医学界新聞

第5回総合リハビリテーション賞授賞式開催


 雑誌「総合リハビリテーション」(医学書院発行)に昨年1年間に掲載された論文の中から,最も優れた論文を顕彰する「総合リハビリテーション賞」(主催:金原一郎記念医学医療振興財団,後援:「総合リハビリテーション」編集室)の第5回授賞論文が,鈴木英二氏(埼玉医大リハビリテーション科)他の「脳卒中患者の社会適応スケールの作成」(同誌Vol.24,No.4掲載)に決定。同賞の授賞式が,さる9月29日,東京・本郷の学士会館において行なわれた。授賞式では,編集委員会を代表した上田敏氏(帝京平成大教授・情報学部福祉情報学科)から,賞状,賞楯,副賞が鈴木氏に手渡された。
 鈴木氏の受賞論文は,脳卒中患者の退院後の介護負担度の予測などに利用することを目的に,社会適応スケールの作成を行ない,その信頼性・妥当性を検討した研究。同誌編集幹事の千田富義氏(秋田県総合リハビリテーションセンター・精神医療センター)は,「鈴木先生の論文は,分裂病患者の社会適応スケールをもとに,脳損傷に適切な項目を加えて,脳卒中患者の社会適応スケールを作成し,介護負担度やBartherl Indexなどと巧みに比較しながら,妥当性を明らかにしていった点はきわめて独創的である。高齢化社会が進む中で,現代的な意義もある」と選考経過と授賞理由を説明。「(著者も論文の中で述べているように)この分野は開発途上であり,さらに研究を進め成果をあげていただきたい」と,今後の研究に期待をつなげた。
 授賞式に引き続いて懇親会では,この賞の生みの親とも言える上田氏が,意欲的な研究を遂行した鈴木氏を讃えるとともに,「一昨年の基礎医学研究,昨年の心理学的テーマに続き本年の鈴木氏と,毎年異なるジャンルの方が受賞されたことに示されるように,リハビリテーション分野が成熟し,自然にいろいろな分野から優れた業績が出てきた」と同賞の発展にも言及した。
 一方受賞された鈴木氏は,「現在の医療制度のもとでは,3か月くらいの短期入院で退院にもっていく(在宅への強制移行)傾向があるが,実際は6か月-1年でやっと在宅生活が可能なレベルに達する患者もいる。リハビリテーションの分野で効果の判定基準を確立するのはまだまだ難しい点が多いが,今後もその人の個性にあった障害受容が可能になる段階まで医療でできることを探っていきたい」と喜びの言葉の中に,自らのリハビリテーション医療にかける意欲を示した。
 「総合リハビリテーション」誌の創刊20周年を記念して設けられた同賞の受賞論文は,第1回が嚥下障害に関係した臨床的テーマ,第2回がスポーツ医学関連,第3回が基礎的なリハビリテーション医学関連,昨年の第4回が心理分野から,そして今回が社会適応スケールの作成に関する論文となり,リハビリテーション医学の幅の広さを示すとともに,文字どおり「総合リハビリテーション誌」に相応しいものとなった。 なお,来年も引き続き同誌に今年1年間掲載された論文の中から,「第6回総合リハビリテーション賞」が選考される。