医学界新聞

第34回日本癌治療学会が開かれる

日本がん看護学会と共催でシンポジウムを開催


 第34回日本癌治療学会が,栗原稔会長(昭和大豊洲病院長)のもと,さる11月1-3日の3日間,「癌治療はチーム医療患者の求めるQOL向上に応えるために」をメインテーマに,東京・有明の東京国際展示場(ビッグサイト)で開催された。
 同学会では,メインテーマに沿って,初めての試みである日本がん看護学会との共催によるシンポジウム「在宅がん治療」(司会=朝霞台中央総合病院 浜野恭一氏,東札幌病院 石垣靖子氏)やワークショップ「癌治療携わる医師以外の専門職」(司会=近畿大 安富正幸氏,岡山大 清水信義氏,神戸大 吉田智美氏),教育講演「米国における癌臨床研究にかかわる専門職」(ハワイ大癌センター 佐藤ゆか氏)などが開催された。なお,同学会については本紙次号(2218号)で詳報するが,今回は看護に関連する部門についてのみ報告する。

これからの在宅癌治療を論じ合う

 浜野,石垣両氏が司会を務めたシンポジウムは,「在宅医療はシステム医療という形で運営される。特に在宅癌治療では医師,看護婦,薬剤師,栄養士などがチームを形成し,患者の栄養管理,疼痛管理,化学療法に携わるが,患者の希望を優先した治療法であり,だからこそ問題も多い」との趣旨に基づき,それぞれの職種から在宅癌治療の現況が報告されるとともに,問題点やこれからの展望について議論された。
 最初に登壇した濱口恵子氏(東札幌病院)は,在宅医療における患者・家族の満足度と影響因子や,各医療者の機能と連携の現状を明らかにし,合理的かつ効率的なシステムを開発するために行なった施設への調査を構造,過程,結果の3観点から分析中。「施設における在宅登録患者のほとんどは緩和ケアが目的であり,訪問看護ステーションの利用が増える傾向にある」ことや「在宅癌治療のシステム化の成果が期待できる。集積結果を基に,システム構築に向けたい」と中間報告をした。
 さらに川越博美氏(白十字訪問看護ステーション)は,訪問を実施した末期癌患者58例について分析。うち51人が在宅死を望んでいたことを明らかにし,在宅での看取りを可能にした要因などを報告した。
 近藤福次氏(県西総合病院)は,在宅での癌患者の痛みや家族の疲労度・満足度などを評価検討した結果から,(1)保健・福祉・行政を取り入れた,介護する人,される人を支援するシステムが必要,(2)家族の疲労度は増したものの,患者の痛みも取れ,在宅での満足度は得られているとし,在宅での治療ケアは可能であることを示唆した。
 その後,大谷綱正氏(北里大東病院)は在宅中心静脈栄養法の経験と問題点を,辻靖氏(斗南病院)は,バルーン式インフューザーを用いた在宅癌化学療法を実施し進行性消化器癌患者には在宅での有効が認められたことを報告。さらに小倉徳裕氏(関西医大)も進行性消化器癌患者に対する在宅および外来癌化学療法の有効性を論じ,より安全で効率的な化学療法がこれからの在宅療養に応用できることを示唆した。
 その後のディスカッションでは,「在宅サービスにおける年齢制限(法的なもの)をどうするのか」「在宅医療にはインフォームドコンセントや癌告知がポイントになると思うがどう考えるか」「在宅で骨転移,脳転移が起きた場合の対処は」などの質問や意見が出され,壇上およびフロアから熱心な討議がなされた。
 石垣氏はまとめにあたり,「癌治療は施設から在宅へ確実に移行しているが,QOLの向上を背景としたシステム構築をどうするのかが急務の課題。また通院治療,家族のためのレスパイトケア,看護婦の教育,在宅癌治療ガイダンスの作成など,今後も日本癌治療学会,日本がん看護学会との共同研究を考えていきたい」と述べた。