医学界新聞

「医療と病院を科学する」をテーマに

第35回日本病院管理学会開催


 第35回日本病院管理学会が,「医療と病院を科学する」をテーマに,さる10月24-25日の両日,濃沼信夫会長(東北大教授)のもと,仙台市の仙台国際センターで開催され,医師・看護職を中心に予想を上回る参加者が押し寄せた。
 本学会では,初日に質の評価,管理能力,地域医療などに分類された口演による演題発表,2日目には管理と教育,質の評価,サービスと連携,経済と政策に大別されたポスター形式による発表がそれぞれ行なわれ,熱い議論が交わされた。
 なお,その他にも会長講演,特別講演(1)変わる中国の病院(中国病院管理学会長 張自寛氏),(2)病いとともに生きる(国際日本文化研究センター名誉教授 山折哲雄氏),シンポジウム(1)医療制度改革の光と影,(2)病院の意思決定と危機管理(司会=日大教授 大道久氏),(3)高齢化社会を迎え打つ―介護保険の提起するもの(司会=慶大教授 池上直己氏)の3題が行なわれた(次号,2269号にも関連記事を掲載)。

長期展望が必要な日本の医療改革

 濃沼会長は,「医療における科学と倫理」を講演。「狭い日本,そんなに急いで……」の標語を取り上げ,「医療制度改革の嵐が吹き荒れており,財政面だけが表面化しているが,科学的,倫理的な立場からの検討も必要。改革という名の浪費となることを懸念する。病院をめぐる状況には市場原理などが求められるが,規制緩和には長期展望が必要」と主張した。また,「医療は科学と倫理に支えられるもの」として,EBM(治療成績)・ガイドライン(症例検討)・ピュアレビュー(機能評価)などの科学性,倫理委員会・インフォームドコンセント・新GCPなどの倫理性を大事な柱として推し進められるものであることを強調。一方で,「医療は急性期,慢性期に加え高齢期別の介護・福祉を進めようとしているが,1人の患者を分けて考えることができるのか。連携する仕組みを追究することが必要」と述べた。

進む医療改革に向けて

 シンポジウム(1)は,安田恒人氏(宮城県病院協会長)の司会により,西島英利氏(小倉蒲生病院理事長),竹股喜代子氏(亀田総合病院看護部長),長谷川美津子氏(セコム在宅医療事業部),川渕孝一氏(国立医療・病院管理研究所)の4人が登壇。
 西島氏は,「病診連携―病病連携を考えたが情報がなかった」と発言。一般の市民にわかるような情報開示の必要性や,医療機能評価事業の利用法などを説いた。また竹股氏は,待ち時間の短縮,日帰り外来手術が可能となった亀田病院の外来クリニックを,新しい方向性として紹介。クリニカルナビゲーションコミニュケーションシステム,クリティカルパスの導入について解説した。
 長谷川氏は,セコムが実施しているサービスシステムを紹介し,これからの在宅医療サービスの経済性や可能性を語った。最後に川渕氏は,先進4か国の医療費適正化政策とその効果とともに,日本で進められようとしている診療報酬体系,医療提供体制の見直し策を解説し,日本版ヘルスケアリフォームの可能性について触れた。