医学界新聞

IRMA VIIIが深緑の京都で開催

The 8th World Congress of the International Rehabilitation Medicine Association


 IRMA VIII(The 8th World Congress of the International Rehabilitation Medicine Association:国際リハビリテーション医学会第8回世界大会)が,上田敏組織委員会委員長のもと,さる8月31日-9月4日,京都市の国立京都国際会館において開催された。
 本紙第2252号で既報のように,IRMA VIIIは「Across The Bridge Towards The 21st Century」をテーマに掲げ,基調講演(1)脳の可塑性(伊藤正男氏),(2)リハビリテーション医学における評価(D. T. Wade氏),(3)組織的臨床マネージメント(J. L. Melvin氏),(4)老年医学的リハビリテーション(D. S. Smith氏),(5)リヒト記念講演:21世紀のリハビリテーション医学(M. Grabois氏)の他,教育講演,シンポジウム,パネルディスカッション,ワークショップ,セミナーなど多彩なプログラムが組まれた。また,同時開催となった第34回日本リハビリテーション医学会との共催によるジョイントシンポジウム「痛みのマネジメントにおける東洋医学の役割」も企画された。


 関連記事は,下記のとおり。

「リハビリテーション医学における国際協力」
急性期の脳卒中のリハビリテーション:その国際比較
国際的な流れの中でコメディカル職種が議論
マネージドケアの時代におけるリハ専門職の役割


「リハビリテーション医学における国際協力」
International Rehabilitation Medicine ; Coodination & Cooperation

 

IRMAについて

 リハビリテーション医学に関係する国際団体は,IRMAの他にRI(Rehabilitation International),IFPMR(International Federation of Physical Medicine and Rehabilitation)などがある。
 伊藤正男氏(理化学研究所・前日本学術会議会長)の基調講演「脳の可塑性(Plasticity of the Brain)」に続いて,WHO,WR Fund(World Rehabilitation Fund)など各界の代表者を演者に招いた最初のシンポジウム「International Rehabilitation Medicine Coordination & Cooperation〔リハビリテーション医学における国際協力〕」が上田氏,J.L.Melvin(IFPMR会長)氏の座長のもとで開かれた。
 まずIRMA会長Grabois氏がIRMAの歴史的背景とその意義,また果たしてきた役割を概説した。故S.Licht氏の主導によって,リハビリテーション医学に関心を持つ医師の個人加盟という形で1968年に組織されたIRMAは,1970年にイタリアで第1回世界大会を開き,その後4年に1度世界各地で開催。主に国際交流に重点を置いて活動してきたが,Grabois氏は直面する問題点として,(1)先進国と開発途上国との格差,(2)リハビリテーション医学の重要性に対する認識度の低さ,(3)財源の不足,(4)コミュニケーション・情報の共有化の不足,(5)教育レベルにおける問題,などを挙げた。

IFPMRについて

 続いてMelvin氏は,IRMAとIFPMRの関係について解説。「これまではIRMAとIFPMRという2つの大きな組織があり,それぞれ別個に活動してきたが,今回,この2つが統合され,1999年,ワシントンにおけるIFPMRにおいて1つの組織になることが合意された」と報告し,「今後2年間は,2つの組織が存在することになるが,両者はすでに綿密な計画を立案中であり,お互いの長所を生かしながら新しい組織として生まれ変わるだろう」と新組織ISPRM(International Society of Physical Medicine)への期待を述べた。

ISPRMについて

 またMelvin氏は,「ISPRMの目的および使命は,従来のリハビリテーション医学の国際活動において必ずしも十分な成果が上げられなかった活動分野,例えば障害を持つ人たちに対する支援や活動をその中核に置くことであり,単に機能や健康度を改善するだけでなく,障害を持つ人々と私たちが協力して改善していくことの重要性を認識することである。したがって,医師や医療従事者の組織内のみでなく,障害を持つ人たちの団体や組織との協力関係を円滑に推進・保持できるかどうかに目的実現の成否がかかっている」と強調。
 さらにGrabois氏と同様に,開発途上国の問題に言及し,「開発途上国も当然,情報に対するアクセスを必要としている。しかし開発途上国は,単に最先端の情報に興味を持っているのではなく,基本的な情報,例えばスペシャリストだけが扱える方法ではなく,リハビリに関与しているソーシャル・ワーカーや家族にでもできるような基本的な情報も必要としている」と述べた。
 そして最後にMelvin氏は協力-連帯関係が抱える課題に触れ,「新しい組織を成功に導くためには,組織内部のコミュニケーションと組織外部のコミュニケーション,そして両者の協力,つまりこのシンポの副題であるCoordination, CooperationとともにCollaborationが不可欠である」と述べて講演を結んだ。

RIによる分析

 次いでRIの事務局長S.Parker氏はメインテーマに沿って,「リハビリテーション医学は21世紀においてなお一層学際的になり,医学的,心理的なリハビリテーションの分野がますます密接な関係を保持して発展しなければ充全な技術の提供は不可能である」と前置きし,次のように現況を分析した。
 国連のDevelopment programの推計によれば,障害を持つ人々は1990年から2025年までの35年間に先進国では約14%減少するが,逆に開発途上国では約47%増加する。その原因として戦争,暴力,貧困,感染症などが挙げられるが,これは過去25年間,障害を持った人々が先進国よりも開発途上国に集中し,社会的資源の偏在している歴史にも呼応する非常に重要かつ不変の事実である。
 Parker氏は以上を分析した後,新しい組織ISPRMへの期待とともに,NGO(非政府組織)への期待,およびCBR(Community Based Rehabilitation)に対する支援の不足を指摘して講演を結んだ。

WHOからの提言

 医療技術の進歩やさまざまな治療戦略によって健康改善が図られているが,WHOのE.Pupulin氏は,その一方で生じつつある急速な高齢者人口の増加,周産期医療の向上による障害児の増加,また慢性疾患患者の増加などの新しいジレンマを指摘し,「その結果,障害を持つ人が激増し,リハビリテーションに対する需要が高まっているにもかかわらず,現実はそれに対応できていない」と強調。
 さらにそれらを踏まえてPupulin氏は,21世紀に向けたWHOリハビリテーションユニットの戦略改定を「アルマ・アタ宣言」や「オタワ憲章」の精神から説き起こし,「障害者機会均等に関する国連の規則(UN Standard Rules on the Equalization of Opportunities for Persons with Disabilities)」の持つ意義の重要性を指摘。特に「障害者機会均等に関する国連の規則」が重要である理由をPupulin氏は,「この文書がリハビリテーションサービスの受給者,つまり障害を持つ人々によって作成され,社会に対してすべての市民が機会均等,かつ平等な権利を得られることを求め,さらにより高いレベルにおける自立をめざすことを謳っているからである」と説明した。
 同時Puplin氏は,ILOとUNESCOおよびWHOが合同で1994年に提出した「CBR」に関する文書に触れ,「コミュニティーをベースとしたリハビリテーションは,人々の協力のもとで,保健教育,職業,社会サービスの適切な提供を通じて行なわれるものである」とその重要性を指摘した。

WR Fundからの報告

 最後にWR Fund会長のGrynbaum氏は,同基金の活動の歴史と現況を,創設者であるDr. Howard A. RuskおよびRusk研究所の歩みになぞらえて概説した。
 リハビリテーション医学が専門分野として確立した1940年代後半,この分野の第一人者であったDr. Ruskは,障害を持つ人々に対するケアのために「国家を越える橋を架けよう」と考え,さまざまな分野の医師を動員して,まず世界で最も古いリハビリ専門病院「Rusk研究所」をニュヨークに作った。すでに50周年を迎えた同研究所から,多くの医師・各種の専門家が訓練を受けて日本を含めて世界各国に輩出している。
 またDr. Ruskは1955年のWR Fund設立の際にも多大な貢献をはたし,当時,多くの国で基本的な機器,特に障害を持つ人々のケアに必要な機器が備わっておらず,WR Fundはそれらに対する援助,また,各種の技師のための訓練センターの設立にも力を注いだ。
 Grynbaum氏によれば,WR Fundは「その後,「ハンセン氏病」や「ポリオ患者」に対するサービスを提供し,「さらに,避けることができない,予防することができない事柄,例えば“対人地雷”の問題にも取り組んでいる」と報告した。

障害を持つ方の情報や知識を専門家に提供してもらうことも重要

 5名の演者の発表後にフロアを交えた質疑応答がもたれ,「政策決定者と実行者や資金提供者の意思の乖離」,「NGOの役割」,「トレーニングセンター」,「WHOのプログラム」,「その国の特殊性に由来する事項」,「障害を持つ人々の組織」など,広範多岐にわたるテーマが再度討議された。
 座長のMelvin氏は,最後にトレーニングシステムの問題を提議し,CBRのトレーニング,プライマリ・ヘルスケアのためのトレーニング,また,各種の医療従事者を訓練するためのカリキュラム作成の重要性を強調するとともに,「しかしながら,その逆もまた然りと言うべきだと思う。つまり,障害を持つ方,またその家族の方たちが持っている知識や情報を専門職に提供することも必要である。自分の問題は自分が一番よくわかっている。したがって,いろいろなシステムを介し,またさまざまレベルを介して,それらの知識や情報をリハビリテーション医学の専門家に提供してもらい,また反対に,リハビリテーション医学の専門家は障害を持つ人々にもう一度フィードバックする。そうした,いわゆるインタラクティブな方法も必要であろうと思う」と強調してシンポジウムを締めくくった。


急性期の脳卒中のリハビリテーション:その国際比較
Rehabilitation in Acute Stroke : An International Comparison

 脳血管障害は,多彩な問題点を有し,また多くの場合,その経過が「発症-回復」という相同性であるために,リハビリテーション医学の最も重要な対象疾患となっている。IRMA VIIIにおいても,シンポジウム「Rehabilitation in Acute Stroke:An International Comparison〔急性期の脳卒中のリハビリテーション:その国際比較〕」(座長=防衛医大 石神重信氏,Indinana大 D.L.Kaelin氏)が開かれ,アメリカ,イギリス,オーストラリアにおける国際比較が討議された。

Post-Acute Stroke Day Rehabilitation

 Neuro-Rehabilitation-ProgramのディレクターでもあるKaelin氏は,日本との比較でアメリカの状況を紹介した。
 Kaelin氏によれば,アメリカでは急性期脳卒中患者に対してケアの連続性を重視している。つまり,それぞれの病院のシステム,または1つの地域社会の中に,入院後,最高レベルの機能を獲得して社会復帰するまで,すべての段階でケアが提供できる体制を構築することである。急性期の入院患者のためには外来に治療部門を設け,退院後も特定の,例えばPTやOT,あるいはSTの治療を受けられ,さらに,家庭で家族の介護を受けられ,地域の中でサポートがあり,機能レベルが高い場合は,外来患者として治療を受けることもできる。
 また,アメリカでは最近「Post-Acute Stroke Day Rehabilitation」というプログラムが増えつつあると言う。これは,家庭で生活していたり,地域でサポートを受けている患者も,入院患者と同じレベルの集中リハビリ治療を1日6-7時間受けられるプログラムで,その利点として(1)コストの削減,(2)患者が自分に慣れた環境に戻り,留まることができる,(3)家族が患者の身体障害に対処できることが挙げられる。特に,「メディケア」や「メディエイド」などの保険制度との関連から「コスト削減」が大きな要因になっている。
 同時に,「亜急性のリハビリテーションプログラム」と呼ばれているプログラムも増えている。これは1日2-3時間の治療で,急性ケアの病院かナーシング・ファシリィティー(ナーシング・ホームもしくはエクステンディッド・ケア・ファシリィティー)で提供される。介護が必要で,自立して生活することができない人たちが収容されている施設で提供されるもので,過渡的な期間,例えば1-2週間,もしくは1-2か月の間,最終的には家庭に戻って自立して生活できるようにすることを目的としたものである。また急性期の脳卒中で入院する場合には多額の入院費用が要かるので,これに対処するために「ホーム・ヘルス・セラピー」や「巡回セラピスト」という手段があり,これも最近次第に増えている。

「目標志向」に設定されたプログラム

 急性期の脳卒中患者が入院後に治療を受けるリハビリのチームには,内科,神経内科らの医師はもちろんのこと,PT,OT,STが参加するが,患者が接する時間が最も長いメンバーであるリハビリテーションナースも重要なチームメンバーであり,その他にも,心理学者(カウンセラーを含む)や栄養士も加わることもある。
 しかし,最も重要なことは,患者自身と家族の参画である。患者と家族が専門家たちの治療をガイドしていくものであり,また専門家は患者や家族にとっての現実的なゴールを設定する。少なくとも1日1回の家族とのミーティングを行ない,リハビリを開始してから7-10日後に,共通の目標に向かって両者が努力しているかどうかを確認し合う。急性期の脳卒中の入院患者のリハビリプログラムで重要なことは,それが入院後24時間以内に,すべてのリハビリチームのメンバーが患者を評価する,いわば「目標志向」に設定されていることである。

費用効果の高いマネジメントを

 イギリスだけでなく,オーストラリアにおいても長年脳卒中の治療にあたってきたD. S. Smith氏(Salisbury District Hospital/U. K.)は,オーストラリアとイギリスに共通する状況を発表した。
 Smith氏は,「“脳卒中の予防”という話題に国民は強い関心を呼び起こされるが,“脳卒中のリハビリテーション,もしくはマネジメント”という話題に対してはあまり関心を寄せないのは,脳卒中は回復不能だという認識が国民一般に広くいきわたっているからである。しかし,現実としてはここ30年間,脳卒中の重症度は下がっている。これは,高血圧のマネジメントの改善,重度の脳出血の減少,障害度の低下などによるものであり,これからは考え方を変えなければいけない」と指摘。適切な初期管理,発症後6か月-1年間のマネジメント上の問題点,トリアージの役割,疾患のナチュラルヒストリー,その決定要因,理学療法の役割,発症後の行動および機能障害などの観点からニューサウスウェールズ州のガイドラインについて報告した。
 Smith氏によれば,初期管理の原則としては,その病変の性質や重症度の早期の調査,罹患部位に対する適切な処置,患者の正確なヒストリーや健康状態,ライフスタイルなど発症前の状態を調査などが挙げられる。患者は,初期においてクオリティの高い,適切で集中的なマネジメントを受ける必要があるのはもちろんだが,同時にこれらは費用効果の高いものでなければならない。

早期離床,早期の社会復帰とSlow Stream Rehabilitation Unit

 また,現在リハビリテーションユニットでは,機能回復に時間をかけ過ぎるという問題が生じている。入院期間が長期化する傾向にあり,その結果,患者の依存度が不必要に高まってしまうからである。さらに,外部のネットワークを喪失してしまうという問題も生じる。長期間施設に入っていると,機能的な回復は図れても,外部との関係が断たれることによって,社会復帰が難しくなる場合もある。
 リハビリテーションのプランニングに関しては,ニューサウスウェールズ州では早期の集中治療は2週間から3週間で帰宅させ,コミュニティーの管理に委ねる。コミュニティーの役割に関して,世界各国で各種の調査が行なわれているが,ほとんどの調査で「患者の自己に対する尊厳への期待」,また「社会復帰への期待」が挙げられている。このことからも,早期離床とともに早期の社会復帰の重要性を強調。
 またSmith氏は,トリアージに関して,すべての患者がフォーマルなリハビリテーションプログラムを受ける必要がないことを指摘し,「Slow Stream Rehabilitation Unit」の例を紹介した。

Repeated Standing up &Walking Exercise with KAFO

 最後に越智文雄氏(防衛医大)は,「急性期の脳卒中のリハビリテーションにおける長下肢装具(KAFO;Knee-Ankle-Foot Orthosis)を用いた反復立ち上がり練習(Repeated Standing up & Walking Exercise with KAFO in Acute Stroke Rehabilitation)」という興味深いテーマを発表した。


国際的な流れの中でコメディカル職種が議論

 開催3日目のIRMA VIIIでは国際OTシンポジウムやSTによるシンポジウム,講演等が行なわれ,多くのコメディカル職種が参加しての国際学会となった。

国際OTシンポジウム

 国際OTシンポジウムでは,午前中に国際OT連盟副会長のN.Vytialingam氏(マレーシア)の他,M.Evert氏(Washington大/米国),寺山久美子氏(日本作業療法士会長)による基調講演,午後には,その講演者に加えて,M.Ellis氏(West Square Associates/英国),Khomarun氏(Academy of OT Surakarta/インドネシア),P. Bontje氏(高知リハビリテーション学院),N.L.Johnson氏(広島大)を迎えたシンポジウム(座長:Evert氏,札幌医大 佐藤剛氏)が行なわれ,各国の医療・福祉の動向や作業療法の到達点が示され,広く医療,福祉のあり方全体についての意見交換がなされた。

記憶,嚥下障害などSTが議論

 STによる演題では『記憶障害患者のリハビリテーション』(医学書院刊)の著者として知られるB.A.Wilson氏(Medical Reserch Council/英国)や『脳卒中:患者と家族指導のための225の質問と答』(医学書院刊)を著したJ. E. Sarno氏(Howard A. Rusk Inst. of Rehabilitation Medicine/米国)らによる講演,シンポジウムなど6題の演題が企画され,記憶障害,嚥下障害などのテーマを中心に専門領域ごとに活発な討論が行なわれた。
 Ellis氏やWilson氏,Sarano氏など海外からの演者は,学会後も東京等で関連領域のセミナーや研究会に招かれ,コメディカル分野においても海外のエキスパートから刺激を得る多くの機会がもたれた。

 

マネージドケアの時代におけるリハ専門職の役割

 同3日目には,J.L.Melvin氏(Temple大/米国)が「リハビリテーションにおける組織的臨床マネージメントシステム」(座長=慶大 千野直一氏)を講演。
 「医療費がGNPの14%に達している米国においては,資源は有限であるとの考え方からマネージドケアが発達した。医療費の支払い側(主に民間の保険会社)は医療提供者に標準化されたケアを提供させることにより,コストコントロールを行なう」と米国の医療制度の仕組みを紹介し,「高額な医療へのアクセスは制限され,リハビリテーション(以下,リハビリ)医療の提供も抑制される傾向にある。医療関係者は患者にとって必要なサービスであると判断しても,支払い側がその必要を認めない場合もあり,安全な状態になる前に退院させなければならないこともあり得る」とし,「意思決定(例えば入所施設の選択)が患者のニーズではなく,支払い側のニーズで決まってしまう」現状に憂慮を表明した。「支払い側にはロジックがなく,ニーズを十分に満たさないにもかかわらず,安価であるというだけの理由でサービスが決定されてしまう事態が,よりお金のかかる状況を生み出している」と指摘し,「臨床的な視点からの意思決定,判断,コントロールの必要性」を強調した。
 保険の支払方式が複雑になってきていることに加え,リハビリが提供される場も施設から地域へと大きく広がったため,資源 の地域間格差,専門家の各地域ごとの分断が生じ,提供されるサービスが保険の支払い側や地方政府,あるいは専門家の考え方によって恣意的に決まってしまっている状況にも触れ「リハビリがなさなければならないこと,その価値観を示し,システムを組織化することによってその価値を実証しなければならない。そしてその実現された価値に基づきコストを試算し,資源の適切な配分を行なっていくことが,政府,支払い側,我々リハビリの提供者に課せられた責任である」と指摘し,「臨床マネージメントシステム」構築の必要性を示した。その重要な要素は,「(1)共通の特徴を持つ患者集団に分類するシステム,(2)分類された患者集団に対する最適な臨床的プロトコールの作成,(3)規則的に観察された患者の状態や行なわれた介入などの情報を集積したデータベース,(4)必要とされる資源の予測,(5)経過,結果を評価しフィードバックすることである」とし,臨床的な視点から,マネージドケアの時代にいかに良質で効率的なリハビリを提供していくかという課題に対し示唆を与えた。