可欠なことから,「治験に参加する被験者の負担の解消,メリットの工夫,一般市民への啓発活動策を含めた治験システムの改革が必要である」と強調して同研究班の検討結果報告を結んだ。
●治験支援スタッフ養成モデル研修のためのワーキンググループ委員
井部俊子氏(聖路加国際病院看護部長) 衣非 脩氏(日本製薬工業協会医薬品評価委員会委員長) 大泉京子氏(聖マリアンナ医大看護婦長) 北澤式文氏(慶大薬剤部教授) 小林真一氏(聖マリアンナ医大教授) 田中 慧氏(都立駒込病院内科部長) 土屋文人氏(帝京大附属市原病院薬剤部長) ◎中野重行氏(大分医大教授) 西條長宏氏(国立がんセンター中央病院放射線治療部長) (◎=委員長予定 50音順) |