医学界新聞

1997 医師国家試験合格者体験記


基本的な線をはずさず「普通」のことを

菊池 妙子(長崎大卒)

 国家試験の前日まで「悪夢」にうなされてとび起きる日が続き,一体どうなるのだろうかと不安だったが,なんとか無事に合格することができた。ホッと胸をなでおろすとともに,今はもうはるか昔(?)のような気がする国家試験前の日々を振り返ってみたいと思う。
 私にとって勉強の「三本柱」となったのは「勉強会」「病院実習」「模擬試験・卒業試験」だったと思う。以下,順に述べていくことにする。

勉強会

 まず「勉強会」は周囲が動き始める5年生の秋頃から友人5人で始めた。
 ここでは過去問を臨床問題中心に解いていき,疑問点や理解できない問題を,お互いに知恵をふりしぼって考えたり,先生へ直接質問に行ったりした(グループだと行きやすい)。特に病態生理など1人で勉強するとつまらなく感じるものも,みんなでワイワイやると楽しくもあり,記憶にも残りやすかった。
 また,5人それぞれが異なる友人から聞いたことを教え合ったりして,情報交換の場となり,さまざまな情報を得ることができた。これはグループならではのことだろうと思う。
 このメンバーとは,勉強会を解散した後も,顔を合わせるたびに「調子はどう,どこまで進んでる?」と互いに声をかけ合ったりしてよい励みになった。

病院実習

 次に「病院実習」だが,これは講義ではそれなりにヤマを指摘してくれるし,特によく国家試験を研究(?)している先生方のものは絶対聞いて損することはないと思う。
 また実習や検査,手術の見学などは,しばしば長時間で退屈(?)なものもあるが,器具や手技など一応頭に入れておくと後でヒョッコリ問題に出てきたりして役立つことも少なくなかった。それだけでなく,先生方のちょっとした雑談が実は最新のトピックスであったりと,得るものは大きかった。 
 この期間は,各科の専門の先生方と直接話ができ,質問なども自由にできるまたとない機会でもある。勉強のことのみならず,将来のことや,その他いろいろなことを知るためにも,フル活用すべきではないだろうか。

模擬試験・卒業試験

 最後に「模擬試験・卒業試験」についてだが,私は模試は5回受験した。これは自分の苦手な分野や勉強不足の分野が客観的にわかり,学習の計画を立てる上でのひとつの目安となった。それに少しずつでも進歩していくのが目に見える形でわかればやる気にもつながっていく。各自の考え方があると思うが,私はとにかく受けてみる価値はあるだろうと思う。
 とは言っても見直しが不十分であり,その点は反省している。きちんと見直しをしたのは本番直前の2回(割合に的がしぼており,良問も多いといわれているため)だけで,残りはその日のうちにざっと解説書に目を通し,まったく理解不能なものだけページの端を折って印をつけていた。そして直前にそこだけもう1度目を通した。
 卒業試験については,各科まず対応する国家試験の過去問をざっと解き,それから卒業試験の過去問や講義ノートの見直しなどの純粋な(?)勉強に取りかかった。両方の試験のヤマはそう大きくはずれることもないので理解しやすく,並行してやっているという自己満足的な安心感がなによりだった。
 以上,思いつくままに書いてきたが,結局なにか「特別」なことをやったのではなく,みんなが「普通」にやってることを同じようにやってきたように思う。
 勉強会を開き友人と情報交換を行ない,過去問を中心に,傾向と対策の情報をキャッチして……など基本的な線を大きくはずれるようなことがなければ大丈夫だと思う。
 国家試験の準備は,一言でいうならば「長期戦」である。途中どうしてもイヤになったり,あきらめかけたりもする。そういう時には気分転換が大切で,友人と遊びに出かけたり,クラブの後輩の所に顔を出したり,自分の趣味に興じたり,と何かをすることがあると幸せ(?)を感じてしまう。これは長期戦の前にどんな学生生活を送ってきたかにも大いに関係してくるのではないかと思う(少しオーバーかもしれないが)。
 長期戦がまだ遠い将来と感じているヒトも,長期戦の真っ只中にいるヒトも,この日々の生活を充実したものにしよう!ときれいにまとめてペンを置くことにする。


まず原理を理解すること

高口 善信(琉球大卒)

 私の大学では,5年生の始めから6年生の6月にかけて臨床実習が行なわれます。夏休みがあけると1回目の総合試験があります。これは本番の国家試験と同じ形式で行なわれるものですが,問題数を少し減らしています。次いで12月までの間は卒業試験はマイナーが週2回,メジャーが週1回(内科,外科は臓器別)のスケジュールです。冬休みあけには2回目の総合試験が行なわれ,これで大学の試験は終了します。残り2か月間は国家試験への準備期間となります。

自分で学ぶ姿勢を

 さて,私が国家試験を意識し始めたのは,5年生の4月でした。この時期は臨床実習が始まり,自分で学ぶ姿勢が求められるようになった時期でもありました。そのため,何か勉強しようと思っていたところ,同じクラブの友人からの誘いもあって勉強会を始めました。教材には国家試験の臨床問題を選びました。病態生理に重点を置き,互いに質問し,臨床実習で学んだ関連事項を教え合いました。この勉強会のおかげで内科,中でも特に内分泌と循環器に対する苦手意識がなくなりました。
 臨床実習中は画像診断を意識的に勉強しました。日本医師会が発行している生涯教育シリーズなどを参考に,臨床問題の画像が理解できることを目標にしました。またマイナー科目に関しては,実習期間中に一般問題を解きました。
 これは国家試験とは直接関係がありませんが,各科ごとに哲学というかこだわりが必ず存在するので,実習を通してそれを理解するように努めてください。きっと進路の選択や将来他科との連携を深めるうえで役に立つと思います。また実習の班で,それぞれが学んだことを伝え合うのも効率的なのでお勧めします。
 夏休みは,クラブの合宿や実習に参加したため,内科,外科を終えるだけで精一杯でした。

あせらず,考えすぎず

 私の大学の卒業試験は臓器別で,内容はやや難しいものの国家試験を意識しています。そのため国家試験より少し突っこんだ勉強ができました。今振り返ってみると,そのことが,傾向が少し変わった今回の国家試験に大変役立ったようです。
 冬休みは公衆衛生を勉強しました。これは問題集中心の勉強で十分でした。その後,国家試験までの2か月間は,苦手としていた内科・外科の一般問題と,模試や国家試験の対策本を利用しての必修・禁忌問題対策などを行ないました。マイナー科目は直前に1週間ほどかけてざっと見直し,小児科,産婦人科も同様に見直しました。
 直前のこの時期は,私を含めあせって勉強が手につかない人が結構いました。何を優先して勉強すべきか悩むでしょうが,悩むより少しでも勉強するほうが得策だと思います。
 国家試験当日は模擬試験で時間的に余裕があるとわかっていましたので,あせらず,考えすぎず,疲れて思考力を落とさないように心がけました。
 国家試験の内容で印象に残ったことは,A64眼科診察,E35誤嚥,F38変形性膝関節症の治療といった臨床実習を通してしか学べない内容や,A問題で解剖や生理といった基礎分野からの出題が増えたということです。
 また必修問題は基本的とはいえ,かなり範囲が広く,対策が立てにくいと感じました。したがって,なるべく早いうちから国家試験を意識し,できるだけ多くのことを見て,聞き,学ぶこと,そして暗記も必要です。応用がきくように原理を理解することが大切だと思います。
 最後に自分自身の経験を通して,これが一番参考になると思いますので記しておきます。「よき友人を持つことが合格の近道である」と。