医学界新聞

自治体病院の将来像を論議

第36回全国自治体病院学会が開催される


 さる10月23-24日の両日,第36回全国自治体病院学会が,櫻田俊郎会長(山形市立病院済生館長)のもと,「優・悠・ゆうの自治体病院―おくのほそ道からの発信」をメインテーマに,山形市の山形国際交流プラザをメイン会場に,山形グランドホテル,他全5会場で開催された。
 医療保険制度の改革,検討が現在進められているが,同学会ではこれからの自治体病院のあり方を探るべく,シンポジウム(1)「新世紀に向けての自治体病院の将来像」をはじめ,特別講演(1)アメリカでの研究・教育を顧みて(ラホイヤアレルギー免疫研究所名誉所長 石坂公成氏),(2)私たちの日本文化(作家 丸谷才一氏),シンポジウム(2)自治体病院と地域医療(座長=岩手県立病院名誉院長 小山田惠氏)の他,一般演題は看護部門の303題を最多に,臨床医学,薬剤,放射線,管理,栄養,リハビリテーション,臨床検査,看護教育部門から過去最大の600を越える演題発表が行なわれた。また,それぞれの部会での特別講演も企画された(次号,2269号にも関連記事を掲載)。

地方自治体病院からの発信

 諸橋芳夫氏(全国自治体病院協議会長)を座長に開催されたシンポジウム(1)「新世紀に向けての自治体病院の将来像」では,厚生省健康政策局の角田氏(谷修一局長代理)をはじめ5人が発言,さらに座長の諸橋氏が特別発言を行なった。
 角田氏は,本年8月に厚生省が示した医療保険制度の改革案および与党案の内容を紹介。診療報酬,薬価基準,老人保険の分野にわたり,「医療提供体制,医療保険制度の抜本的改革」を国民的視点から検討すべく準備をしていることを述べた。
 次いで林省吾氏(自治省財務局)は,地方分権の確立,地方団体の行政改革を基本とした自治体財務運営について解説。「病院統合計画,財政構造計画をどう進めるかが現在の課題である」と述べた。また,地方財政が逼迫する中,市町村の自主的合併支援の方向であることから,医療も同様に病院のあり方,経営のあり方が問われてくるとし,その前提となる医療,保健,福祉の連携が課題であり,院長・事務長がリーダーシップを発揮すること,情報公開の必要性を説いた。
 一方,横山万蔵氏(山形県西川町長,全国市町村会長)は,「保健・医療・福祉の連携とまちづくり」と題し口演。西川町の現況を紹介するともに,1974年に町長として就任以来進めてきた,「どうすれば健康になれるか,安心して住めるまちづくり」を目標とした拠点,システムづくりを紹介。食生活の改善,近代的病院の建設で,それまでの全国でも有数の短命な町民から,現在90歳以上が36名,100歳以上の高齢者も出てきたことを報告した。
 また中村義弘氏(むつ総合病院長)は,民間病院がなく1市3町4村で一部事務組合を作り,自治体病院4病院と診療所を経営している下北地区のユニークな過疎地における対策を紹介。「膨大な累積赤字のため財政再建が最大の課題である」と述べるとともに,「保健・医療・福祉の充実した過疎地に,第2の人生を求めて多くの人が移り住むような政策が必要」と訴えた。
 さらに,武弘道氏(鹿児島市立病院長)は,鹿児島市病院事業管理者の立場から,「職員の高齢化,医療費削減,薬価基準の上昇などを考慮すると,21世紀の自治体病院の経営は明るいといえない」と発言。MRIの適正配置を訴えるとともに,団結すれば力となりえるとして,「これからの自治体病院を考えた場合,自治体病院の統廃合が必要。もっと病院長に権限を与えるように」と提唱した。
 本シンポジウムを締めくくるように,最後に座長である諸橋会長が特別発言。公立病院と私立病院の比較データを公開し,地方公営企業法との関連から「自治体病院は地域住民の需要に基づき,医学技術の進歩に対応した適正な医療供給,へき地医療の推進などの役割がある」と述べた。また,公私病院が互いに協力しあうこと,病院経営の合理化を図るとともに,国の財政措置の強化の必要性を訴えた。