医学界新聞

クローン・ヒツジができた



 この号の「nature」表紙に掲載されたヒツジは,成体の乳腺細胞の核を注入した(元の核と置換した)1個の卵母細胞(卵細胞)から生じたヒツジである。成体の組織由来の細胞から生じた初めての哺乳類だろう。これはスコットランドのロスリン研究所のI. Wilmatたちの報告で,完全に分化した細胞の核でも,卵母細胞という環境中ではその細胞型を規定している特異的な遺伝子発現から逃れることができることが確かめられた。ヒツジはこの1頭だけではない。著者たちは,核を胎児や胚の組織由来の核で置き換えた卵母細胞から,このヒツジ以外に7頭を育てている。
 今回の研究は,同グループが昨年発表した研究(Campbell, K. H. S. et al. Nature 380 64‐66;1996)をもとに発展させたものである。今回の研究の意味は非常に大きく,このヒツジのクローンをつくる比較的簡単な方法が,他の哺乳類にも使える可能性がある。

“nature”27.Feb.1997より