医学界新聞

実務経験を活かした透析専門看護婦の誕生を

第41回日本透析医学会開催される



 第41回日本透析医学会が,さる7月5-7日の3日間,前田憲志会長(名大教授)のもと,「基礎科学の応用と基礎科学への発信」をメインテーマに,名古屋市の名古屋国際会議場で開催された。
 看護部門では,ポスターを含む一般演題1406題のうち142題の発表があり,また教育講演「腎不全看護の専門性をどのように獲得するのか―専門看護師制度を視野に入れて」(日本腎不全看護研究会長 宇田有希氏),ワークショップ「透析患者のQOLと看護の役割」が行なわれた。
 15万人を超えるとされる透析患者の中には,20年以上に及ぶ長期透析歴を有する患者がいる一方で,生命予後が不良でありながら急増している「糖尿病性腎症透析患者」の問題が社会的にも注目されている。これらに関しては,医師部門でも教育講演やシンポジウム,ワークショップの形で取り上げられ議論が交わされたが,看護一般演題でも多くの問題を指摘する発表があった。その中で長期透析患者との関わりについて述べた大坪みはる氏(西部腎クリニック)は,「長期透析患者は看護婦よりも透析に関する知識を持っているために,看護婦が患者に不安感を与えることもある。これは,経験未熟な5年以下の看護婦が現場に多いことが一因」と指摘。また「患者自身も長期にわたる闘病に苦しんでいるが,マンパワー不足など看護婦もその対応を巡って苦しんでいるのが現状」と語った。

透析専門看護婦の養成も

 宇田氏は教育講演で,透析看護に従事した長年の経験から得たものを語るとともに,腎不全看護研究会が実施した全国の透析室で働く看護職アンケート結果を報告。その中で,腎不全看護領域の専門教育の必要性や,知識,技術の獲得のための継続教育の必要性を強調した。
 アンケートによると,腎不全看護の領域は,「専門性の高い領域」(42%),「特殊な領域」(35%)と回答があった。また,専門教育プログラムを80%の病院で持っている一方で,特にクリニックにおいては継続教育率が低いことが明らかとなった。さらに,透析看護の領域は「10年以上の経験がないと自信の持てない分野」であるとしながらも,透析看護歴5年未満の看護婦が60%を占めている現状を報告した。
 宇田氏は,日本看護協会が本年5月に誕生させた専門看護師および10月から教育が開始される認定看護師の違いなどについて触れ,透析看護の領域においてもその資格の必要性を訴えた。しかしながら,現状では実務経験を活かした教育機関がないことなどを指摘し,「患者中心の看護」をするためのプロがもたらすメリットを重視した独自の教育プログラムや,将来的に研究会としてエキスパートナースの養成を考えていることも明らかにした。
 最後に宇田氏は,腎不全看護の将来の課題について,(1)プロ組織としての位置づけ(学会への格上げ),(2)社会変化に対応した強力な組織作り,(3)後継者の育成をあげ,ベテランナースがエキスパートナースとして専門性に裏付けられた質の高い看護を提供することが急務であると述べた。

透析患者のQOLとは

 教育講演に引き続き開かれたワークショップでは,一般病院の透析室や在宅看護の実践者および研究分野からなど9名が登壇し,透析患者のQOLと看護の役割についてそれぞれの立場からの意見を述べた。
 新井修氏(長野県厚生連佐久総合病院)は,へき地診療所にサテライト透析室を開設してからの3年間の実情を報告。地域保健婦,ヘルパーらとの連携が不可欠と指摘するとともに,「サテライトは景色がよく,患者同士が知人であることからの安心感など,環境面では評価が高い一方,夜間対応ができない不満があった」と述べた。また,岡美智代氏(筑波大博士課程)は透析患者へのサポートリリースとしての医療者の支援認知に焦点をあて検討。その結果,「看護者の支援は医師・技士より高いと認知されている」「看護者の支援は家族支援を支えている」などが導き出されたと発表した。