医学界新聞

地域看護の理論構築化を期待

日本地域看護学会が設立される


 「地域看護学の学術的発展と教育・普及を図り,人々の健康と福祉に貢献する」ことを目的に,このたび日本地域看護学会が設立。さる10月15日に,横浜市のパシフィコ横浜で設立総会が開かれた。
 設立総会では,金川克子設立発起人代表(東大教授,初代理事長に就任)の挨拶に引き続き,会則の審議,13名の理事および20名の評議員の選出が行なわれ,その後にミニシンポジウム「本学会のめざすもの-現状と今後の課題」(司会=金川克子氏,広島大 小西美智子氏)が企画された。

地域看護学の将来を占う

 シンポジウムでは,行政,在宅ケア,学校保健,産業保健の分野から,看護活動の現状と今後の課題が提示されるとともに,地域看護の将来性,学会の取り組むべき方向を示唆する発表が行なわれた。
 最初に登壇した村山正子氏(富山医薬大)は,行政における地域看護について口演。「地域保健法の実施に伴い,最近の地域保健システムの変革は急速であり,行政サービスを担う保健婦は,保健,福祉を含めた住民ニーズにあったケアコーディネーションなどの意識改革が必要」と前置きし,保健所の役割が変わってきたこと,先駆的事業を新たに取り入れていく必要を述べるとともに,「専門性,専任性を深めた領域としての公衆衛生活動が望まれている」と強調。さらに,「日々の活動を意識的,意図的にとらえていくことや,これまでの実践を理論化し体系づけることが研究活動につながる」と述べ,これからの保健婦に求められる課題として,「現任教育に視点をおいた基礎教育の実践」などをあげた。
 在宅ケアの視点からは島内節氏(東医歯大)が発言。「昭和58年に制定された老人保健法から在宅ケアが始まった」と概説し,重点となる研究課題に,(1)24時間ケアの包括的システムの確立,(2)生活障害の予防からターミナルケアまでのニーズの多様化とケアの拡大,(3)利用者の権利擁護,(4)経営とコスト管理などをあげた。また,ケアの質保証のための評価枠組みの確立の重要性を説き,「退院計画,在宅ケアプラン策定のためには,看護職がケアマネージャーポストの確立を図り,リーダーシップをとる必要がある」と述べた。
 飯田澄美子氏(聖路加看護大)は,「養護教諭にとって必要な看護能力とは」など,学校保健に焦点を合わせて現状と課題を解説。年々増えている保健室登校の実態を報告し,「ヘルスカウンセリングとの連携,精神的側面の個別的対応がこれからの養護教諭に求められている」と述べた。
 さらに産業看護の現状と課題については河野啓子氏(東海大)が口演。日本では歴史の浅い産業看護の定義や「学際的な労働衛生チームの一員」とする役割,職務などを述べるともに,産業看護の課題として,(1)教育の充実,(2)研究の充実,(3)法制化,(4)地域保健,学校保健との連携をあげ,研究を進めることの必要性を指摘した。
 なお設立総会までの会員申込み数は170名。現在事務局では会員を募集している。
事務局
(1998年3月まで)東京大学医学部地域看護学教室内
 TEL&FAX(03)5689-7228
(1998年4月以降)日本学会事務センター
 TEL(03)5814-5801/FAX(03)5814-5820