医学界新聞

第34回日本病院管理学会開催

看護管理教育の現状を整理し将来展望



 第34回日本病院管理学会学術総会が,さる10月1-2日の両日,針谷達志会長(朝日大教授)のもと,岐阜市の長良川国際会議場で開催された。
 同学会は,病院の組織や人事管理から財務,建築設備,診療,看護管理までの多岐にわたり工夫と理論構築をめざすことを目的としており,看護職者の参加も年々増えてきている。それを反映してか,初日の一般演題発表(全87題)は分野別の5会場に分かれ行なわれたが,このうち看護セッションで勤務体制やキャリア開発など18題の発表があったのをはじめ,医療管理,医療経済,さらにケアの類型化,医療費などを検討した高齢者分野などでも看護職者による発表があり,病院職員の6割を超すとされる看護パワーの強さの一端を見せた。
 なお,学術総会前日の9月30日には,プレセッションとして(1)保健・医療・福祉のシステム化に関する研究,(2)看護管理学教育における基準カリキュラムの開発,(3)病院管理業務改善事例研究会などの研究会も開かれた。

看護管理教育基準カリキュラムの設立をめざして

 同学会の看護管理教育研究会主催によるパネルディスカッション「看護管理教育の現状」は,上泉和子氏(兵庫県立看護大助教授)の司会で,「看護管理教育における基準カリキュラムの開発」を目的としたものとして注目された。ここでは,看護管理教育の現状の問題点を整理し,将来展望につなげることに視点が置かれ,4人のパネラーからの意見を求めた。
 最初に看護教育の立場からパトリシア・アンダーウッド氏(兵庫県立看護大教授)が発言。同大学の看護管理教育カリキュラムの1994年からの変遷を披露する中で,「学生は人生経験も少なく看護の経験もないことを認識せずに,リーダーシップ能力を身につけさせる看護システム論を構築した」と効果が出なかった1年目をふり返り,この反省から生まれた,実践に必要な知識や方法論を探究する新しい看護システム論の授業計画と展開を解説。実習は,実習病院との協力のもとプリセプター方式で行ない,学生,看護婦からも評価を得られたことを述べ,3年間のまとめとした。
 また高谷嘉枝氏(神戸大病院看護部長)は,大学院における看護管理教育の現状を報告するとともに,カリキュラムに加える要素として,「人事管理,カウンセリング,コミュニケーション能力の養成。リーダーシップの原理原則のトレーニング。ストレスマネージメントや自分自身,患者,看護婦をどう管理するか。災害,危機管理のトレーニング」などをあげた。
 さらに,高木美智子氏(岐阜県立岐阜病院副院長・看護部長)は,看護管理者の立場から「現場を重視した主任研修などを実施し,経年的な研修の中で,病院が求めるリーダーの育成をし,機能的,組織活性化のための看護管理教育をしている」と述べ,「職種を超えた他分野との交流・研修,院内における混成チームの育成,県立看護大学の開校との連携で管理教育をより進める」などの今後の課題を提示した。
 その後の討論では,「金銭感覚を高めるカリキュラムを」という意見や,「明らかにリーダーシップをとれないと判断できる学生に対する指導は」という質問などが出され,予定時間をオーバーする議論が展開される中,アンダーウッド氏は「卒後すぐに使える学生はいない。施設の中での教育が必要で,3年間は新卒との意識を持つべきであろう」と見解を述べた。