医学界新聞

第47回日本アレルギー学会開催


 第47回日本アレルギー学会が,眞野健次会長(帝京大教授)のもと,さる10月6-8日の3日間,東京の東京国際フォーラムで開催された。今回は「アレルギー疾患における遺伝と環境」をテーマに掲げ,遺伝因子,環境因子の2つの方向からアレルギー疾患にアプローチが行なわれた。
 本号では,シンポジウム「アレルギー疾患は何故増加したか(環境因子の再検討)」(司会=同愛記念病院 馬場実氏,静岡大 鈴木修二氏)の模様を紹介する。

生活環境の変化とアレルギー

 最初に登壇した遠藤朝彦氏(慈恵医大)は,寄生虫を含む感染症とアレルギーの関係について解説。寄生虫感染,副鼻腔炎などの減少とアレルギー疾患の増加との間の関連性を認めながらも,「アレルギー疾患は大気汚染,ストレス,生活様式の変化など,さまざまな要素が重なり合って発生するものであり,アレルギー増加の因子を1つに絞り込むことは困難である」と述べた。
 続いて藤巻秀和氏(国立環境研)は,大気環境とアレルギーについて発言。NO2,O3といった従来の大気汚染物質に関しては,環境基準の設定などにより外気中では低いレベルになりつつあると報告した。それに対してVOC(Volatile Organic Compounds:揮発性有機化合物),ディーゼル粒子,ダイオキシン,紫外線などが新たな大気環境における因子として浮上してきていると指摘した。
 宇理須厚雄氏(藤田保衛大)は住環境の変化とアレルギーの関係について言及。
 「住宅の気密化によって,窒素化合物,ホルムアルデヒドなどの室内汚染物質の拡散が妨げられたり,恒温化,多湿化によりダニ,真菌などを繁殖させる結果になるなど,住環境の変化がアレルゲンを蓄積させる原因となっているのではないか」と語った。

内的環境の変化とアレルギー

 山下直宏氏(富山医薬大)は,食生活の変化,特に多価不飽和脂肪酸(PUFA)の摂取とアレルギーの関係について述べた。氏によると,PUFAはω3,ω6,ω9,などの系列に分かれており,ω6がエイコサノイドを産生すること,ω3は脾細胞の抗原提示能の抑制など副腎皮質ステロイド類似の作用を持つことが解明されつつあることから,アレルギーの1次予防の手段としてのω3/ω6 PUFAのバランスの是正や,治療としてのω3 PUFAの投与の可能性を示唆した。
 最後に登壇した原信一郎氏(国立精神・神経センター国府台病院)は心理的環境とアレルギーについて発表。気管支喘息を中心に,ストレス関連疾患としてのアレルギー性疾患と,その対処方法について論じた。