医学界新聞

●有望なHIV-1ワクチン併用法

 多数の研究グループがチンパンジーでヒト免疫不全ウイルス1型(HIV-1)ワクチンを試験しているが,十分な成果は得られておらず,また防御を得られたのは何度もワクチンを接種し,その直後(つまり防御免疫応答のピーク時)に低用量のHIV-1を投与した場合だった。しかし,米国にあるワイエス・エアースト・リサーチ他のM.D.Lubeckたちは,今回チンパンジーへのわずか3回のワクチン接種で高用量のHIV-1に対する長期防御が得られたと報告している。追加抗原を使わずに接種後1年を過ごし,その後,高用量HIV-1を投与したが防御された。成功の秘訣は,HIV-1のgp160タンパク質を発現するアデノウイルスによる免疫化と,その後gp120タンパク質を発現する追加抗原の投与とを併用した点にあるらしい。
 このワクチン併用法は,おそらく現在までのところ最も有望なものである。     

●脳の電気刺激でパーキンソン病が緩和

 パーキンソン病は動作の固縮と振戦が特徴である。過去の研究から,同病患者の脳の淡蒼球が過剰に活動して,動作開始に関与する脳領域の活性化を抑制することが示唆されている。この仮定に基づいて,トロント大学のK.D.Davisたちは,淡蒼球の活動を途絶させるため,高周波の電気刺激の使用を試みた。パーキンソン病患者の脳に電極を植え込み,淡蒼球へ電気刺激を送った。陽電子放射断層撮影法(PET)により,同治療は患者の皮質運動野の活動を増大させ,その結果,明らかに運動能が向上することが示された。
 この研究は,淡蒼球の電気刺激がパーキンソン病の非破壊的かつ可逆的な威力ある治療法となることを示唆している。

“nature medicine” June 1997より