医学界新聞

生活と援助をめぐる問題を論議

第33回看護リフレッシャーコース開催


 日本私立看護大学協会が主催する,第33回看護リフレッシャーコース(当番=北海道医療福祉大学看護福祉学部)が,さる6月19-20日の両日,札幌市のかでる2.7において,「生活と援助をめぐる問題の学際性」をテーマに開催された。
 今回のリフレッシャーコースでは,日野原重明氏(日本私立看護大学協会長)の講演「生活習慣病への行動科学的アプローチ」をはじめ,「看護学の問題を探究する学問の土台」(日赤看護大学長 樋口康子氏),「感染症」(北海道医療福祉大教授 大里外譽郎氏),「生活とセルフケア」(北海道医療福祉大教授 高田早苗氏)の講演の他,音楽療法体験「日常生活と音楽療法」(北海道医療福祉大教授 栗林文雄氏),シンポジウム(1)専門的立場からみたこれからの高齢者ケア(座長=北海道医療福祉大教授深山智代氏),(2)治療の場における生活と援助(座長=北海道医療福祉大教授 阿保順子氏)が行なわれた。

看護科学の確立を

 樋口康子氏は,「看護学は,1950年以降に発展してきたまだ浅い学問であり,これからのものと認識する必要がある」との前提で講演。日本における看護学の発展を,看護大学の設立の経過と実態から解説し,「看護大学・短大が全国に急速に増えつつあるが,253名の看護学修士と43名の看護学博士しか育っていない。この人たちは20年後の看護界の研究者であり,看護学はまだ体系化できていない学問といえる」と述べた。また,「“看護とはなに?”の哲学としてとらえ,医学とどう違うのかを,現象を押さえながら実証していく科学である」と定義づけ,「看護者は,看護哲学に基づいた患者の価値観を大いに主張すべき」と提言。さらに「今教えている看護は,10年後には役立たなくなる。学生が自主的に看護を調べることが重要」と述べ,「看護科学の確立」の必要性を訴えた。

さまざまな視点からのケアを論議

 シンポジウム(2)では阿保順子氏の司会のもと,「がん看護の視点から」(東札幌病院副看護部長 濱口恵子),「失禁看護の視点から」(日本コンチネンス協会長 西村かおる),「急性期看護の視点から」(市立札幌病院看護担当課長 垰まゆみ),「看護管理の視点から」(北海道医療福祉大教授 河野總子)の4氏が生活と援助について意見を述べ,ディスカッションがなされた。
 濱口氏は疼痛緩和に焦点をあて口演。「痛みがとれて人間に戻れました」との患者の声を紹介し,疼痛緩和の効果について(1)関心の拡大,(2)不眠の苦痛緩和,(3)食事量の増加,(4)行動範囲拡大,(5)精神安定,(6)人間関係の回復をあげ,これらの症状の緩和には看護婦の実践が鍵となることを述べた。またインフォームドコンセントについて,「医師と患者間ではなく,医療チーム全体と患者の間で行なわれるもの」とし,情報の共有,患者の意志決定には医療チームの支えが重要との見解を示した。
 西村氏には,「失禁とは,無意識また不随意な漏れが衛生的あるい社会的に問題になった時」とのICS(国際禁制学会)の定義を紹介。(1)機能障害,(2)能力障害,(3)社会的不利による疾患であることを述べる一方,「失禁で死ぬ人はいない。尊厳が問題」とし,「下の世話という感覚ではなく,尊厳を守ること,仕方がないではなくあきらめない態度,完治できないことをきちんと伝えること」が排泄ケアには重要な要素であると指摘した。
 垰氏は,手術を受ける患者の援助に焦点をあて意見を述べた。「外科治療の中心が手術であるが,日常生活行動に制限をきたす患者をどう受け入れるかが課題。術前と術後回復期では援助内容も変わってくる」と,その心理的ケアの必要性も強調。また「患者に対して十分なケアができないのは看護婦の数が少ないため」と,これからの望ましい看護体制などについても触れた。
 河野氏は,看護管理者の役割として「(1)療養環境の整備,(2)質の高い看護援助を提供できる看護スタッフの育成,(3)看護マンパワーの確保,(4)看護婦がベッドサイドに集中できるためのシステム開発,(5)看護サービス提供についての基本理念と目標の明確化,(6)看護組織づくり,(7)看護提供体制の整備,(8)質の高い看護を実現しようとする時に,他の医療人との間に起こる問題を上手に処理するためのイニシアティブをとること」をあげた。
 なお総合討論の場では,患者の患者計画や看護管理,看護のメニューを提示できるかなどについての論議が深められた。
 看護職のリフレッシュを目的に行なわれている「看護リフレッシャーコース」。次回(第34回)は,国際医療福祉大学が当番校となり,きたる11月1-2日の両日,同大学内で開催される。