医学界新聞

川崎医大総合診療部の院外実習

青木内科小児科医院



 岡山市郊外に位置し,19床の有床診療所である青木内科小児科医院では,プライマリ・ヘルス・ケアを設立の理念とし,他に無床の「あいの里クリニック」に併設する老人保健施設「あいの里リハビリ苑」,「あいの里訪問看護ステーション」,「あいの里在宅介護支援センター」を持ち,特に社会的ニーズの高い高齢者医療・福祉を中心に地域包括的なケアを実践している。
 ここでは今回3人の医学生が川崎医大総合診療部の診療所実習を行なった。川崎医大からは6年生の中川貴則さん,中尾円さんの2名と,特別参加の山口大4年の河村由吏可さんの3名である。
 まず最初に実習のオリエンテーションとして,青木佳之院長が提唱するプライマリ・ヘルス・ケアの概念と,個人の生活歴を重視した地域の「生活医」のあり方の説明を受ける。その後,在宅ケアの研修として青木氏と看護婦に同行し,患者宅で訪問診療を見学。午後はステーションの訪問看護婦にそれぞれ1人ずつ同行し,訪問看護の実際を体験する。
 2日目は施設ケアとして,「あいの里リハビリ苑」で入所者の介護を体験する。最終日は,地域ケアの中で重要な役割を担い,同医院でも力を注ぐ通所ケアの老人デイケアを見学するというスケジュールである。
 特に同医院での実習で重点が置かれているのは,大学では学べない開業医の包括医療活動を目のあたりにすること,地域へ出かけ高齢者の生活の場に参加すること,また,看護婦,医療ソーシャルワーカー(MSW)らコメディカルの仕事を体験し内容を理解することで「チームケア」の重要性を学べる点である。
 実習を受けた学生たちは「外来では患者の一部だけしか診ていない。生活指導するにも,実際訪問活動をして患者の生活をみたうえだと説得力が違ってくる」(中川さん),「患者さんの見方一つにしても大学で学んだものとは違う。訪問活動に出ることで家族全員の生活を理解する意義を感じた」(中尾さん)と語ってくれた。


通所ケア(老人デイケア)

 実習最終日は「あいの里リハビリ苑」での通所ケアへの参加である。同医院における通所ケアのプログラムは,医師,看護婦による疾病,障害管理の他,機能訓練つき送迎,リハビリスタッフなど専門職による集団リハビリ体操やレクリエーション,また個別相談や個別リハビリが行なわれ,入浴などの福祉サービスも提供している。
 青木氏は,通所デイケアを,地域での高齢者ケアを実践するうえで,施設・在宅ケアと並び,重要な独立したケア体系と位置づけており,定員200名と大規摸に展開している。
 この実習の主な目的は,学生が通所・在宅・施設ケアの意義を理解し,老人の生活支援の基本とした地域ケアの中で,またチームケアの中で医師がどのような役割を果たすのかを学ぶことにある。


在宅ケア

青木氏(写真右)と看護婦に同行し患者宅を訪問。青木氏は患者を診察しながら,介護する家族に最近の様子を聞く。また家族の健康も気づかい,「食欲はどう?」とさりげなく聞いている。家族の血圧をチェックして帰るときもあるという。そのやりとりを見学する学生たち。
 訪問診療は,患者の生活を把握し,その個別性を重視した対応をする,青木氏が提唱する「生活医」の部分が発揮される場である


施設ケア・老健施設

「食事・排泄・入浴が生活の基本」と同医院の看護主任はいう。「あいの里リハビリ苑」には2ー4階の3フロアに100名近くが入所。学生は1人ずつに分かれ,各フロアの介護福祉士に指示を受けて,入所者の介護を体験する


入浴介助

患者を2人がかりで抱え,髪や体を洗った後,特殊浴槽で入浴。風呂あがりに,看護婦が褥瘡など患者に必要なケアを行なう


訪問看護

「あいの里訪問看護ステーション」の訪問看護婦(写真中央)と患者宅を訪問。この日は施設の車で患者を「きむら歯科医院」まで送迎。同ステーションでは,市内の在宅ケア中の患者の口腔ケアや歯科往診に熱心に取り組む歯科医グループと協力している