医学界新聞

1997 医師国家試験合格者体験記 


産婦人科・小児科を得点源に
佐谷 健一郎(東京医科大卒)

 4月18日の運命の日。私は自分の番号を確認するために,30分も前から厚生省の講堂で合格者発表を待っていた。その30分間はいつもの10倍にも20倍にも感じられる。同級生の「落ちていたらどうしよう。自信ないよ」という言葉が胸に突き刺さる。
 私は「大丈夫さ,自分なりにできることは全てやったんだから。」と心のなかで自分に強く言い聞かせながら,自分が今までやってきた勉強を思い出していた。

勉強会:とにかく予習

 私が国家試験の勉強を始めたのは6年生になった4月。1人で自分に厳しく勉強する自信がなかったため,とりあえず気の合う仲間と勉強会を結成した。しかし,私の大学では7月いっぱいまでポリクリがあったため,全員が揃うということは少なかった。それでも夏休み中に内科・外科を終わらせることを目標に,週1-2回集まった。
 勉強会では国試既出問題集である『アプローチ』を1人10-15問ずつ割り当て,1日60-70問くらいのペースで解いた。ここで後輩のみなさんに一言。一般問題まで勉強会で解いていると確実に時間がなくなるので,一般問題は各自で解いたほうがよい。また,自分の割り当てられた問題だけ予習するのではなく,他の人の割り当ての問題も予習しておくこと。時間的にきついかもしれないが,予習をしておいて解説を聞いたほうが確実に頭に残るものだ。

夏休み後:得点源をつくる

 何とか夏休みいっぱいをかけて内科と外科を終わらせ,産婦人科,小児科に取りかかった。後輩のみなさんの中には,産婦人科,小児科は嫌い(苦手)という人も多いかと思う。しかし,小児科に関しては成長,発達以外のところは内科や外科の知識で十分対応できる。また産婦人科も,国試ではひねった問題が出ることは少なく,毎年同じような問題が出るので,基本を一通り理解すれば大丈夫だと思う。この2つはひたすら『アプローチ』を繰り返し解き,じっくり勉強すれば,国試の中で1番の得点源になると思う。
 産婦人科,小児科が終わった頃,大学の卒業試験1か月前になっていた。卒業試験は国試とは少し性質が異なる。とりあえず卒業できなければ元も子もないので,卒業試験が終わるまでは国試の勉強はひとまず中断し,卒業試験の勉強を中心にしたほうがよいと思う。
 どうにか卒業試験をクリアし,年が明けると,今度はマイナー,公衆衛生に取りかかる。今回の国試から新基準が採用されたので,マイナー教科も捨てることができなくなってしまった。とはいっても全部を完璧にこなすことは不可能なので,広く浅く,4割得点できる程度に勉強した。公衆衛生に関しては国試直前1か月前から既出問題集を1回通して解き,重要な所はひたすら暗記した。
 これで,時間的にかなりきつくはあったが,国試に向けての勉強は一通り終わった。

再び4月18日

 ついにその時はきた。厚生省の係の人の合図とともに台帳をめくる音が会場に響く。そして私の番……。あった,合格したのだ。全身にしびれが走り,思わずガッツポーズが出た。正直,かなりうれしい。しかし,最初の興奮が去るにつれこれはスタートでしかないことに気づき,医師という職業の責任の重さを噛みしめていくのであった。


勉強会でプレッシャーを乗り切る
田辺 康宏(自治医科大卒)

 私の勉強法は実にのんびりとしていて,とても誉められたものではありませんでした。例えば,過去問などは大部分の人が国試までに一通りはやり,人によっては2回も3回も繰り返しやるものなのですが,私の場合は外科と小児科の臨床問題には手をつけないまま国試の日を迎えてしまいました。
 その分,模試を2回受けて,しっかりと見直すようにはしていましたが,国試を受けるまではとても不安でした。こんな勉強法はとても人に勧められたものではありません。

勉強会のすすめ

 こんな私でも,みなさんに自信を持ってお薦めできるのは,勉強会を組むことです。私の大学は全寮制ということもあり,結束力が強く,ほとんどの人がどこかの勉強会に参加していました。中には自然消滅してしまったところや,あまりうまくいかず,かえってストレスが溜まってしまうような勉強会もあったようですが,私たちのところはうまくいきました。
 勉強会の成否は構成メンバーにかかっています。私たちは6人の勉強会でしたが,その中心にいたのが「仕切り屋」のT君でした。彼はしっかり者で,勉強会の学習計画だけでなく,飲み会,旅行,はてはソフトボールに至るまですべてを計画してくれました。また,勉強中に騒いでいたり,怠けたりしていると時に叱ってくれたりもする,まるで父のような存在でした。T君は私たちの勉強会にはなくてはならない存在でした。しかし,もし彼のような人がもう1人いたら,その2人が衝突してうまくいかなかったと思います。
 T君以外のメンバーもそれぞれ個性的で,かなり勉強する者からほとんど勉強しない者(私のことではありません,念のため)までさまざまでしたが,それぞれの個性がうまくかみ合って,けっこう楽しく勉強することができました。

プレッシャーを乗り切る

 私たちの勉強会は5年生の終わり頃から始まったのですが,最初のうちは各自が問題を受け持って予習をし,集まった時に解説しあうという形でやっていました。しかし6年生になり,全日制のBST(ベッドサイド)が始まると,メンバー全員が揃うのが難しくなり,勉強会といってもただ集まって各々が違うことをやっているという状態でした。
 それでも国試までの抑圧され,ストレスとプレッシャーの強い灰色の1年間を,押しつぶされることなく乗り切ってこられたのは,勉強会のメンバーと共感しながら少しでも楽しさを見つけようという姿勢で過ごすことができたおかげだと思います。