医学界新聞

准看護婦移行教育の検討開始へ

日本看護協会が移行教育プログラムを会員に提示


 日本看護協会(見藤隆子会長)は,さる12月1日に,東京の日比谷公会堂で2000人規模の「2001年までに准看護婦養成停止を求めるつどい」を開催。「准看護婦から看護婦への移行教育を審議する検討会の早急な発足」などの緊急宣言を行ない,厚生省などに向けて要請行動を行なった。
 それに先立つ11月20日に,同協会では第2回目のプレス懇談会を,見藤会長,松林恵子専務理事,山崎摩耶,岡谷恵子,須藤利恵子ら各常任理事の出席のもと,東京のホテルフロラシオン青山で開催した。

介護法案に向けて

 同懇談会では,見藤会長の挨拶に引き続き,山崎理事が介護保険への日本看護協会の取り組みを紹介。本年10月21日の参議院厚生委員会で,(1)要介護認定の迅速性,公平性,透明性など,介護保険制度の創設上,重視すべき点,(2)基盤整備の強化,(3)市民の声を反映し,地域特性を重視した制度整備などについて意見陳述したことを発表。「利用者本位の介護保険法案の早期成立を」と同協会の姿勢を明らかにした。

看護婦養成制度1本化に向けて

 一方,「看護婦養成制度」の問題については,昨年12月にまとめられた厚生省「准看護婦問題調査検討会報告書」を受けて予算計上されている「准看護婦要請制度の見直しに伴う諸問題に関する検討会」がまだ開催されていないことを憂慮。「事態は進展していない。画期的な報告書の内容実現を求めていきたい」と述べ,12月1日に要請行動が実施されることを公表した。
 また,岡谷理事が同協会の准看護婦移行教育検討プロジェクトが検討を進めてきた准看護婦・士から看護婦・士への移行教育について,同プロジェクトとしてのプログラム案がまとまったことを報告。12月以降に会員に向けた検討用資料として,教育カリキュラム案などに触れた具体的な「准看護婦移行教育検討プロジェクト」報告書を同協会ニュース,雑誌「看護」などを通じて提示,配付することを明らかとした。 〔なお同報告書の概要は「看護教育」1月号(12月25日発行)にも掲載される〕。

移行教育プログラム

 同報告書によると,移行教育とは「准看護婦養成停止後に,准看護婦・士が看護婦・士の資格を取得するために必要な特別の教育」とし,看護の資格の二重構造を解消するための特別な経過措置と位置づけている。また,「准看護婦・士の実務経験をできるだけ考慮すること,個別の学習ニードに対応できる余地を残すこと,誇りを持って学習できるような教育環境・設備を提供すること」などを前提とし,移行教育プログラムの修了後には,看護婦(士)国家試験を受験し合格することを取得の条件としている。なお岡谷氏は,「移行教育を受講するかどうかは個人の自由意志によるとし,現在の准看護婦・士のままでも働き続けることはできる」と補足説明。受講資格要件としては,(1)准看護婦・士免許を有し,移行教育プログラムを受講する時点で就業をしている者,(2)受講する時点で,働いていない期間が3年以内である者,(3)高校卒業資格のない准看護婦・士は,3年以上の業務経験を有することとしている。
 その他の特徴としては,
○実務経験5年以下は2年間の教育(現在の2年課程と同等プログラム)
○実務経験6年以上は,最低1年間の教育(930時間,37単位のプログラム)
○講義科目の履修方法には,(1)通学(全日制,定時制),(2)通信教育,(3)科目履修制,(4)過去の実務経験や講習会・研修会での教育プログラム受講も単位に認めるなどが考えられる
○学習アドバイザーによる学習支援
などがあげられるが,一方で移行教育実施にあたっての課題として,受講者の学習支援を行なうための指導者としての人材育成,働きながら学ぶ受講者の権利擁護と,教育環境整備の支援などを指摘している。
 なお,同プロジェクト案では,現在の養成所の活用や,通信教育の利用などにより年間5万人の受講者が見込まれ,40万人の准看護婦・士の6割が移行すると推測されており,計算上では5年で移行終結するものの,実際には順調に進んで約10年かかるとみている。