医学界新聞

 Nurse's Essay

 久々に看護学会に参加して

 八谷量子


 先日,久々に精神科の急性期看護の学会(10月2-3日,東京)に参加する機会があった。急性期という専門性から,救急入院時に興奮して暴れたり,看護者に暴言を吐くなどの処遇困難な患者の看護を扱った発表が多かった。また,最近の社会情勢を反映してか外国人や,ホームレスの患者の増加が目立つとの指摘もされていた。
 今回特に興味深かったのがシンポジウム。発表者は医師,看護婦,ケースワーカー,弁護士という構成であったが,それぞれの専門分野によって観点が異なり,統一した見解で精神科の治療に当たることの困難さをしみじみと感じた。
 特に身体的拘束に関しては,医師や看護者からは治療上やむを得ない行為であり,むしろ患者の興奮を鎮める効果があり,治療に入るには不可欠であることや,患者自身や看護者の安全を保護する意味でも必要な処置であるとする意見が主流を占めた。これに対しケースワーカーは,「甘いと思われるのは承知の上」と前置きし,あくまでも患者さんの人権を考え,重視するならば,身体的拘束はすべきではないと主張した。両者の意見はどこまでいっても噛み合わず,平行線をたどったままシンポジウムは時間切れで終了した。
 精神科の看護に携わっている関係で,日頃急性期の患者さんたちと接し,保護室の使用や身体的拘束をやむを得ないものとして行なう場合がある。病状が安定した患者さんに,後から「保護室に入られた時は辛かったよ」と言われたこともある。今回の人権論争をベースにした意見の食い違いは,現場看護者のジレンマでもあり,自分自身の問題として深く考えさせられた。
 それでも,患者さんたちにはそのような処置がなぜ必要だったのか,その時点ではそうすることが最善の方法であったことを後日談でもいい,誠意を持って説明し理解してもらうことで,誤解や偏見といった精神医療のマイナスイメージを払拭できると信じている。精神科看護と人権について考えさせられた学会であった。