医学界新聞

在宅ケアシステム構築からの共働

第34回看護リフレッシャーコース開催


 さる11月1-2日の両日,日本私立看護大学協会が主催する第34回看護リフレッシャーコース(当番校=国際医療福祉大)が,栃木県の国際医療福祉大学で開催された。今回は,専門職の共働について看護職の1人ひとりがどう考え,行動していくのかに焦点をあて,「21世紀にはばたく看護実践をめざして」をテーマに掲げた。

他職種との共働の理解のために

 初日には,日本私立看護大学協会長でもある日野原重明氏(聖路加看護大学長)が「キュアのサイエンスとケアのアートの担い手としての専門職は,どう21世紀に展開されるべきか」を,また大谷藤郎氏(国際医療福祉大学長)が「医療と人権」と題しそれぞれ基調講演を行なった。またテーマに沿って,看護職が他職種と共働するための理解を深めることを目的に企画されたシンポジウムⅠ「保健・医療・福祉における共働」(座長=国際医療福祉大教授 城ヶ端初子氏)では,医療経営の立場をはじめ,理学療法,作業療法,言語療法,放射線医,社会福祉,看護などそれぞれの立場からの発言が行なわれた。なお本シンポジウムでは,シンポジストのすべてが国際医療福祉大の教員でカバーされ,同大学の保健医療領域の広さ(保健学部,医療福祉学部7科)と人材の豊富さが示された。

地域との共働をめざして

 2日目には,同大学助教授の金井Pak-雅子氏を座長に,シンポジウムⅡ「在宅ケアシステム構築事業の体験から得た共働」が催された。国際医療福祉大学では,1995-96年にわたり大田原市からの委託を受けて地域の専門職と在宅ケアシステム構築の共同研究を進めてきたが,今シンポジウムではそれらの中から得られた実際的な共働の成果などが報告された。
 シンポジウムに先立ち,大田原市の「在宅ケアシステム構築」事業の概略が,(1)小児班,(2)成人班の2グループから述べられたが,同事業は,国際医療福祉大(看護学科他4科)の教員,大田原保健所,同市役所,同市社会福祉協議会の関係職員,さらに市内の医療・福祉・看護関係者などから構成される「地域保健推進特別事業推進担当者会議」が推進した。その上で,在宅ケアシステムに対する提言として,(1)障害発生初期からの支援体制の確立,(2)保健福祉サービスの充実,(3)総合的なまちづくり,(4)自立・自律支援を掲げた。
 同シンポでは,看護の立場から福島道子氏(同大助教授)が発言。「在宅ケアにおけるケア提供者の連携の構造は,福祉コミュニティの形成をめざすチームアプローチに基づく個別ケアの集積過程である」として,(1)チームアプローチの促進要因,(2)連携の促進要因から連携の構造を解説した。また,作業療法,言語療法の立場からは「互いの領域の認識の必要性」が指摘された。
 一方,保健婦の立場からは池田光代氏(前大田原保健所)が,「共通理解までに時間を要したが,互いの自由な発言を基に,十分な討議時間を経て理解が進み,共通の体験ができた」と,チームワークの有用性を述べた。さらに,地域福祉コーディネーターを務める柿沼利弘氏(大田原市社会福祉協議会)は,「在宅者の自立・自律を支援システムの構築には,社会資源の有効活用をするためにも,他職種との組織的な連携や人間的な支援活動が必要」と強調した。
 また同日午後には,急遽J.P.Turley氏(米テキサス大看護情報学助教授)による特別講演会「専門職間の共働-看護記録の活用に向けて:Information Management In Electronic Record Systems」が開かれ,「電子カルテは専門職間のコミュニケーションをつなぐもの」など,電子カルテを中心としたコンピュータによる看護情報学に関する話題を提供した。