医学界新聞

感染症データファイル

狂牛病


 1996年3月20日の英国政府の発表は,世界の牛肉取扱者に何ともいえぬ恐怖をもたらした。つまり,1986年以後,羊のスクレイピーが牛に伝達され,その牛海綿状脳症(BSE:bovine spongeform encephalopathy)が牛肉を通してヒトに伝達されたのではという疑いがあり,その感染の疑われる患者が10人存在すると発表されたのである。
 4月初旬ごろにWHOは専門会議を開催し,実情についての報告がなされた。そして,10月24日付のネイチャー誌に,BSEが実験的に動物に伝達されたこと,かつヒトの新型クロイツフェルト―ヤコブ病(nvCJD: new variant Creutzfeldt‐Jakob disease)の脳のプリオン蛋白の泳動パターンがBSEのそれと一致することが報告された。さらに,11月末の英インディペンデンス紙は,今年中に100人のnvCJDによる死亡が出ることを報じている。
 1997年は,感染牛の増加率にあわせれば1000人以上のnvCJDの発生もありうるだろう。

狂牛病-疑惑のサイン

英国のCollinge(ロンドン大学)らが示したウエスタンブロッティングの特徴から,BSE(牛海綿状脳症)がヒトへ伝播したことが強く示唆された。これはBSEおよびnew variant CJD(クロイツフェルト―ヤコブ病)とそれらを伝播させた実験動物の特徴が一致したことによる。
(ネイチャー,Vo.383,Oct.24,1996)