医学界新聞

BSEとvCJDの関係を示す動かぬ証拠


 脳をむしばむ新型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)を引き起こすプリオン病原体は,ウシ海綿状脳症(BSE,通常「狂牛病」)の病原体と同じものであることが,2つの研究で明らかになった。これでヒトの感染は,BSEに感染したウシの肉を食べたためである可能性が非常に高いことになった。
 英国にある動物健康研究所のM.Bruceたちが1年以上かけて行なった研究では,ウシ,vCJD患者,散発性CJD患者,BSE感染動物を飼育していてその後CJDで死亡した複数の酪農従事者から,感染脳の試料を採取し,数系統の実験用マウスに注射した。Bruceたちは,潜伏期間(注射したマウスが発病するまでの時間)や生じた脳の病変の種類や位置を厳密に観察した。その結果,マウスでのvCJDの組織所見,症状,経過はBSEのものと一致し,他の型のCJDとは異なっていた。CJDで死亡した酪農従事者のCJDの病原体株はBSEのものとは一致せず,他誌に今年発表された研究(The Lancet350, 188;1997)を裏づける結果となった。
 2つ目の研究はScientific Correspondence欄のロンドン大学インペリアル・カレッジのJ. Coolingeたちによるもので,まったく違ったやり方で,Bruceたちと同じく,vCJDの病原体はBSEのものと同じであるという結論に達している。
 Collingeたちは生化学的手法を用いて,BSEとvCJDの病原体が同一で,ヒトの他の種類のCJDの病原体とは違いがあることを明らかにした。彼らは,BSEの原因となる病原体が,ヒトのプリオンタンパク質を非常に弾力性に富み病原性のあるタンパク質に「変化させる」ことを,マウスで調べて明らかにした。もともとあるマウスプリオンタンパク質遺伝子を置換して,ヒトプリオンタンパク質遺伝子を持つようにした遺伝子操作マウスは,BSE汚染物質の注射後,最終的に海綿状脳症を発症した。Collingeたちは,これらのマウスは接種後200日たっても発病しないと1995年に本誌に報告していたが(Nature378, 779 1995),さらに観察を続け,マウスが500日後に発病したことを今回報告した。

(“Nature2.Octber,1997”より)