医学界新聞

単なる延命だけの医療をどう考えるか

厚生省「末期医療に関する意識調査検討会」が アンケート調査を実施


 厚生省は昨年8月に,「国民および医療従事者の意識調査ならびに末期医療の実態についての調査を実施し,日本にふさわしい末期医療のあり方について検討を行なうこと」を主旨とする「末期医療に関する意識調査等検討会」(メンバーは表参照)を発足。原則公開とする同検討会では,これまでに調査内容および調査方法などを検討し,本年1月12-25日の間に全国の20歳以上の国民および,医師,看護職員約1万4000人を対象に末期医療に関するアンケート調査を実施した。検討会では,本年2月下旬までに調査結果の取りまとめを行ない,本年度中には報告書をまとめる予定。

「安楽死」などの定義を明確にして

 「日本にふさわしい末期医療のあり方の検討」を目的とする本調査は,(1)国民(全国の20歳以上の男女個人5000人程度),(2)医師(診療所勤務医,緩和ケア病棟勤務医,緩和ケア病棟以外の病院勤務医など3000人程度),(3)看護職員(診療所勤務看護職員,訪問看護ステーション勤務看護職員,緩和ケア病棟勤務看護職員,緩和ケア病棟以外の病院勤務看護職員など6000人程度)を対象としている。
 なお,本調査では「安楽死」「尊厳死」「持続的植物状態」の用語について以下のように定義している。
〔安楽死〕一般には本人の自発的な要請により,医師が医療的方法により死に至らしめることをいう
〔尊厳死〕本人の自発的意志で延命医療を中止し,人工呼吸器等の医療機器を用いた医療処置に頼らない自然な状態で,寿命がきたら自分らしく迎えることのできる死(自然死)をいう
〔持続的植物状態〕脳幹以外の脳の機能が障害され,通常3-6か月以上自己および周囲に対する意識がなく,言語や身振りなどによる意思の疎通ができないが,呼吸や心臓の働き,その他内臓機能は保たれている状態をいう。なお,脳死とは脳全体の機能が失われた状態をいう

治療方針を誰に説明していますか

 調査項目について個人対象調査では,(1)最近,末期医療に関して「安楽死」「尊厳死」「リビングウイル」などの問題が話題になっていますが,あなたはこれらのことに関心がありますか,(2)あなた自身が治る見込みがない病気になった場合,その病名や病気の見通し(治療期間,余命)について知りたいとお考えになりますか,(3)あなた自身が痛みを伴い,しかも治る見込みがなく死期が迫っている(6か月程度あるいはそれより短い期間を想定)と告げられた場合,単なる延命だけの医療についてどのようにお考えになりますか,(4)上記の場合,療養生活はどこで送りたいですか(今まで通っていた病院/緩和ケア病棟/自宅で療養して,必要になれば病院,緩和ケア病棟に入院/自宅で最後まで療養/専門的医療機関で積極的に治療を受けたい,などから選択),(5)あなた自身が持続的植物状態で治る見込みがないと診断された場合,単なる延命医療についてどのようにお考えになりますか(続けられるべき/やめたほうがよい/やめるべきである/わからない,から選択)などがある。
 一方の医師,看護職員を対象にした調査項目では,個人対象の項目を基本に,(1)あなたの担当している患者が治る見込みがない病気に罹患した場合,その病名や病気の見通し(治療期間,余命)について,まずどなたに説明しますか(看護職員では「どなたに説明したほうがよいとお考えになりますか」,以下同様),(2)あなたの担当している患者が治る見込みがない病気に罹患した場合,その治療方針を決定するにあたり,まずどなたの意見を聞かれますか(患者本人/本人の状況を見て誰にするか判断する/家族,などから選択),(3)あなたはWHOが作成した「WHO方式癌疼痛治療法」をご存じですか,(4)あなたは末期医療において,どのようなことを今後重点的に行なうべきだと思いますか,(5)あなたは末期医療に対して,悩みや疑問を感じた経験がありますか,などを聞いている。
 これらの質問項目は,国民・医療従事者双方に統一性を持たせているため,調査結果では末期医療に対する両者の意識差が明確となるとともに,その実態や問題点も整理されよう。検討会の提言も注目したい。

※なお本検討会についての問合せは下記へ
・厚生省健康政策局総務課
 TEL(03)3595-2189
 ホームページ:http://www.mhw.go.jp

●「末期医療に関する意識調査等検討会」 委員名簿(敬称略)
〔検討会メンバー〕
末枡 恵一(座長,済生会中央病院長)
大熊由紀子(朝日新聞社論説委員)
柏木 哲夫(阪大教授)
季羽倭文子(ホスピスケア研究会代表)
橋本 修二(東大助教授)
星野 一正(京大名誉教授)
町野  朔(上智大法教授)
森岡 恭彦(日本医師会副会長)
〔作業部会メンバー〕
川越 博美(聖路加看護大教授)
志真 泰夫(国立がんセンター東病院)
新庄 八重(慈山会医学研究所顧問)
長谷 方人(桜町病院ホスピスコーディネーター)