医学界新聞

国際保健学生フォーラム
第2回全国会を終えて

長谷川 学(国際保健学生フォーラム代表・九大4年)


 現在,全国には国際保健,熱帯医学,国際医療協力,国際交流などをテーマに活動する学生団体が約60存在する(国際保健学生フォーラム調べ)。
 そのような状況下にあって国際保健学生フォーラムは,国際保健に興味,関心のある学生間のネットワークの確立,情報交換ならびに親睦を図ることを目的に活動している。
 当フォーラムは全国の学生有志26名によって運営されており,会員に会報(隔月発行),メーリングリスト,ホームページなどで情報交換の場を提供しているほか,会員が一堂に会する場として,年に1回全国会をとり行なっている。昨年は11月29-30日,愛知県労働者研修センターにおいて,「Imagine and discuss the International Health」をテーマに第2回全国会(実行委員長=愛知医大2年 末石通暁)が開催され,全国のさまざまな学校・学部から151名の学生が参加した。
 今回の全国会は第2回であった。第1回全国会は,一昨年神戸において「会おう,話そう,つなげてみよう」をテーマに開催された(本紙2224号に掲載)。

自分の意見を自分の言葉で

 全国会初日は午前中のポスター展示から始まり,午後にとり行なわれた開会式においては,磯村思无先生(名大教授)にお話しいただいた。その後,ソムアッツ・ウォンコムトォン先生(東大教授)に「私の発展途上国での医療体験」をテーマに,発展途上国における医療問題を中心に基調講演をしていただいた。
 その後,「国際協力」をテーマに国別グループディスカッションを行なった。参加者はアフリカ,フィリピン,ラオス,タイ,カンボジア,ネパールの6グループに分かれ,それぞれのグループの担当者がその国の説明を行ない,ディスカッションを展開した。この企画は,参加者が,世界の問題について自分で考え,自分の言葉で見解をしっかりと表現する機会を持つことができれば,という狙いで企画された。参加者からは「他の参加者が国際協力をどのように考えているのかを知ることができてよかった」,「日ごろ聞けない本音を聞くことができた」などの感想をいただいた。
 その日の夕方からは懇親会が行なわれ,参加者同士で親睦を深めあった。中には夜遅くまで話し込んだ人もいたようである。
 2日目は分科会発表が行なわれた。ここでは9つの団体による発表を聞くことができた。その内容は,学生フィールドワーク論,発展途上国へのスタディツアー報告,医療協力に携わるNGOによる活動報告,途上国の医学生との交流報告など,実に多彩なものであった。
 今回のポスター,分科会における発表は昨年に比べ,観察力,考察力が格段に伸び,単なる活動報告ではなく,学生の視点からの考察が加えられ,内容もより学術的なものになっていた。また発表方法,技術に関しても大きな進歩が見られたように感じられた。

「国際保健」って?

 国際保健学生フォーラムは国際保健をテーマとしている。ところで学生にとっての国際保健とは具体的に何を指すのであろうか? 国際保健協力・NGO活動の現場の見学,熱帯医学の研究,途上国の農村でのフィールドワーク,他国の医療系学生との国際交流などだろうか?
 国際保健という言葉の響きは,とても美しい。しかし国際保健という言葉の意味は曖昧であり,しっかりと定義されているわけではない。
 全国会に集った学生1人ひとりにとっての「国際保健」という言葉の意味,テーマは異なる。学生が「国際保健」という言葉から何らかのテーマを見つけ出し,自らの力で海外研修旅行の計画を組む。自己責任のもと,受け入れ先を見つけ,航空券を買い,宿を探し,自らの安全を確保し,目標に向かって行動し,自分の活動を考察する。日本の常識が通用しない異文化に触れ,迷い,苦しみ,楽しみ,喜ぶ。異国の地で自分自身のこと,母国のことについて考える。
 海外での研修旅行を通して学生自身が何らかの影響を受けるのであれば,「国際保健」をテーマに活動することは学生の課外活動として有意義なものとなるのではないかと思う。
 ただ,学生の身分ゆえにいろいろな機会に恵まれているのだという感謝と謙虚な気持ちと,自分自身に対する反省をつねに忘れないようにする必要がある。
 全国会はそれぞれの学生が活動した経験を持ち寄る場である。また学生が自分たちの1年間の活動を自省する場であることを心に留めておきたい。

おわりに

 次回はどのような全国会となるか楽しみである。今回の参加者の皆さんから寄せられた感想,ご意見を糧として新しい企画が生まれることだろう。今後,フォーラムが多くの分野の学生による,よりよい情報交換,交流,議論の場となっていくことを願っている。
 最後になったが,今回の国際保健学生フォーラム第2回全国会を支えてくださった諸先生方,全国会に集った学生の皆さん,そしてスタッフの皆さんに感謝の意を表したい。