医学界新聞

連載 ― WHAT'S COOL IN TECH AND MEDICINE

最新テクノロジーのトピックス

永田 啓(滋賀医科大学眼科・医学情報センター)

[5]ゲームマシン? コンピュータ?


なんだかすごいゲーム機たち

 最近話題の「ファイナルファンタジーVII」,どこまで進みましたか?コンビニでの販売や,発売数日で200万本を売ったなどと,話題にこと欠かないファイナルファンタジーですが,どうしてこんなに流行っているんでしょうか。映画のような手法や3次元フルコンピュータグラフィックス,それと1年間をかけた事前のCMやテレビCFも効いていると思ます。
 ちなみに,ご存じない方のために。「ファイナルファンタジー」は,「ドラゴンクエスト」とならぶ,ゲーム機用のロールプレイングゲームで,最初は任天堂のファミコン用ソフトとして発売され,そしてシリーズ化。その後スーパーファミコン用になり,今回のVIIから,ソニーのプレイステーション用になりました。プレイステーションは現在,各地で品切れ状態が続いています。ゲーム業界では,いかにソフトが主導権を握っているかが,よくわかります。
 97年初頭のゲーム機の現状は,32ビット以上のCPUを搭載したマシンの三つ巴の状態です。32ビットは,ソニーのプレイステーションとセガのサターン,それといち早く64ビットを投入した任天堂のNINTENDO64。これらのマシンで使われているCPUは,いずれもRISCの高速CPU(従来のCISCと違い,CPUの命令を単純化して,処理スピードをあげたCPU)で,ひところのワークステーションに匹敵するレベルのものです。それが数万円とは……。プレイステーションとセガのサターンはCD-ROMを使っています。NINTENDO64はファミコンやスーパーファミコンと同じゲームカートリッジ(通称ゲームカセット)方式です。

コンピュータとゲーム機,何が違う

 最近は,ゲーム機やテレビでインターネットが使えたり,パソコンでテレビを見ることができたりします。では,コンピュータとゲーム機は何が違うのでしょうか。ワープロもゲーム機も根本的にはコンピュータです。普通のパソコンがプログラムによってさまざまな働きをするのにくらべて,ワープロやゲーム機は機能を特化したコンピュータといっていいでしょう。
 図1がゲーム機とパーソナルコンピュータの比較図です。ゲーム機によっては,これよりコンピュータに近いものもあります。

入力部分

 まず,コンピュータに指示をあたえる入力の部分。コンピュータは入力にキーボードとマウスを使うのが普通です。ゲーム機では,コントローラー(図2)を使います。現在のコントローラーには,いろいろな種類がありますが,ボタンがいくつかついたものが標準型です。これは,任天堂のファミコンのボタン配列がベースになっています。
 ファミコンが大量に一般家庭に普及したので,ずいぶん多くの人がこのコントローラーに慣れ親しみました。このため,この方式を踏襲すれば,ゲーム機が変わっても,それほど大幅な変更がないため,違和感が少なくゲームに集中できるわけです。ゲーム機のコントローラーは,コンピュータの入力方式におけるヒューマンインターフェースの1つとしての地位を確立したといえるでしょう。
 しかし,ゲーム機は,いつも新しいインターフェースを模索しています,NINTENDO64のアナログスティックなど,次世代の標準になるかもしれません。現在主流のゲーム機は,どれでも入力部分がコネクター方式になっていて,ドライブゲーム用のハンドルとアクセル・ブレーキのセットのように,標準のコントローラー以外にいろいろな入力インターフェースが接続できるように作られています。もう少しすると,視線によるコントロールや音声認識,脳波によるトリガーなどの新しいインターフェースが搭載されるかもしれません。

表示部分

 表示は,コンピュータでは,グラフィックコントローラーやグラフィックボードを使って,RGBディスプレイ(コンピュータ専用に普通のテレビよりも細かい表示ができるディスプレイで,Red,Green,Blueの3原色で色を表す)に表示するのが普通です。ちょっと前のパソコンは13インチのディスプレイに640×480ドット,1ドットあたり8ビット=256色表示というのが普通でしたが,最近のパソコンでは,800×600ドットや1024×768ドットなど,同じサイズの画面により細かい表示ができるようになっています。1ドットあたりも1670万色まで表示できるものが普通になりました。
 ゲーム機は,専用のRGBディスプレイを使うのではなく,家庭用のテレビ画面を使うので,解像度はそれによって限定されます。だいたいは,テレビの走査線の問題で512×384ドット程度が普通で,色の深さも256色から32000色程度です。でも,ゲーム機用のグラフィックチップはゲームに特化したものや,3次元表示の高速化をはかったものなど,かなり力の入っている部分なので,標準のパソコンを上回る能力をもっているのが普通になっています。もう少しすると,バーチャルリアリティーのHMD(ヘッドマウントディスプレイ)などがあたりまえに使われるようになるかもしれません。

CPUとメモリー

 パソコンのCPUは最近ではWindows系のIntelのPentium ProやMMX,Mac系のPower PCなど高速CPUが普通で,内蔵RAMすなわちメモリーも16MBから32MBが普通です。
 ゲーム機の場合は専用のCPUを使うことが多く,ワークステーションレベルのRI SCプロセッサーが主流です。メモリーも次第にパソコンレベルに追いついてきています。

外部記憶装置

 パソコンの場合は,フロッピーからはじまってハードディスクにMO,CD-ROM,CD-R,DVD-ROMなど,さまざまな外部記憶装置があります。一般に,書き込みができる外部記憶装置と,CD-ROMのように読み出し専用の外部記録装置が標準で装備されています。
 ゲーム機の場合は,ゲームを供給するメディアとして,CD-ROMや専用カートリッジが使われます。いずれにしても,読み出し専用の外部記憶装置です。最近は,何百メガという大容量のデータを使えるので,広大な空間や時間を持つRPGや映画のような3Dアニメーションが実現できるようになりました。その他にゲームの途中経過のデータなどを保存しておくために,容量の小さいRAMカセットやゲームカートリッジの中に不揮発RAM(コンピュータの電源を切っても中身が消えないRAM。普通のRAMのように内容を書き換えることができる)が少し入っている形で書き込み可能な外部記憶装置を使います。

これからのゲーム機

 このように,現在のゲーム機はメディアプレイヤーとして,十分なCPU性能を持ち,外部記憶容量を手に入れています。通信環境もインターネットへの高速接続が可能です。今後,グラフィックチップの性能向上やDVD-ROMなどの導入によるギガ単位のデータ容量,さまざまな使いやすいユーザーインタフェース,光ファイバー網への接続による超高速通信などが実現されれば,自然な形で家庭と社会をつなぐメディアとしての実用性は抜群です。さて,あなたならこうしたメディアを医療にどのように使いますか?