医学界新聞

第27回日本看護学会母性看護分科会開催



 今年度の第27回日本看護学会(会長=見藤隆子氏)は,「看護の創造性とスペシャリティー:変わる時代の中で」をメインテーマに掲げているが,その母性看護分科会(会長=塩谷スミ氏)がさる11月7-8日,新潟市の新潟県民会館において開催された。50題にのぼる発表演題は,切迫早産妊婦の心理,周産期の心理,分娩時の援助,母乳栄養,新生児の看護および育児,母性保健,指導方法,など多岐にわたり,また,ミニセッション「夫立ち会い分娩」も行なわれた。

母性看護におけるナーシング・スキルの追求

 一方,シンポジウム「つみ重ねる実践と研究が生み出す“母性看護におけるナーシング・スキルの追求”」(座長=新潟大医療短大 佐山光子氏)では,メインテーマである「看護の創造性」を受けて,3名のシンポジストがそれぞれの異なった実践を切り口とする話題を提供した。
 まず,新潟県看護協会が10年にわたって行なった思春期電話相談事業の結果を紹介した小柳恭子氏(新潟市民病院)は,電話の利便性と問題点を認識し,“援助手段としての電話”という視点から見た「看護ならではの援助技術の基準化と理論化」を試みた。小柳氏は,この援助行為においては,相手側から受話器を通して共感できる感性を持つことが必須で,「電話相談におけるコミュニケーション・スキルを確立していくためには,こうした感性を育てることと同時に,フィードバックによる訓練を記述化することが必要」と強調した。
 続いて後藤幸子氏(愛媛大)は,“授乳時における椅子の快適性”という視座から「アメニティーとナーシング・スキル」を考察。授乳は一般には椅子座での作業であり,この形状などが身体の苦痛やストレスを与えかねない。後藤氏は,「病院は人間工学的視点からみると,多くの問題点を抱えている」と指摘し,全体的に統一された快適な環境のデザインの必要性を訴えた。
 また,“国際化の現状と課題”という視点から,人口統計や母子保健統計,全国福祉事務所での実態調査を通して「在日外国人の母子保健統計」を発表した李節子氏(東女医大)は,「日本で出生する子どもの国籍,文化的背景,人種が急速に多様化し,確実に“子どもの国際化”が進んでいる。1980年代以降,東南アジアや南米からのいわゆる“新しい外国人(ニューカマー)”が増加し,母子保健上でのハイリスクグループになっている」と指摘した。