医学界新聞

LPC国際フォーラム・ワークショップ開催

病院,外来およびホスピス,在宅ケアのQOL向上をめざして


 さる8月29-30日の両日,東京の聖路加看護大学・セントジョンメモリアルホールにおいて,ライフプランニングセンター(LPC)主催の国際フォーラム・ワークショップ「病院,外来およびホスピス,在宅ケアのQOL向上ををめざして―医療従事者がいかに連帯すべきか」が開催された。
 同フォーラムは,一般病院や緩和ケア病棟,外来診療,在宅ケアの中で,患者側のQOLをどうとらえ,患者・家族へ対するケアをどう展開していくかを模策する場として企画。医師,看護職をはじめとし,福祉職などさまざまな職種の従事者が集まり,立場を越えた議論が交わされた。

患者を取り巻く状況

 第1日目には,海外から3名の演者がフォーラムに参加。冒頭で日野原重明氏(聖路加看護大学長)は日本の医学と看護の中でのQOLについて概説。その後,M.E.C.カーグ氏(オランダ・ビリジェ大学病院研究所)は,オランダの医療制度や現状を報告するとともに,ビデオで病院とナーシングホームの中間と位地づけられる在宅介護センターの提供するサービス内容を紹介した。また,医師,病院のナースや在宅ケアとが連携し,すべての患者(オランダではクライアント)が質のよいケアを受けるためには「transmural care」(「壁を通り抜ける,越える」の意味から各職種の壁をなくしたケアの意味)の確立が重要であるとまとめた。
 続いて,G.ハーベイ氏(イギリス・王立看護大付属研究所)がイギリスのヘルスケアにおけるQOLの評価をテーマに講演。実際に看護婦自らが患者ケアの評価をできるよう開発,施行した患者のヘルスケアの質改善プログラムである「Dynamic standard setting system」を紹介した。
 最後に,オスラー協会長を長年務めたB.F.アンドリュー氏(ルイヴィル大名誉教授)が,マネージドケアなどのアメリカの医療制度の問題点をあげ,さらに小児の状況を,歴史をおって述べるとともに,小児科医としての経験から得たさまざまな思いを込めた自作の詩を披露した。
 3氏の講演の後,日野原氏を司会に講師3名と,アメリカでの臨床経験の豊富な植村研一氏(浜松医大教授)が登壇し,パネルディスカッションが企画された。フロアも交えて,英国のナショナルヘルスサービスの問題点として,入院期間の短縮を試みているが,在宅で十分なケア受けられなくなる傾向があるため,理想としている「シームレス・ケア」(継ぎ目のないケア)を提供する段階に至っていないことや,またアメリカのマネージドケアをはじめとした各国の医療費の問題にまで話が及んだ。

患者のQOL向上のための戦略

 2日目は,「QOL向上のための戦略」と題し,病院,外来,緩和ケア病棟,在宅ケアの4つのセッションに分かれ,それぞれの立場での患者を中心としたケアのあり方を議論するワークショップが行なわれた。このワークショップは,ファシリテーターを進行役に,10人前後のグループに分かれ,患者のQOLを促進因子と阻害因子を書き出していき,問題点をクリアにするというもの。
 午後には,ファシリテーターを務めた植村氏,丸尾真也氏(ライフ・プランニング・センター),福間誠之氏(明石市立市民病院),岡安大仁氏(元日大教授),紅林みつ子氏(訪問看護婦)がそれぞれ病院,外来,ホスピス・緩和ケア病棟,在宅ケアの立場を代表して登壇し,グループからあげられた問題点を報告。フロアを交えての討議では,「QOLの意味を再確認すべきとともに,患者の求めているQOLを確認することが重要」とする意見や,「患者のニーズに応えるだけでなく,ニーズを作り出すことも大切では」,「どこまで患者をアクティベートさせるかの見極めるが重要」,「人間としての満足度を考えた場合,性についてオープンにすべきである」などの発言を中心に,活発な議論が繰り広げられた。