医学界新聞

●第2回「白壁賞」・第21回「村上記念『胃と腸』賞」贈呈式行なわれる


 このほど,第2回「白壁賞」の受賞論文が馬場保昌氏(癌研検診センター)らによる「X線的胃小区像からみた背景粘膜の質的診断」(雑誌『胃と腸』〔医学書院発行〕第30巻10号掲載)に,また第21回「村上記念『胃と腸』賞」の受賞論文が松田圭二氏(新潟大)らによる「新しい視点からみた胃筋原性腫瘍の病理:Ki-67染色による良・悪性の鑑別,分化度と筋原性形質発現および肉腫の発生母地・増悪化」(『胃と腸』第30巻9号掲載)」にそれぞれ決定。
 その贈呈式が,第10回アジア太平洋消化器病学会,第7回アジア太平洋消化器内視鏡学会,第38回日本消化器病学会,第52回日本消化器内視鏡学会の共同開催の前日の9月18日,横浜のパシフィコ横浜の会議センターにおいて行なわれた。

第2回「白壁賞」は馬場保昌氏に

 「白壁賞」は,2年前に逝去された故白壁彦夫氏の偉業を讃えるために昨年新設された賞で,氏の業績に鑑み,その選定基準を「消化管の形態・診断学の進歩に寄与した優れた研究を対象とし,『胃と腸』誌のみでなく,関連雑誌に掲載された論文でも『胃と腸』編集委員の推薦状があれば対象とする」としている。
 贈呈式では,『胃と腸』編集委員を代表して八尾恒良氏(福岡大筑紫病院)が賞状と賞牌を授与。続いて,金原優医学書院社長から副賞の賞金が贈られた。
 また,選考委員を代表して伊藤誠氏(名市大)が「今回,選考対象として他誌に掲載された論文からの推薦も公募したが,結果的に他誌掲載論文の公募はなく,『胃と腸』30巻に掲載の全論文の中から『胃と腸』編集委員の圧倒的支持を受けて受賞論文が決定した。本論文は,馬場氏が20数年来癌研で研鑽を積まれ,情熱を燃やし続けられてきたX線診断学を,きわめてクリアカットな写真と解説によって論文化したもので,長年,親交してきた私としても,我がことのようにうれしい」と選考過程を報告し,祝辞を述べた。
 続いて挨拶に立った馬場氏は,「最近はバリウム診断は内視鏡診断に押されて,若い先生方はなかなかおやりにならないが,新しい機械と造影剤を使い,撮影方法に工夫を凝らせば,小さな模様像から組織像を思い浮かべることができる。今後も研究を続けて,バリウム診断のすばらしさを訴えていきたい」と抱負と謝辞を述べた。

第21回「村上記念『胃と腸』賞」は松田圭二氏に

 会場では引き続き,第21回「村上記念『胃と腸』賞」の贈呈式が行なわれた。
 「村上記念『胃と腸』賞」は,『胃と腸』創刊時の早期胃癌研究会代表村上忠重氏を顕彰して創設された賞で,『胃と腸』誌の年間最優秀論文に与えられる。
 八尾氏は,「村上先生は,白壁彦夫先生,崎田隆夫先生らと『胃と腸』の発刊にあたりご尽力いただき,悪性サイクル,潰瘍のUl分類などの臨床病理の草分けとしてご活躍された方で,今回の受賞論文は,村上先生を記念したこの賞にまことにふさわしい」と述べて,賞状と賞牌を授与。続いて,金原社長から副賞の賞金が贈られた。
 次いで,再び選考委員を代表して伊藤氏は,「本論文は,Ki-67にモノクローナル抗体の染色によって,胃の筋原性腫瘍の良・悪性の定量化を試みたもので,非常に良い成績を出している。また,同じ手法でGST(gastric stromal tumor)のほとんどが,幼若細胞もしくは悪性細胞から成っているという新しい提言も行なっている。新進気鋭の病理学者である松田先生はもちろんのこと,恩師でもある渡辺英伸先生もさぞお喜びでしょう」と選考過程と祝辞を述べた。
 それに対して,受賞者を代表して挨拶に立った松田氏は,「今回の研究を行なうに当たっては,渡辺教授をはじめ多くの先生,教室の皆様に助けていただいた。この賞は,新潟大学第1病理学教室に与えられたものであり,皆で喜びを分かち合いたい」と謝辞を述べた。
 なお,この村上記念『胃と腸』賞の村上忠重氏は,さる9月28日に永眠された。享年80歳であった。