医学界新聞

感染症データファイル

監修
吉倉 廣氏(東京大学細菌学教授)
倉田 毅氏(国立予防衛生研究所感染病理部長)


感染症マップ
(地図中のマラリアはその流行地を,ペストはその常在地をさす)

 日本には,輸入例以外は現在は存在しないが,世界でかなり広範に分布し,多くの犠牲者を出している感染症がある。いずれも媒介昆虫(蚊,ダニ等)や動物(野ネズミ等)が重要な役割を占めている。これらの疾患の対策は,媒介するものを根絶するか,ワクチンを開発するしか方法はない。
 ウイルス性出血熱の中で,ラッサ熱は西アフリカ一帯のマストミス(ラットの1種)がウイルスを保存しており,ネズミと人との共生関係を解かない限り,疾患の発生は続く。クリミア・コンゴ出血熱はダニが哺乳類から人へと媒介するが,アフリカから中国まで広範に汚染地域が広がっている。まったく自然界との接点が不明なのは,フィロウイルスによる感染症エボラ出血熱とマールブルグ病で,医療の貧困により散発的,突発的に限られた地域で流行は起きるが,疾患が常在しているわけではない。