医学界新聞

第11回日本がん看護学会が開催される

日本学術会議学術研究団体として登録受理


 第11回日本がん看護学会が,さる2月8-9日の両日,登坂有子会長(癌研病院統括部長)のもと,東京・池袋のサンシャインシティ文化会館で開催された。10周年を迎えた今学会のメインテーマは「あらためて今,がん看護に求められるもの」。全国から2日間にのべ2155名が参加し,研究発表などを通して熱心な意見交換が行なわれた。
 なお学会では98題の一般演題発表(うち示説発表28題)のほか,特別講演「日本におけるがん研究の歩み」(癌研名誉研究所長 菅野晴夫氏),10周年記念講演「日本がん看護学会10年の歩みと今後の課題」(同学会理事長,聖路加看護大教授 小島操子氏),およびシンポジウム「あらためて今,がん看護に求められるもの」(座長=ホスピスケア研究会代表 季羽倭文子氏)が行なわれた。


癌研究の歩みと学会の歩み

 特別講演で菅野氏は,日本における癌研究の歩みを,戦前から1951年までの第1期,以降死因第2位となった1981年までの第2期,また死因の1位となり国民病と位置づけられた現在まで,癌による死亡率から3期に分けて解説。第1期での先達の優れた研究業績が今日に生かされていること,第3期は遺伝子研究の時代と述べた。
 また,癌も遺伝子の異常による病気であることが明らかとなってきたことや,世界各国が共同で取り組んでいるヒトゲノム計画にも触れ,「2005年までには遺伝子からみた解明がされるだろう」など,スライドを多用しわかりやすく論じた。
 続いて小島理事長は,「設立10年目にあたる1996年は,5月に日本で初のがん専門看護師が誕生し,9月には日本学術会議の登録学術研究団体に認定された。また11月には,第34回日本癌治療学会において,初の合同シンポジウムが開かれるなど,記念すべき年となった」と報告。
 「1987年の発足時には400名程度にすぎなかった会員が,本年1月には2000名を越えた(1月末現在2055名)」と述べる一方,学会の今後の課題として,(1)認定看護師の分野の特定と申請,(2)国際がん看護学会の日本誘致,(3)学会誌の充実,(4)専門看護師と認定看護師の継続教育の場としての検討をあげた。この中の(1)に関し,会員は特定に必要な分野として,終末期ケア,癌性疼痛,骨髄移植ケア,癌化学療法の順にあげているのに対し,病院・施設では癌性疼痛が1位,終末期ケアは3位だったと報告。認定申請に向けての検討が必要と述べ,97年度中に申請をする意向を示した。さらに(2)に関して,第10回国際がん看護学会は1998年にイスラエルのエルサレムで,2000年にはノルウェーのオスロで開催されるが,2002年には日本への誘致を考えていることを明らかにした。

癌看護に求められるもの

 シンポジウムでは,学会設立満10年となり,21世紀に向けての新たな歩みにしたいとの考えから,今学会のメインテーマにそって5人のシンポジストが登壇。
 吉田智美氏(がん専門看護師,神戸大病院)は,大学病院の教育婦長の立場から,(1)癌医療の現状,(2)癌看護に求められるもの,(3)癌看護に関する院内教育のあり方の3つのテーマで口演し,(2)について「癌治療の進歩に伴う最新で専門的な知識と技術,対象者の意向を明確にする援助,多様で柔軟な情報提供システム,治療環境の調整活動などが癌看護に求められている」と発言。
 相羽恵介氏(癌研病院)は,「医師と看護婦は車の両輪であり,最終ゴールの設定には患者を含めた3者間作業が必要」と述べる一方,リサーチナースの必要性を,医療の質の向上との関連で解説した。
 また村松静子氏(日本在宅看護システム)は,「年末年始に24時間フル稼働で在宅看護をしたが,すべての対象が癌患者であった」と体験を語り,「在宅で過ごしたい」との希望を叶えるために,家族のフォローを含め,看護婦はプロとしての常識を持ち合わせることが最も重要と指摘した。
 さらに柿川房子氏(佐賀医大)は,「21世紀の医療は受療者の時代。先端医療から延命医療,緩和ケア,死の臨床まで,多様な個人の価値観を尊重することが癌専門看護婦としての役割」と述べ,癌看護を担う看護婦の教育のあり方について解説した。
 最後に癌看護研究の立場から大西和子氏(三重大医療短大)が,「臨床を離れていると感性が鈍る。臨床との接点は看護研究に必要」と述べ,統計学の利点にも触れた。
 次回は本年11月22-23日の両日,石垣靖子会長(東札幌病院副院長)のもと,札幌市で開催される。