医学界新聞

第17回日本看護科学学会が開催される

「新世紀への看護学の課題:分化と統合」をメインテーマに


 第17回日本看護科学学会が,昨年12月5-6日の両日,中西睦子会長(神戸市看護大学長)のもと,「新世紀への看護学の課題:分化と統合」をメインテーマに,神戸市の神戸国際展示場および神戸国際会議場で開催された。
 同学会では,事業の一環として本年9月16-18日の3日間,第3回国際看護学術集会(会長=聖路加看護大 小島操子氏,本紙3面にインタビュー記事を掲載)を東京の東京国際フォーラムで開催するが,本学会総会では小島会長から開催の経過が報告され,学会全体で取り組もうとしている姿勢がうかがえた。

看護とことば

 本学会のプログラムでは,特別講演としてMiriam J. Hirschfeld氏(WHO)による「ヘルスプロモーションと看護-グローバルな視点から」と,これを受けて行なわれたシンポジウム(1)ヘルスプロモーションと看護-日本における戦略(座長=大阪府立看護大 高野順子氏,長野県立看護大 北山鉄雄氏)の他,シンポジウム(2)看護実践の構造と言語(座長=福島県立大整備室 中山洋子氏,神戸市看護大 安藤幸子氏),(3)看護の統合機能と倫理(座長=兵庫県立看護大 片田範子氏)や,指定課題分科会(1)災害看護(座長=神戸市看護大短大部 中野智津子氏),(2)看護の情報システム(座長=大阪府立看護大 中崎啓子氏),また交流セッションは12テーマで開催されたが,いくつかのセッションでは早々に定員に達し,満員札止めの中,熱心な討論が交わされていた。
 会長講演「看護科学とことばの問題について」で中西氏は,「ナースの“声かけ”は,ナースによる造語」と指摘。1病院や1地域だけでなく,ナースの共通語として使われているとする一方,「学術用語は外来語が多いことが特性である」とし,学術用語の概念形成や命名,生成について解説した。また,「イタイイタイ病は,患者の訴えをそのままに命名したすばらしい病名」と述べ,遅れて科学に参入した看護は,患者体験を生かした言語化など,一般の人に看護の専門性を伝える必要性があると示唆した。

日頃の研究成果を発表

 なお一般演題は,「高齢者の健康と看護」「看護教育」「マネージメント」「クリティカルケア」「地域看護」「慢性病および障害を持った人々のケア」「ターミナルケア」などの分野別に,口演,ポスターによる全205題の発表が行なわれた。
 中でも,勝原裕美子氏(兵庫県立看護大)は,日本の看護婦(士)のプロフェッショナリズムに関する「看護婦(士)のプロフェッションフッドを構成する要素の研究」を報告。専門職が備えている性質である(1)社会的意義,(2)最高で最上の仕事へのコミットメント,(3)同僚性・集合性に着目したStyles(1982年)の概念を基に,日本の看護婦を対象に開発した面接ガイドラインを用いてパイロットテストを実施し,その内容分析を行なった。勝原氏は,昨年10月に仙台市で開催された第35回日本病院管理学会で,「看護婦(士)のプロフェッションフッド面接ガイドラインの開発」をすでに発表しており,面接ガイドラインによる調査報告が注目されていた。
 勝原氏は分析結果から,「Stylesの概念に加え,(1)自己成長・自己実現,(2)倫理規範の遵守が見出されたが,これらの要素がICNの1973年規律(国際看護婦協会の“看護婦の規律-看護に適用される倫理的概念”)に網羅されていることは興味深い」と述べるとともに,日本社会ならではの阻害要因も浮き彫りになったことを指摘。今後は「対象者数を増やしての再調査,各要素の一般化をめざすこと」を課題にあげた。
 一方ポスターセッションでは,人が潜在的に持つ自然治癒力に着目した「看護介入としてのイメージ法の効果」(福島県看護協会 黒田真理子氏),「成人術後患者の精神神経免疫系に及ぼす足浴の影響」(京大医療技術短大 豊田久美子氏),「看護における音楽療法の意味と効果について―在宅高齢パーキンソン病患者のQOL評価から」(健和会臨床看護学研究所 春日美香子氏)などの研究発表が注目され,多くの参加者から質問が相次いだ。
 なお次回は,中島紀恵子会長(北海道医療大)のもと,本年12月に札幌市で開催される。