医学界新聞

聖ルカ・ライフサイエンス研究所

医療情報の効率化に関する研究会開催


 昨年11月に設立された聖ルカ・ライフサイエンス研究所(理事長=聖路加国際病院 日野原重明氏)の主催による「医療情報の効率化に関する研究会」が,さる3月7日に,聖路加看護大学において,「日本の現在の診療録,看護記録,その他をどのように変えるべきか」をテーマに開催。8人のパネリストがそれぞれの視点から診療録,看護記録などの効率化について語った。
 理事長の日野原氏の挨拶の後,中木高夫氏(名大医療技術短大)が,アメリカにおける最近の診療録ならびに看護記録の動向を概説。続いて吉原博幸氏(宮崎医大)が登壇し,カルテの電子化への取り組みを紹介。その問題点や,将来の展望などを明らかにした。また岩井郁子氏(聖路加看護大)は,看護記録の記録方法に言及。POS(問題志向型システム)とフォーカス・チャーティングの2つのシステムの概念,特徴,問題点などを解説した。
 武田祐子氏(筑波大附属病院)は,本来患者中心の医療を行なう手段であったはずの診療録を書くという行為自体が1つの目的となりつつあることを指摘。「診療録とは誰のもので,誰のためにあるのか,また診療録を記載することの意義とはいったい何かということを,もっと理解すべきである」と語った。
 続く長浜幸子氏(昭和大藤が丘病院)と井上忠夫氏(聖路加国際病院)は,それぞれ栄養士,薬剤師の立場から発言。POSを導入することによって,チーム医療にその一端を担う専門家として参加し,患者中心の質の高い医療を実現していくことに強い意欲を示した。中村めぐみ氏(聖路加国際病院)は,実際の看護の現場におけるPOSに基づいた看護記録の現状について語り,POS導入によって生じた新たな問題と,それに対応するさらなる改革への取り組みを紹介した。
 最後に笹鹿美帆子氏(東京都済生会中央病院)が発言。看護記録の効率的な標準化の手段の1つとして,クリティカル・パスを紹介し,質の高い医療への新たな方向性を示し,研究会の幕を閉じた。
 なお同研究所では,第2回の医療の情報化に関する研究会の開催を5月31日に予定している。