医学界新聞

NURSING LIBRARY 看護関連 書籍・雑誌紹介


チーム医療のための画期的な書

在宅酸素療法マニュアル 新しいチーム医療をめざして 木田厚瑞 著

《書 評》川村佐和子(東医歯大教授・看護学)

急増する在宅酸素法利用者

 従来の医療は医療機関内で行なわれることが原則であったが,平成4年の医療法改正によって,居宅等で医療が認められた。また,健康保険法においても在宅医療に対する給付が認められ,在宅医療を利用する人々は増加している。
 とりわけ在宅酸素療法は,医師や看護婦,理学療法士らの熱意により,法律改正以前から療法の開発が行なわれており,利用者(在宅酸素療法実施者)は,現在5万人を越えるほどに急速に増加している。
 著者は本療法開発に積極的に取り組み,チームによる療養者サービスを行なってきた医師である。

すべての職種に共通のマニュアル

 在宅医療に関するサービスは,居宅でこれを行なうに必要なすべての条件に対応するため,多くの職員のチーム活動が必要となる。
 例えば,従来の医療機関内医療では,機器供給会社は機器を持ち込むだけでよいというように,役割づけられていたが,在宅療養支援チームでは単に酸素供給装置の搬入を担当するだけではなく,それが正常に機能しているための保守点検および整備を行ない,問題が生じればすぐ対応するなどの重要な役割を担っている。
 従来でも,機器供給会社はこのような役割を果たしていたものであったが,チーム構成員としては認められていなかった。在宅医療支援チームはこのように,従来,潜在化されていた多くの職種による活動を含めて構成されていることを認識し,そこに参加するいずれの職種も相互に尊重する,共通のマニュアルを必要とする時代になった。
 本書の著者がこのチームを構成する多くの職種(員)に共通するマニュアルを書かれたことは画期的なことであり,きわめて時宜を得たものである。
 この書では,在宅酸素療法支援活動として,次の課題をとりあげている。(1)包括的呼吸リハビリテーションにおける在宅酸素療法,(2)倫理的問題(インフォームドコンセント),(3)医療チームの設計,(4)在宅酸素療法の導入基準,(5)在宅酸素療法実施の手順,(6)在宅酸素療法で用いられる機器と取り扱い上の注意点,(7)酸素の投与方法と器具,(8)パルス・オキシメーターの利用,(9)在宅酸素療法開始に伴う問題と解決方法,(10)日常生活の指導,(11)日常生活における機器取り扱いの指導,(12)外来受診の際のチェックポイント,(13)家庭における肺理学療法および運動療法,(14)吸入療法,(15)在宅酸素療法患者の急性増悪への対応,(16)在宅医療の継続,(17)在宅酵素療法における副作用,事故とその対処法,(18)在宅酸素療法における医学的効果とQOL,(19)在宅酸素療法における診療報酬,(20)在宅酸素療法患者の予後,(21)酸素業者のチェック,在宅医療の問題点,社会福祉制度の利用法,(22)在宅酸素療法における将来の課題である。

活動のあり方について具体的な根拠・事例を示す

 項目ごとに,著者は丹念に概要を説明し,チーム方針と分担,それぞれの活動のあり方について,具体的な根拠や事例を提示しながら,述べている。その書き方は「誰は○○をする」という調子や,抽象的なお説教ではない。支援チーム構成員全員がそれぞれの役割と所属機関の立場によって,その趣旨と要所を読みとり,実践に移せるように書かれている。
 チーム活動はあくまでも,チーム構成員の主体的活動によって最高の成果をあげる。在宅酸素療法患者を支援する全員が主体的に読み,活用すべき1冊である。
A5・頁328 定価(本体4,300円+税) 医学書院


地域ケア体制の整備に大きなヒント

始めよう!24時間訪問看護・介護 村嶋幸代 編集/川越博美,他 著

《書 評》小宮 勇(横浜市福祉局長寿社会課保健担当課長)

 私がこの本を手にしたのは,日々の介護保険の議論の中で,「24時間365日,対象者のニーズに応じた地域ケアの受け皿をどのように整備するか」という課題に対し,「訪問看護ステーションはどんなことができるか,介護体制だけではだめか」との質問が投げかけられた時でした。

検討課題を共有できる

 平成6年度と7年度に行なわれた訪問看護ステーションによる24時間対応型のモデル事業による実践をベースに書かれている本書は,私が知りたかったこと(後述)に次々に答えてくれ,また,ともに施策づくりに取り組む行政の事務系職員も「図表と事例で実際の動きがよくわかった」と好評で,検討課題を共有するのに十分な臨場感があり,格好の文献でした。
 編集者らの24時間訪問看護に対する期待と,真摯にそして情熱を持って取り組まれたモデル事業,非常に新鮮で価値のある実践の集大成です。

実践的課題に具体的に答える

 さて,本題に入りますが,私が知りたかったことは,(1)どのような人がどのようなケアを必要としているか,(2)実施に向けての準備と具体的実施形態は,(3)実施しての効果,(4)経費はどのくらい,ということでした。これに対して(4)経費以外はほとんど明快な回答とこれからの施策づくりに多くのヒントを得ました。
 そのいくつかをあげますと,(1)24時間体制の中味は2つ=緊急コール受理と日常生活上のケア,(2)チームケア(ナースとヘルパーの協働,夜と昼のチームの連携)が効果を倍加する,(3)24時間ケアのポイントはモーニングケアとイブニングケア,(4)24時間ケアの中味は3つ=高齢者の在宅ケアを支える,医療的処置,在宅ターミナル,(5)ケアのニーズは時刻ごとに発生,まとめて対応できるニーズではない=時間帯別ニーズと対応体制,(6)究めたい在宅ケアでのセルフケアの意味,(7)24時間の実施パターン,(8)24時間ケアは看護の腕のみせどころ=ケアプラン作成とケアコーディネションの力をつけよう!などです。

看護職の役割に夢と可能性を示唆

 介護保険の中で「訪問看護」は在宅サービスの主要なメニューといわれ,訪問看護提供の中心は訪問看護ステーションが担うことが予測されます。しかし,医療と福祉の両方から訪問サービスは提供されており,24時間サービスは共通の課題でもあります。先行して取り組まれている「24時間ホームヘルプ」で介護のニーズは顕在化し,その取り組みは非常に期待されています。
 その中で「看護も!」の声が大きく出てくるためには,介護職と一緒に24時間体制を組み,日常生活の中で起こるさまざまな不安や問題に対し,日頃接している看護職にファーストコールがかかってくるような,また,在宅でのターミナルを可能にできるような働きを具体的にしていくことが必須であると感じています。その中で確実に看護の機能が市民に理解される。と,そんな夢と可能性を示唆しているのも本書です。さらに実践が積み重ねられ,続編が刊行されるのを期待します。
A5・頁200 定価(本体2,200円+税) 医学書院