医学界新聞

●移植片でのFasリガンド発現が拒絶反応を増強

 FasとFasリガンド(FasL)の相互作用は免疫系のB細胞およびT細胞の調節に重要なことがわかっている。FasLがFasを持つ活性化T細胞と結合するとアポトーシスを引き起こす。Fas/FasLは,数種の組織で移植片拒絶反応を防御すると考えられている。
 しかし,カリフォルニア大学サンフランシスコ校のS.M.Kangたちは,移植膵島細胞でのFasL発現は島移植片への拒絶反応を増強させるという驚くべき発見を報告している。組み換えアデノウイルスベクターを用いてFasL遺伝子をC3Hマウスの膵島細胞へ移入し,これを糖尿病B6マウスの腎被膜下へ移植したところ,急激な拒絶反応が起こった。免疫不全マウスでの膵島同種移植片も急激な拒絶反応を起こしたことから,これはTおよびB細胞に依存しないFasL介在性の効果である。さらに,拒絶反応の増強には宿主組織でのFas発現が必要なことも示された。

●変異型プレセニリン1とアルツハイマー病

 アルツハイマー病(AD)の一部症例は家族性であり,これはプレセニリン(PS)というタンパク質の変異によると考えられている。しかし,他のAD症例はPSの変異が原因ではなく,ほとんどのAD症例は散発性である。
 ジョンズ・ホプキンス大学のM.K.Leeたちは,今回,遺伝子操作によりマウスに変異PS1を発現させた。そして,PS1の分解産物である2つの誘導体の蓄積が,変異型PS1では正常型PS1に比べてはるかに多くなることを示した。これは,ADに関連するPS1は,分解された後,正常なPSタンパク質と異なる処理を受けることを示している。AD解明への道のりは長いが,この成果は小さいながらも有用な一歩である。

“nature medicine”July1997より