医学界新聞

第6回胸腔鏡手術研究会 開催


  第6回胸腔鏡手術研究会(The Society of Thoracoscopic Surgery 6th Annual Meeting)が,成毛韶夫会長(国立がんセンター中央病院副院長)のもとで,さる9月27-28日の両日,東京の日本医師会館において開催された。
 「胸腔鏡手術は,腹腔鏡手術(Laparoscopic Surgery)と並んで20世紀の終末を飾る外科の輝かしい進歩」(末舛恵一同研究会顧問)であり,同研究会の会員ははや650名を越えた。また成毛会長によれば,昨年度の全国198施設(会員として登録されている施設)で行なわれた胸腔鏡手術は6498例を数え,1昨年度の3862例を遥かにしのぐ数字を記録した。
 こうした大きな情勢の変化を背景にして,研究会ではアメリカから招いたRodney J. Landreneu氏(Allegheny大)および若林明夫氏(Irvine Medical Center名誉教授・若林研究所所長)による4題の招請講演をはじめ,「気胸と肺気腫」「新しい器具,技術」「胸腔鏡下肺葉切除術,郭清術」「その他」の一般演題が発表された。


より少ない侵襲での完全な診断と治療を!

「研究会」のさらなる発展を

 「勇気と決断」と題する開会講演で成毛氏は,「“より少ない侵襲での完全な診断と治療”は誰しもが望むところであり,また,究極の医療はそうあるべきだと思う。ビデオ機器や周辺器具の開発という,いわゆる周辺科学技術の枠が大きく取り入れられて可能となったこの胸腔鏡手術も,究極の目標到達への着実な一歩と言い得る」と指摘した。
 同時に成毛氏は,「この研究会の小史を考える意義は,このように短期日に急速な普及と発展を遂げた胸腔鏡手術を,これからの先進医療の中でどう位置づけ,治療拡大にどう役立てていくかを考えることに通じる」として,同研究会の歴史とともに胸腔鏡手術の歴史を概説。「この術式は第1回研究会が開催された翌1993年に高度先進医療に認定され,1994年にははやくも保健医療として認可された。また,1995年には胸腔鏡手術の施設認定の廃止,さらに厚生省のがん研究助成金による研究班の発足など,周囲の法的環境も整備されるに至っている」と振り返った。
 そして成毛氏は,「誰かが勇気をもって敢行しなければ,将来の道は拓けない(The road to the future cannnot be opened without boldness and courage)」という言葉を引きながら,明年から同研究会が「日本呼吸器外科学会」に統合されることを報告して講演を締め括った。

Stragategic Planning for “VATS”

 招請講演では,Rodney J. Landreneu氏が,「Strategic Planning for VATS(Video-Assisted Thoracoscopic Surgery)」,「Thoracoscopic Evaluation and Management of Mediastinal Disease」を講演した。
 また,この研究会の顧問であると同時に,肺気腫に対する胸腔鏡下レーザー手術の泰斗でもあり,現在もアメリカに在住して活躍している若林明夫氏からは,「Thoracoscopic Laser Pneumoplasty; A Review of Seven Year Experience」,「Thoracoscopic Partial Lung Resection of a small, Peripheral Lesion(T1 or T2)of Primary Bronchogenic Lung Cancer combined with Brachytherapy」と題する講演が行なわれた。
 一方,「その他(Miscellaneous)」の他に3部門に分かれた一般演題では,次のような多岐にわたるテーマが発表された。
 「I.気胸と肺気腫(Pneumothorax and Emphysema)」では,「6列staplerを用いた肺気腫に対する胸腔鏡下volume reduction surgery」「酸素,車椅子依存肺気腫3例の胸腔鏡手術経験;特に,非肺切除pledget補強stapled pneumonorrhaphyによるair leak予防について」「慢性大動脈解離を合併した肺気腫に対する胸腔鏡下レーザー肺形成術の1治験例」「胸腔鏡下巨大肺嚢胞切除術」「胸腔鏡下に肺および横隔膜の子宮内膜組織を切除した気胸の1例」「なぜ自然気胸の胸腔鏡手術は術後再発が多いのか?(原因と対策)」「胸腔ドレナージ不要局所麻酔下胸腔鏡日帰り手術」。
 「II.新しい器具,技術(New Instruments and Methods)」では,「細径器具を用いた胸腔鏡手術」「小切開創からも使える肺把持鉗子の開発」「胸腔鏡下の肺切離面からの空気漏れの防止を目的としたGRFG glue塗布endoscopic staplerの開発」「肺野未確診病変のヒストアクリル(R)ブルーによる術前マーキング」「CTガイド下マーキング法による肺末梢性微小腫瘤の胸腔鏡下切除」「3次元内視鏡は胸腔鏡手術にとって必要か?(理想的な胸腔鏡とは何か?)」「胸膜切開および剥離のための新しいタイプの電気メス」「ワーキングチャンネルを持ったフレキシブル胸腔鏡による肺気腫性病変の診断」。
 「III.胸腔鏡下肺葉切除術,郭清術(Video-assisted Lobectomy and Dissection)」「前後小開胸法による胸腔鏡併用右肺下葉切除+R2a」「開胸手術となった胸腔鏡併用上・中葉切除術」「肺門型肺癌に対するVATS肺葉切除術」「c-T1N0M0非小細胞肺癌に対するVATS lobectomy」「高齢者肺癌に対するVATS lobectomy」「VATS lobectomyを行なった右上葉深在性裂創の1例」「胸腔鏡下肺葉切除術におけるポート,小開胸の位置的工夫」「c-T1N0M0非小細胞肺癌に対するVATS lymphadenectomy」「胸腔鏡下左縦隔郭清手技の実際」。