医学界新聞

どうなる介護保険・ケアマネジメント

「在宅・福祉・行政分野で働く看護職のつどい」開催


 さる9月20日,日本看護協会の主催による「どうなる介護保険・ケアマネジメント-在宅・福祉・行政分野で働く看護職のつどい」が,東京・銀座のヤマハホールで開催された。
 つどいには,全国から在宅看護,福祉,行政,老健施設,介護力強化病院などに勤務する看護職など約500名が参加。公的介護保険の成立を視野に入れた実践と連携のあり方を考える機会となった。

介護保険への取り組みを紹介

 同つどいでは,見藤隆子日本看護協会長の挨拶に引き続き,第1部として松谷有希雄氏(厚生省老人保健福祉局)と山崎摩耶氏(日本看護協会常任理事)が講演。午後には第2部のパネルディスカッション「新介護システムにおけるケアマネジメント」が,川村佐和子氏(東京医歯大)の司会により行なわれた。なお,パネルディスカッションに参加したパネリストは,田辺操子氏(広島県看護協会訪問看護ステーション),矢部法子氏(宮崎南在宅介護支援センター),松井幸子氏(老健施設 柏原ひだまりの郷),鈴木三保子氏(埼玉県看護協会),千葉典子氏(遠野市民生部保健福祉課)の5名。それぞれの立場から概況が述べられるとともに,介護保険法創設を前提としたケアマネジメントの取り組み,実践や,医師,病院,行政など各関係機関との連携の実際が紹介された。

介護保険制度の理念

 第1部で,「介護保険制度の理念とサービス提供システム」と題し講演をした厚生省の松谷氏は,「介護保険の創案に関しては,明るい高齢者社会を作ることを第一義に考えた。要介護となった高齢者に十分なケアを提供することが目的」と制度創設までの経過を概説するとともに,制度のねらいに触れた。また,十分な審議がつくされていないのではないかとの批判に対しては,厚生省の調べで国民の8割が介護保険に賛成との声があり,法案提出に踏み切ったことを紹介。保険制度の概要を解説するとともに,2000年からのスタートに向けて現在各県で進められているモデル事業を,1998年からは各市町村でも実施することを明らかにし,「十分な経験を持つ日本看護協会の協力をあおぎたい」と結んだ。

看護の新しい機能としての介護保険

 続いて日本看護協会の山崎氏は,「ケアマネジメントと看護職」を講演。「介護保険を“利用者本位で国民のニーズに十分応えうる制度”に創りあげていくために,看護職能団体として最大限に力をつくしていく。保健・医療・福祉の各分野で看護職が連携を強めることは,看護職自身にとって職業上の満足感・達成感を高めることにつながる」とする,同協会の「公的介護保険導入に向けた活動方針」を提示し,介護保険の基本理念,ケアマネジメントの機能,ケアマネジャーの役割などを解説した。
 また,ケアマネジャーの養成について,その基本的な考え方として「(1)当面地域において高齢者のケアの担当している人材を研修し,資質の向上を図る,(2)都道府県において研修を実施し,一定水準の介護支援専門員を相当規模で確保する,(3)養成対象者は,医師,歯科医師,薬剤師,保健婦,看護婦,PT,OT,社会福祉士,介護福祉士等の専門職のうち,実務経験を有し所要の研修修了者が考えられるが,現在現場で活躍している者を対象者とするなど,制度運営を弾力的に行なう必要がある」ことを示し,講習会の開催,都道府県での試験(実務研修受講資格試験)実施,合格者対象の実務研修(6日間)後に,修了証を発行するという一連の流れを紹介した。
 山崎氏は,「2000年には対象となる高齢者が280万人になる。その半年前までに要介護認定をしておかなければ,制度がスタートできない。そのためには5万人規模の人材が必要」と現実的な問題点をあげた。さらに,「要介護認定の公平性,質の高いケアの保証,チームケアのリーダー性などを考慮すると,看護婦がリーダーシップを取る必要がある。臨床から在宅,施設までの役割拡大,また訪問看護ステーションはケアプラン作成機関になれることから,介護保険の実務的運営者,事業者として制度に提言していくことも可能であり,看護の新しい機能としての位置づけができる」と述べ,「5万人のケアマネジャーの6割は看護職がなることを望みたい」と結んだ。
 なお,法案成立後の制度実施にともないカタカナでの表現は次のよう改められる。
ケアマネジャー =介護支援専門員
ケアマネジメント=介護支援サービス
ケアプラン   =介護サービス計画
        (厚生省,10月10日付)