医学界新聞

「准看護婦制度廃止後の准看護婦」をテーマに

第5回全国准看護婦・准看護士看護研究会が開催される

早川市子(太田共立病院)


 さる1月25-26日の両日,第5回全国准看護婦・准看護士看護研究会が,中島幸江会長(名大病院)のもと,222名の参加者を得て,熊本県の阿蘇プリンスホテルにおいて開催された。
 昨年12月20日に,厚生省の准看護婦問題調査検討会は「21世紀初頭の早い段階をめどに看護婦養成制度の統合に努めることを提言する」という内容の報告書を提出。本研究会が,准看護婦の立場で自ら主張する「准看護婦制度の廃止」に向け,ようやく実現への可能性が見出されたとも言える。今研究会のテーマはまさに時宜を得た「准看護婦制度廃止後の准看護婦」。同研究会では,関心が高まる准看護婦から看護婦への移行措置についての意見交換や討論が,研究発表とともに行なわれた。

准看検討会報告書への見解を発表

 初日に行なわれた総会では,まず瀧眞知子事務局長が基調報告を行なったが,その中で瀧氏は「厚生省准看護婦問題調査検討会報告書」に関する本研究会としての見解を発表。「30年来微動だにしなかった,いわゆる准看護婦問題を一歩踏み出させ,改善すべき問題を明記したこと。また,准看護婦・准看護士から看護婦・看護士への移行について基本的な考え方を示したことは高く評価できる」と述べるとともに,政府に対しては「准看護婦養成停止,看護婦養成制度のあり方(仮称)」検討会の設置を要求,さらに,会としても早急に移行措置についての意見集約に取り組み,准看護婦・准看護士自身が自信を持って看護婦・看護士に移行できる手立てを見出したいとの主旨を語った。
 続いて,中島幸江会長は同報告書の解説を行ない,当面の課題を提示。本年1月から3月にかけて,研究会および会員が取り組むべき具体的な課題を提起した。

事例発表に意欲ある討議が

 パネルディスカッション「准看護婦制度廃止後の准看護婦(パートII)」では,水俣病患者の会から正山トメ氏,准看護婦の立場からは上田時子氏(国立療養所長良病院)が,また日本医療労働者組合連合会からは桂木誠志氏がパネラーとして登壇。それぞれの立場からの意見を述べるとともに,人権を守り国民の求める看護を提供するために果たす,准看護婦制度廃止後の准看護婦の役割について討論した。
 また,2日目に行なわれた看護事例検討会では,助言者として横溝洋子氏(健和会大手町病院健和看護学院教務部長),松浦恵野氏(福岡県立太宰府病院総看護長),林千冬氏(群馬大医療短大部助教授)の3氏が参加。テーマごとに3会場に分かれての発表が行なわれた。
 この日発表された事例は,(1)重症心身障害者病棟で花作りの共同作業としての取り組み(国療長良病院 良原節子氏),(2)父親の育児参加を考え沐浴指導を実施してみて(大阪府羽曳野病院 岡田美代子氏),(3)人工骨頭置換術後患者の退院後の日常生活とADLの関係(水俣医療センター 前田ちづ子氏),(4)受入れ先のない重度難病患者の看護を通して学んだこと(熊本県水俣協立病院 坂本千恵子氏)などの他,7演題の発表があった。会場ではそれぞれの発表に対して質問や意見が活発にあり,よい看護を提供したい,新しい知識技術を身につけたいという意欲がうかがえた。

生きた人間への看護を

 さらに,今回の看護研究基礎講座には,山田信也氏(名大名誉教授,愛知県働く者の健康センター理事長)を迎え,「患者の人間としての存在をみつめ,その充実を求めて」と題する講演が開かれた。
 山田氏は,入院時の看護アナムネ用紙を参考に「診察室へは生きた人間がやってくるもの」と,データ主義となっている現在の看護,医療現場が,いかに一方的に患者を捕らえているかを証明。また,「人間の病気のなりたちには遺伝因子と生活因子がからみあう」と労働と疾病の関係について解説するとともに,「医療の場で予防の考え方を持つ」ことの重要性を主張した。
 さらに山田氏は,「世の中を知り,人生を知り,考えることは,看護婦としての基礎学習」と述べ,看護職にとっての生涯学習のヒントを提示し,研究課題の視点は随所にあることも強調。最後に,「人間尊重の思想に裏打ちされた社会,病気の予防と医療保障の充実が根底にあってこそよい医療と看護が保障される」と結んだ。
 なお,初日の夜に行なわれた5つの分散会では,参加者各人が准看問題検討会報告書について意見を述べあった。その中からは,准看護婦から看護婦への移行措置に関する問題,准看護婦が現場で抱えている問題など,1人ひとりの重みのある生の声が語られた。